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本気で死のうとはしてないのでそんなに心配しないで下さいっ  作者: ぱっつんぱつお


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20/20

はじまりのおと

 

「ぬ、脱いだわ……!」

「そう……、じゃあ……どうする? 俺も脱ぐかい? それとも先にエミリーの準備をするかい?」

「え、あ、あっと、えっと」


 落ち着いた様子で、甘くて優しい声で、次へ進もうとするイーサン。

 行為は分かっていれどこうして順番を改めて聞かれるとよく分からなくなる。

 とはいえ自分が我儘を言った手前決めないわけにもいかず。


「えーっと、えーっと……とッ、とりあえずベッドに……」

「分かった。誘導してくれる?」

「え、ええ」


 頼りなさを含んだ指先でベッドへと誘導し、取り敢えず腰掛けてもらった。

 改めてイーサンを見ると、意外と体躯もしっかりしてるのね。ただ細いだけじゃスーツもあんな風に着こなせないか。


「ええと……どうしよ……、先ずは、その、私から触ってみるわ……!」

「へっ?」

「えっ、この前やったみたいにと思ったんだけど……だめ、だった……?」

「いやいや! まさかそんな! そう来るとは思わなかったからただ驚いただけさ……! いいよ、好きに触って」

「ん、……ベルト、外すね」

「っ……」


 ゴクリと唾を飲み込む彼に、何故かつられて私もゴクリと唾を飲み込んだ。

 釦を外す頃にはそこはもう既に辛そうで。

 顔を見上げてみると、うっすら開いた唇から吐息が漏れている。本当にきれいな鼻筋、唇も色気のある形だわ。

 不覚にも、どきっとした。

(違う違う……緊張してるだけよ……)


「さ、触るわ……!」

「うん」


 イーサンのはこの前散々見せられたから、この行為自体に対して意外と冷静な自分がいる。

 そっと両手で包んで、少し強く握って上下に動かした。


 漏れる吐息がだんだんと熱を帯びてゆく。

 時折交ざる「ぅ……」とか「ッぁ……」とかいう声に、お腹の奥が『きゅう』と啼くのは何故なのか。

 だって相手はイーサンなのに。

(そんなわけないそんなわけない……ここの所ずうっと色々なことがあって追われてたから欲求不満なだけっ……! この前なんか夢現(ゆめうつつ)で弄られたんだもの……! きっとそうよっ……!)


「ッ! あ゙ッ!? エミリー!? 君は……!」

「ふぁえ……?」


 イーサンが突然声を上げるから何事かと思ったら、私ったら彼のものをぺろりと舌で舐めているじゃないか!


「ッあ! これはそのッ……!」

「いい……! 続けて……?」

「つ、づけ……。っ……ん、……………あ、ん、ふ……ん、ぅ……」

「ああエミリー……エミリー……君はなんて……!」


 明らかに先程とは違う息遣い。

 その様子に胸がふわふわと舞っているみたいな高揚感で満たされていく。


「んっ、ふ、ぁ……ぁん、んっ、」

「あ゙あ〜、エミリー、みたい、君の顔がみたい……」

「ら、らめ、それは、まだ」

「何故だいエミリー! 顔を見せておくれよ……!」

「んっ、んーん、だめ……っ」

「あ゙〜〜……っは、はぁ、はあ……ッ、え、えみり……ちょ、っ……んッ、も、出る……ッ」

「出っ!?」


 ──顔にかけられる……!

 そう思って咄嗟に彼から離れた。

 目を瞑って手でガードしてみたものの、特に何も“出て”こない。


(あれ……)

 そっと目を開けて様子をみてみると、イーサンが「へみり〜……まさかのすんどめぇ〜〜……!?」なんて情けない声で嘆いている。彼の部分は辛そうなまま。


「そ、そんなつもりじゃ……」

「君ってば焦らすのが得意なんだね……っ」

「!? 焦らしてなんかッ……!」

「いいんだ、好きに触ってって言ったのは俺だから」

「だから焦らしてなんかッ!」

「ところでエミリー……」

「なによっ!」

「そろそろ俺もエミリーのこと、触りたいんだけどな」

「へッ!?」

「だめ……?」


 目元を隠してても分かる。子犬のような顔をしているイーサン。

 両手を広げ、抱き締めたいと言わんばかり。


「だめじゃ、ないけど……」

「酷いことなんてしないさ」

「分かってるけどっ、……その、緊張するの……」

「ふふ、エミリーってば、可愛いこと言うんだね」

「かッ、かわッ!?」

「ほら。おいでよ」

「ッ……!」


 行かねば始まらない。

 分かってる。解ってるけど。


「ほら。エミリー」

「っ…………」


 そっと、指先を絡めた。

 ぐっと、胸元へ寄せられる。


「あっ──!」


 耳にイーサンの鼓動が聴こえてきて、ここにきて怖気づいている自分が情けなかった。

 彼にだって産まれながらの使命を背負っているんだから。


「膝に、座って」


 後頭部にイーサンの手が添えられ、少し低い声が耳に響く。

 貴族らしい綺麗な指が、私の髪をすり抜けた。


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