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ゲーム知識はイイコトに使おう  作者: カルシウム
2/2

2.ゲームの知識

良かったら読んでね


(なんだ…これは…!!!)


猛烈に頭が痛い。脳が焼かれているようにイタイ。

だが幸い痛みには慣れている。


しかし、今は別の問題で混乱してしまっている。


今までにない”知識”が頭の中に入り込んでくる。

無理やり押し込むように、脳に直接刻み込んでくる。

様々な濁流のように流れこんでくる”知識”を少しずつではあるが理解していく。

そしてその結果出てくる答え。


(ゲーム?…この世界が…?)


脳がここはゲームの世界に酷似していると訴えかけている。

故に、この世界はゲームなのだと、自分はそのゲームのキャラの一人に過ぎないのだと。


だがそんな考えはすぐに捨てた。この俺が見ているものは紛れもないリアルだ。

今目の前にある石畳は確かにここにあり、痛みもあり、俺がいる。


ゆっくりと深呼吸をする。

周りがうるさいがなんとか冷静になるよう心掛ける。


少し冷静になり落ち着く。

そして落ち着いたことにより思考も進む。


そして再認識してしまう。


(チクショウ…クソったれだな、本当にこの世界はクソったれだ)


流れ込んできた”知識”はどれも正しかった

俺が生きてきて起こったことすべてが刻まれた”ゲームの知識”と一致する。

俺がガキの頃の反吐が出るアレも、この世界の歴史も…


今、この状況も”知識”としてちゃんとある。


今起こっているこれが”イベント”の最中だということが分かってしまう。


俺の前で目障りな女が次に言う言葉がわかる。

だが、まだこの”知識”とやらが嘘という可能性がある。この女に期待するのは癪だが今はそんなことを考える余裕がない。

俺は思う。どうか同じ”イベント”の”セリフ”を言わないでくれ、と。


だが、想像していたことが簡単に起こってしまう。



「あなた………死にたいの?…何も言わないで、何も行動しない…まるで負け犬ね」


”知識”通りのことをこの女は一言一句違わずに言ってのけやがった。

それはこの世界がゲームだということを真実と告げているかのようだった。

最悪な事態が起きていることに苛立ちを覚え、さらに目の前の女が言った言葉によって更に苛立ちが大きくなっていく。


(俺が…負け犬…?)


事前に何を言われるかわかっていたとしてもその言葉を許容できるほど俺は寛大ではなかったようだ

冷静になっていたのが嘘かのように苛立ちが湧いてくる。

頭に血が昇っていくのがわかる。


目の前にいる女を潰したくなる。

原型がわからないまでに壊したくなる。


「…壊してやるよ」


ゆっくりと立ち上がり右腕を上げる


「あら、なんて言ったのかしら?負け犬の遠吠えにしては小さすぎて聞こえなかったわ」


拳を作る手の力をより強めていく。


女との距離は大体10メートルぐらいか…

充分だな、一瞬だ、一瞬で壊す。


(何?…雰囲気が急に変わった…。それにこの距離で近接攻撃をするつもり?でも、馬鹿ね、やっぱりただの脳筋ね。この距離なら私の魔術のほうがはやッ!!?)


足に少しだけ力を籠め体を前へ倒す。

倒れるとともに一直線に女へと迫っていく。地面が抉れ、自分の顔に物凄い風圧を感じる。


正に一瞬の出来事だった。


一瞬で、”俺が”吹き飛ばされた。


吹き飛ばされそのまま学園の建物へとぶち当たり壁を壊しその瓦礫の中にいる状態だ。

吹き飛ばされた瞬間一瞬見えた黒い髪の男。


(なるほど…アイツが主人公様ってことか)


これもまた女のセリフ同様、この状況も”ゲームの知識”と一致している。


主人公の介入。


この今起こっている”イベント”は”ゲーム”の序盤も序盤、始まりなのだ。


二年の不良の俺が新入生に喧嘩を吹っ掛けその喧嘩を止めるのが主人公。

その主人公が今のこの状況を生み出したと見ていいだろう。


(クソが…一瞬しか見えなかった)


