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第三話 すごろくゲーム

「それは俺も嬉しいです」


 自分の中の感情をありのままの言葉で伝える。


「さーて次は何をしましょうか」


 彼女は聞く。もう一回バトルゲームをやるつもりはないのだろうか。それとも別のゲームをしたいだけなのか。


「そこにカセットがありますけど」

「うーん、何がいいんでしょう。私ゲームの種類わからないんだよね」


 お嬢様だったのだろうか、もしかしたらゲームを禁止されてたのかもしれない。


「これとかどうですか?」


 そう言って俺が取り出したのは、カートレースのゲームである。


「うーん、それはなんかイマイチな気がする」


 違うらしい。俺の選択は受け入れられなかった。それとも単に気分じゃなかったのだろうか。


「なら何がいいんですか?」


 俺は聞く。聞くことが一番の選択だろう。俺なんかが口出しする必要はないのだ。


「私はね、このゲームもやってみたい」


 そこにあったのはすごろくゲームだった。


「なるほど、すごろくゲームですか、いい選択ですね!」


 このすごろくゲームは、ただのすころくではない。すごろくのとまったマスによってイベントがあり、そのもらえたポイントで順位が決まるのだ。それ以外にもゴール順などで、さまざまなポイントが貰えるのだ。


「じゃあ早速やりましょう!」


 やはり思ったのだが、学校での彼女と性格が全然違う。いつもよりも元気な気がする。もしかしたら学校では素の自分を封印してたのかもしれない。そう考えたら、俺まで楽しくなってくる。


 まず俺たちはサイコロを振る。数字がでかい方が先行になるのだ。


「六出ろ」


 俺は祈る。絶対にすごろくだが先行の方が有利なのだ。


「やったー! 有村君に勝てた!」


 俺の出た数字は一で、霜月さんの数字は五だった。先行は取られたようだ。


「じゃあ行くね!」


 そして霜月さんはサイコロを振る。画面には五と表示されていた。


「やった!」


 彼女は喜ぶ。喜んでいる彼女もかわいいなと思う。


 そして止まったマスに書かれていたのは、「善行を積んだ、三ポイントゲットと書いてあった。つまりプラスマスだ。


「俺も負けないぞ」


 俺はそう言ってサイコロを振る。出た数字は二だった。


「えーと、不運なことにポイントを1失うと、最悪じゃん」


 俺は数字も低いし、止まったマスも最悪という最悪な結果に終わってしまった。


「ドンマイ、日頃の行いだよ」


 彼女は笑って言う。俺の日頃の行いなんて知らないくせにとは思うが、口には出さないようにする。しかし、笑った彼女も本当に可愛い。今俺は彼女の新たな一面を見れていると思うと嬉しくなる。


「じゃあ次振るね」


 出た目は三だった。そして止まったコマは一回休みコマだった。マイナスマスだ。どんまい。


「ひどいよ、このマス。有村君もそう思うでしょ」


 彼女は愚痴を言った。愚痴を言っている彼女もかわいい。


「ああ。まあでも二人だけだからそこまで被害は大きく無いと思うよ」


 俺は彼女を慰める。


「そう、ありがとう有村君、やさしいんだね」


 ぐう、好きな人からのありがとうは犯罪すぎる。はあ、好きだ。だが、そんなものは顔には出さない。好きな人と今ゲームができている。それだけで今は十分だからだ。


「じゃあ二連続行きますね」


 俺はサイコロを振ろうとする。


「二連続はずるい、一個譲って」

「すみません、譲るわけにはいきません」

「あー有村君。ひどいなあ、優しいんだねという言葉取り消しちゃお」

「何ですかその基準は」


 俺はあきれるようなふりをする。しかし、本当は、1個譲ってもいいぐらいの気持ちだ。(ルール上はできないのだが)


「いいじゃない、こっちは順番飛ばされなきゃならないんだから。文句ぐらい言いたくなるよ」


 そう言って彼女はほほを膨らませる。かわいい。


「まあとりあえず振りますよ」

「はーい」


 彼女はもう完全に寝転んで、だらけ切っている。こんな彼女は学校では見たことがない。


「よし四」


 そのマスはニマス進むというものだった。よし! プラスマスだ! だがそう思ったのも束の間だった。


「はあ、休みじゃん」


 マイナスマスだった。悲しすぎる。たまにあるのだ。こういうプラスに見せかけて実はマイナスだというマスが。


「やったー、私の怨念が通ったね」

「呪ってたってことですか」

「うん、私だけ休みなのは悔しいし」


 彼女になら呪われてもいいや。彼女の顔を見るとそう思える。


「まあということは次私だよね。行きますね」


 彼女はサイコロを振る。出たマス目は三だった。


「対戦マス?」


 彼女は俺の方を向いて言う。


「ああ、このマスに止まったらミニゲームをするんだ」

「そうなんだ」


 そのミニゲームの内容は、向かってくる車をどれだけよけられるかというものだった。ゲーム機の画面が二等分された。始まるのだ。


「頑張って有村君よりよけるぞ」


 彼女は張り切る。彼女を喜ばせるために負けてもいいと思ったが、そんなことは彼女はそんなことを望んではないだろう。


「よーし!!!」


 そして画面が動く。


「ほいほいほい」


 彼女はよけまくる。俺よりも反応速度がはるかにいいイメージだ。このままではやばい、負けてしまう。俺は集中を高める。


「よしこれでこれで、これだ」


 彼女は脳内で演算しているみたいだ。俺には関係ないけど。


 無言の時間が続く。二人とも集中しているから当たり前なのだが。そしてついに均衡の時間が崩れた。俺が当たってしまったのだ。


「やったー!」


 彼女は部屋を飛び回る。少し負けた後だから腹立つが、かわいい。


「有村さんありがとうございます、勝たせていただいて」


 そう言って彼女は悪戯めいた笑顔をする。ああ、彼女のこんな顔を見れて幸せだ。


「さてと俺もサイコロを振るか」


 ちなみに買ったほうは負けたほうから三ポイントもらえるってことらしい。今の俺マイナス六ポイントなんだが。悪いけど普通に六ポイント欲しい、


「よし、次のサイコロの目が二倍になる効果だ!」


 これはゴールに一番につくために、大きい効果だ。嬉しい!


「なら次私行きますね」


 そして彼女がサイコロを振る。三が出た。同じくサイコロのマス目が倍になる効果だ。


「有村君と同じ効果だ。喜んでいたとこ悪いね」

「はあ、まあ許しますよ」

「許すって何よ!?」


 彼女が逆ギレする。かわいい。そして俺はまたサイコロを振っていく。

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