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ドレッサーの前で【ルイーザ視点】

 

「お嬢様、なんだか今日はご機嫌ですね」

「そりゃあそうよ。とーっても面白かったのよ? 聞いてくれる?」

「もちろんですとも!」


 湯浴み後、髪を丁寧に梳いてくれる侍女にわたくしは今日起こったことを話していく。指輪のこと、イーサンが五月蠅かったこと、そしてエミリーさんとお友達になったこと。


 侍女は、暇つぶしといえど元恋人の婚約者が本当にわたくしの友達になってくれるのか、ただ復讐したいだけなんじゃないかと心配してくれるのだが、エミリーさんに限ってそれは無い。

 むしろ今までのが全部演技だったって言うのならそれはそれで騙されてもいいと思える。


「あの二人って絶妙に噛み合ってなくって見ていて面白いのよね」

「でもご結婚されたんですよね?」

「そうなの。でもね、エミリーさん……たぶん自分が結婚したって気付いていないのよね」

「………………うっそだぁ〜〜!! お嬢様ったらそれは流石に嘘ですよ〜〜!」

「そう思うでしょ? でもこれが本当なのよ」

「……ええ〜〜??」


 仕えるわたくしをこれ以上否定したくないけど、信じられませんよという表情。それもそうよね。だって、結婚だもの。イマドキの貴族で同意もなしに結婚だなんて有り得ない。

 でも不思議よねぇ。書類にもサインしているはずなのだけど。


「ふふっ! あーもう思い出しただけで可笑しいわ! あははっ!」

「どっ、どうしたんですかお嬢様ったらそんなに声を上げて笑うなんて。珍しい」

「だから言ってるじゃない、はぁ~もう可笑しいっ! だってイーサンったら私がエミリーさんのことを可愛いって言ったら勘違いして嫉妬してくるのよー? 素直なエミリーさんが本当に可愛かったから抱き締めて頭を撫でてそう言っただけなのに!」

「嫉妬?? まさかお嬢様レズだと思われたんですか?」

「そうよ! わたくしはずっとアンドリュー様一筋なのに」

「そうですよねー?」


 にまにまと鏡越しに私の顔を眺める侍女。キッと睨みつけるも、いつも一緒に居る彼女には効かない。


「全く。……でもイーサンも随分と変わったわ。独占欲剥き出しですごいんだから」

「イーサン様がですか? 想像出来ないのですが……」

「今日だって嫉妬の嵐よ。エミリーさんの明日の商談相手が男だって知って“本当に商談なのか”とか“仕事と言いつつ君が目当てなんだろ”とか、終いにはエミリーさんの胸が目当てなんだろうとか言い出して」

「はあ?」

「確かにエミリーさんの胸は大きいけれどね」

「……羨ましいんですか?」

「そりゃあ……ちょっとはね」

「お嬢様ったらかわい~」

「貴方のお口も五月蝿いようね?」

「モウシワケアリマセ〜ン」


 やれやれ。こんな会話、上辺だけのお友達には聞かせられないわね。いつ裏切られるか分からないんだもの。弱みは見せられない。そもそも相手だって金融機関を牛耳っている家系に肩の力なんて抜けるわけないわよね。

 わたくし、エミリーさんとは本当の(・・・)お友達になれるかしら。


 明日の商談相手……アンドリュー様なのよね。グレイスター商会が王宮御用達ブランドになるための大事な商談。

 商品自体に全く心配はないし寧ろそうじゃなきゃおかしいぐらい質の良いものだけど、問題なのは生産面。流石に親子二人だけではとても回らないわ。納品だって間に合っていないのに。


「はぁ……」


 エミリーさん、魅力的だから殿下の気があちらへ向いてしまわないか心配だわ……。あの人だってわたくしの気持ちに気付いてるはずなのに。

 イーサンにはもっと頑張ってもらわないと。一体どこまで進んでるのかしらね?


「お嬢様、さては殿下の気がエミリー様に向くんじゃないかって心配してますね?」

「…………五月蝿い」


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