主人公なだけあってすげぇ威力と速さだ。

髪の色と大体の背丈ぐらいしかわからなかった。

そして俺を吹き飛ばしたあの技…どこかの武術だったか…。思い出せないな…。

撃たれた自分の腹を触る。どうやら骨は折れてないらしい…大したダメージは受けていないとこを見るに手加減したのか…?イラつく野郎だな。


ワザとあの女に攻撃したのもあるがあの女を潰そうと本気で思ってやったのは事実、だがそれを簡単に凌ぐとは…気に食わんヤツだ。


思い出したらまた苛立ってきたな…


どうやらこの世界の主人公殿は”なんにでもなれる”らしいからな…。

自由度が高い”ゲーム”で主人公を自分で作る、R18のRPGとしては珍しいものだな。

俺がいる世界がエロゲの世界とは笑いモノだな、そういうこともできるのを含めて自由度の高いゲームってわけか


まったく、面白い世界になってくれたなぁ。


確かにこの世界がゲームだとしたらクソだ、誰かわからねぇ奴が考えて創り出したのが俺だと思うと虫唾が走る。


まだまだ整理したいことがあるがずっとこの瓦礫の中にいるのもあれだしそろそろ出るか…

女はもう正直どうでもいいな、さっきの俺の動きに驚いてる時点でただの雑魚だ、主人公はもういないだろう。

どうやら今さっきのが強制イベントがある”チュートリアル”だったらしいからな。

他にも強制イベントはあるらしいが今のところさっきのしか無いように思える。

ってことはこの先の主人公の行動はわからない。

まぁ、正直今は主人公なんて考えても意味ないからな、どうせすぐ会うことになるだろうしな。


瓦礫の中から体を起こす。


(はぁ、服が汚れてしまった…)


白い学生服についた汚れを手で払いながら建物の中から出る。


(もう女はいないか…)


どうやら女はこの場を既に離れているようだ、まぁ知っていたが。

俺がいない間に女の友人が止めに入ってそのままこの場を去るって感じだったか


『お、やっと出てきたぜアイツ。死んでんのかと思って冷や冷やしたぜ』

『何言ってんだ、狼がそんなすぐに死ぬかよ、いや、負け犬だったなw』

『やめとけってお前ら…』


さっきよりはだいぶ少なくなった野次馬の中から馬鹿にしたような声が聞こえてくる。

だが流石に俺もそんなことで怒ったりしない。

怒りはしないが今はイイ気分だ、相手をしてやろう。決して怒ってはいないが。


「おい、俺に負け犬って言ったやつ誰だ?」


俺は”いつも”のように聞く。


「お、おい、やべぇって」「大丈夫だって!アイツと距離結構あるし周りにこんな人いるしよぉ!」

「何ビビッてんだよお前w」


『右にいる赤髪だ』


男とも女とも思えるような機械的な声が聞こえる。

その声が言うように右方向を見てみると赤い髪をしたヤツとその左右に茶髪とオレンジがいた

この三人組か…


三人組に体を向け近づいていく。


「来ちゃったじゃん!こっち近づいてきてるよ!」

「何さっきから狼狽えてんだよ」

「そうだぜ?あんな女に負ける負け犬なんてどうせ見た目だけだろ」


本人前にしてまだいうとは中々度胸あるなこの赤髪。

そしてオレンジくん、君は友達思いなんだな。何で君のような人がこいつらとつるんでいるのか俺は不思議でならないよ。


赤髪の前で足を止める。


「で、デケェ…。これ、熊じゃん…」


俺の身長は2メートル近くある。

それを考えるとこの赤髪は180ぐらいか…


「な、なんだよ!てめぇなんかこのお―


赤髪の顎を掴み持ち上げる。


「あ、あが…あごあ……グギャッ!」


少し力を込め顎の骨を砕く。赤髪は白目を向いて痛みに悶えてるようだ。

ゴミを捨てるように赤髪を投げる。


「お、おい。す、すげぇ音がしたけど、だ、大丈夫だよな?おい!!」


茶髪が赤髪に声をかけるが赤髪は反応した様子はない。失神したか。

茶髪は俺が見ていることに気付いたのか体が震えている。


「大丈夫。お前は俺のことを負け犬って言ってないからな。ほら、入学式が始まっちまうぞ?」


学園の高等部がある方を指さす。


「あ、あぁ…」


茶髪は俺に背を向けて逃げるように走り出す。

が、俺はそれの背中を蹴り飛ばす。


「あがぁッ!!?」

「いやぁ、歩くの遅かったから手伝おうと思ったんだが…強すぎたか?」


これっぽっちも手伝おうなんて思っていないが。


「で、一人になったけど…どうする?」


残ったオレンジを見ると震えてはいるが俺に確かな敵意を向けてきている。

なかなか根性があるなオレンジくんは、ホントなんであの二人と一緒にいるのかがわからんな。


「なんだやるのか?……怖くて何も言えんのか?だが、俺は弱くとも自分より強い者に挑む勇気があるヤツが好きなんだ。だからお前に免じてお前たち三人にはこれ以上危害を加えるようなことをしない。

