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大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる  作者: 遠野紫
星龍の街と星龍教団

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71 もう一人のサザン

「……サザン? 何故君がここにいるんだ。こっちは私たちに任せたのでは無かったか?」


「いや、そんな話は知らないが。それに、何故俺の事を知っているんだ?」


 サザンは記憶を消されたはずのランが何故か自分の事を知っていることに違和感を覚えた。それに、自分の知らない話をしていることにも疑問を持ったのだった。


「ラン、どうした? ……サザン、何故ここに」


「ええ!? サザンさんどうしてここに居るんですか!?」


 後からやって来たルカとギラも、ランと同じようにこの場所にいるはずのないサザンに驚く。


「いや、俺にはランたちの言っていることがわからないんだが……。俺、知らない内に3人に会っていたか?」


「一体どういうことなんだ……?」


「サザンは俺たちに星龍教団のやりたい放題を止めるように言った。だから二手に分かれて、俺たちはこの街に来たんだ。なのに何故か俺たちよりも先にお前がいた。おかしいだろう」


「俺にとってはその話が初耳だ」


「どういうことだ。……まさか偽物なのか?」


 ルカはいつでも武器を取り出せるように警戒しながらサザンにそう聞く。


「いや偽物じゃないが。というか偽物にそう聞いても答えないだろう?」


「それもそうですよね」


「ルカ、恐らく彼は本物のサザンだ。どういうわけか魔力がサザンと同一のものなんだ」


 エルフ族であるランは他種族よりも魔力を感知する力が強く、サザンの持つ魔力を感じ取ることが出来た。そのため、目の前にいるサザンが王国で別れたサザンと同じ魔力を持っていたことを感じ取ることが出来たのだった。


「たとえ擬態魔法を使っても本人の持つ魔力自体は変えられない。信じられないが、今目の前にいる彼はサザンそのものだ」


「……正直納得はいかないが、ランが言うのならそうなんだろう」


 ルカはランの言葉を受け入れ、サザンへの警戒を解く。


「よし、サザン。まずは私たちに付いてきてくれ。この街にあるはずの祝福の薬……ああ、薬については知らないのか。まあそれも歩きながら話そう」


 ランたち4人は教会へ向かいながら、サザンから聞いた話をサザンへと伝える。それを聞いたサザンは目に見えて怒りの感情を露わにし、ランたちに付いて行くことを決めた。


 そうして教会へとたどりついた4人だったが、流石に白昼堂々侵入するわけにもいかず一旦陰に隠れたのだった。


「どうする? 一旦夜まで待つか?」


「いや、薬がどう使われるかわからない以上対処は速い方が良い。俺の透明化魔法と気配遮断魔法を使って忍び込もう」


 サザンは全員に隠密系の付与魔法をエンチャントする。


「……この無茶苦茶な感じ。やはり君はサザンなんだな」


「うん、なんか言ったか?」


「いや、何も?」


 4人は隠密系付与魔法のおかげで簡単に教会の地下へと潜り込むことが出来た。


「こいつが祝福の薬か」


 地下には大量の祝福の薬が置かれていた。


「ああ、サザンから聞いた特徴と一致する。よし、気付かれない内に破壊しよう」


「いや、わざわざ気付かれるようなことをするのは悪手だ。ここは俺の変換魔法で中身を変えよう」


 サザンは変換魔法で薬を無害な液体に変換した。


「……これで終わったのか? 何ともまあ呆気ないな」


「サザンのおかげだ。ありがとう」


「いや、俺もランたちに出会えていなければこの薬に気付くことも無かっただろう。お互いに出会えたことが奇跡だったな」


「しかしこれからどうする? 集合はルガレア王国だが、一応サザンの向かった星龍の街に向かうか?」


「そうだな。もう一人のサザンに出会ったということも速く伝えたい」


 思わぬ助っ人の協力もあってすぐに薬の対処が出来たランたちは、サザンの向かった先である星龍の街を目指すのだった。





「なるほど、そんなことがあったんだな」


 緋星龍はサザンにした説明を同じく緋砲龍のサザンにも行い、これまた同じく結界外での活動が出来るように魔法を渡した。その際に緋砲龍のサザンに繋がった魔力パスからその記憶を読み取ったのだった。


「にしても俺が分霊だったとは。緋砲龍の力しか使えないのはそのせいだったんだな」


「俺も初めて聞いた時は驚いたもんだ」


「サザンが二人……」


 ランは目の前に映る異質な光景に、頭痛を感じ始めていた。


「ランもルカもギラも、何事も無くて良かった」


「サザンのおかげですぐに終わったんだ。あ、そっちのサザンだな」


 ランは緋砲龍のサザンに目線を向ける。


「それよりもさっきの話、魔王が攻めてくるってのは本当なんだな?」


「ルカ、やっぱり気になるのか?」


「俺は元々魔王を倒すために勇者パーティとして旅を始めたんだ。気にならないはずが無いだろう」


 次元迷宮での一件で勇者パーティは壊滅したことになっていた。それまでルカは勇者として魔王討伐を果たすために旅をしていたのだ。


「本当だ。今や魔王軍が攻めてくるのは時間の問題だろう。しかし、今のルカでは恐らく太刀打ちは出来ない」


「くっ……」


 緋星龍にそう断言され、ルカの表情には悔しさが滲み出る。


「だから二人の俺。今現在魔王軍に対抗できるのは俺たちしかいないんだ。どうか魔王軍と戦ってくれ」


「言われなくても、どちらにしろこのまま放って置いたらこの世界は終わりなんだろ? ならやるしかないさ」


「流石は俺だ」


「なら任せるぞ、俺」


「任せてくれ」


「ああ、必ず魔王を倒してやるさ」


 二人のサザンは緋星龍の願いを聞き入れ、魔王軍と戦うことを快く引き受けた。


「……そう言えば緋砲龍の力を宿す爪を手に入れたんだったな」


 サザンは地下洞窟に来る道中に拾った緋砲龍の爪を取り出し、自身の中に取り込む。


「ちょっと待て、お前も緋砲龍になったら見分けがつかなくなるだろうが」


「あ」


 時すでに遅し。緋砲龍のサザンが制止した時には、既にサザンは緋砲龍の力を取り戻していたのだった。


星龍の街と星龍教団 完

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