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3/5

能力、覚醒

「あれ? ここどこだろう?」


 

 エミリアは見慣れぬ街並みの中をあてもなくさまよっていた。

 どうしよう……。迷子になったかも……。

 ついさっきまで、エミリアは辺境にいた。

 だというのに、ドアを開けて部屋の外に出ようとした。



 ーーそして、次の瞬間外に出ていない。

 キョロキョロしていると、ふと道端で何かを売っているおばあさんの姿が目に入ってきた。



「あのぉ、すみません。ちょっと聞きたいんですけど……」

「はいよっ、なんですかぃ?」



 おばあさんはニコニコしながら答える。



「ここはどこでしょう?」

「あらまぁ、観光客かい? それとも迷子になっちまったかね」

「あはは、そうみたいです」

「しょうがないねぇ。ほら、これあげるから元気出しなさい」

「ありがとうございます」



 エミリアはもらった飴玉を口に放り込む。

 甘くて美味しいイチゴ味だった。


「ここはどこでしょうか。私、オークレイっていう辺境にいたんですけど」

「えっとね、ここらはアストレイっていう国の王都、エヴァンスだよ。あんたの国とは遠いから知らないかもしれないねぇ」

「はい、初めて来ました(・・・・)

「この道をまっすぐ行くと大きな通りに出るよ。そこには騎士団の詰め所があるんだ」



 おばあさんに言われたとおりに進むと、エミリアは見覚えのある(・・・・・・)大通りに出た。

 かつて、エミリアが暮らしていた平民街だった。



「これ、もしかして戻ってる?」



 辺境のオークレイにいたはずなのに、戻ってしまっているのだとエミリアは結論付けた。

 一体なぜ、私は追放された王都に戻っているのだろうか。

 この能力の発動条件は、何なのか。

 

 思い返す。

 私は、扉を開けた。

 そしたら、王都まで戻ってきた。

 ……扉だ。



 扉を開けることと、戻りたいという意思。それが、能力の発動条件らしい。

 今までは、戻りたいなんて思わなかったから能力が発動しなかった。王都の平民街で暮らしていたころは、そこだけがエミリアの居場所だった。そして、王宮に迎えられてからは、ずっと王宮で過ごしてきた。手紙でやり取りをしていたし、王宮での暮らしは正直楽しかったし、殿下はかっこよかったし。



 けれど、辺境に戻って初めて私は戻りたいと思うようになった。

 多分だけど、先ほどのおばあさんの服装からしてここは平民街だ。戻りたいと思う気持ちが、能力の発動条件なら。もっと、具体的に念じたらどうだろう。きっとさっきは、漠然と念じていた。王都に、元の暮らしに戻りたいと。だから、王都の、平民街の、そしてそれでいてあまり記憶に残っていない場所に戻ってきてしまった。場所をピンポイントで念じればその場所に移動できるのではないだろうか。



 近くに、食事処と思しき建物を発見。

もし、推測通り扉が能力発動の鍵ならば、そう考えてエミリアは扉を開く。今度は、王宮を思い浮かべた。開けると、今度は王宮の、書庫に入っていた。本にすっと指を通して、それからまた書庫の扉を開いた。

 

 エミリアの能力が、発動したのだ。


 聖女は、神に祝福された存在である。

 聖なる魔法である、回復魔法などを行使できる。そして、神に認められた聖女は固有の能力を発現する。

というか、エミリアの場合はこの固有能力を発現しなかったがために、追い出されてしまったのだ。能力を使えない、半人前の聖女など、相応しくない、と。



「ああ、最近隣国から来た聖女様の能力らしいよ。通ろうとしたあらゆるものを防ぐ障壁なんだと」

「あらゆるもの、ですか」

「ああ、ドラゴンさえも通れないって話だ」



 ドラゴンは、魔物の頂点に君臨する存在であり、生ける災害だ。

 その被害は、ハリケーンや地震とどっちがマシかというもの。

 それを防げるほどの結界を都市全体に展開するなんて、なるほど隣国から来た聖女は間違いなく優秀だ。

 


「ま、私の扉渡りは防げないみたいだけど」

 


 空間を捻じ曲げて転移する以上、障壁も意味をなさないということだろう。

 これは、面白い。

 エミリアより上とされた聖女の張る結界を破って、王都に侵入して。

 その上で、エミリアをあっさり捨てたイサーク王子に復讐して。

 それで、エミリアは完全にすっきりして新たな生活をするのだ。


 そのためにも、いくつかやっておくべきことがある。


ここまで読んでくださってありがとうございます。


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