約束しよう」


オレンジに手を差し出す。オレンジは俺にまだ敵意を向けながらチラチラと立ち上がらずうずくまっている茶髪と赤髪を見ながら俺の手を握る。


「キミぃ…」


手を握ってわかったがどうやら近接戦が主体のようだな…

俺はそっちの専門ではないがこの手の感触から簡単に想像できる。

まぁ、そんなこと知ってもなんの意味も無いんだが。

というか…


「やっぱりバッッッッカだなぁ!!」


赤髪の顎を壊した時と違い、ゆっくりと握っている手の力を強める。

オレンジくんは必死に逃げようとするがそれは俺が許さない。


「約束なんて守るわけないだろうが!!お前は一体何を見てたんだぁ??目の前で嘘をついた人間を信じるとか馬鹿過ぎんだろぉよぉ!!」


「ッ!!?あぁッ!!!?」


おっと、少し力み過ぎてしまったか。手を離し自分の手のひらを見る。

血が手についてしまったか…

手のひらにはべっとりと赤い液体がついている。

今日はよく汚れる日だな。

オレンジはその場に膝をつき手首を持って悶えているようだ。


(ふむ、やはり俺が医療室送りにした奴等とはこいつらか…)


ゲームではモブが話していた内容だが…やはりゲームの知識が無理に刻まれた所為か知識を引っ張り出すのに時間がかかるな。

モブの話ではこの三人組の中に騎士の出がいるということだったが…それがオレンジだとはな…

俺が手を握り潰そうとしたときに組技を使って来なかった…俺のアレは隙だらけなのだがそれをしなかった。これは堅苦しい古い騎士がやることだ…。


オレンジの白い学生服の肩に自分の手についた血を拭っていると耳元からまた聞きなれた無機質な声が聞こえてきた。


『教師共がそろそろここに着くそうだぞ?』


「なんだ?やっとあのボンクラ共が来たのか?」


『学園長もいる』


あのババアもいるのか…めんどくせぇな


「どっから来る」

『北西。40秒後』


あのババアが動くとか珍しいな。


「”庭”に帰る。全新入生の情報、消失ロスト級アイテムの情報も集めておけ」

『新入生?気になる子でもいたのかい?それに消失ロスト級か…』

「詳しいことは帰ったら話す」

『はいはい』


ババアは相手にすると厄介だからな、さっさとここから離れて頭ん中の整理とこれからすることについて考えなきゃな。


「井戸から向かう、扉を開けとけ」

『わかった』


遠くのほうから1人の背が小さい女が歩いてくるのを見つける


(相変わらず来るのが早いなあのババア)


少し歩くスピードを早くして校舎の横にある最早捨てられないゴミを置いておくだけになっている倉庫へと向かう

倉庫は鍵が掛かっており開けることができない。

が、俺が向かうべきとこは倉庫の中では無く倉庫の横にある井戸である。

井戸は今では珍しい普通の石で作られており水を汲むのに腕を少し伸ばせば届くぐらいの位置まで水がある。


「グギガギゴ」


井戸に向かってそう言うと水が下へと消えていった


『なんでそんな合言葉にしたんだ...』


「誰も言わなそうな言葉じゃねぇか、それになんかちょっと言いたくならないか?」

『ナラン』


即答されてしまった


井戸に手を着きそのまま井戸に入る

そのまま重力に身を任せ落ちて行く


真っ暗な穴を落ちていき光が下から見えた瞬間体が浮いた感覚がする

そしてゆっくりと地面に足をつける


「扉開けてくれって言ったじゃ〜ん」


『鍵は開けてある。開くぐらい自分でしろ』


目の前には白い廊下があり奥には錆びた鉄の扉がある

コツコツと足音を鳴らしながら扉の前まで行く


『それで?何があったんだ?』


「おいおい、そう急ぐなよぉ、まずはお前の顔でも見せてくれよぉ」


ドアノブを回し扉を開ける


『嫌味か?お前も私のようにしてやろうか?』


扉を開けて見えるのは何も無い光を吸い込む真っ黒闇

その中へ進んでいく



「いやぁ———」



中へ入るとそこには———




「脳みそだけになるのは流石にゴメンだわ」


祭壇のような翼が生えた女性が金属特有の輝きを放っている脳みそを掲げている像があった。





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