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大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる  作者: 遠野紫
星龍の街と星龍教団

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69 悪党はだいたい奥深くに潜り込んでいる

「にしても、教団の中にそんなヤツらがいるとはなぁ」


 無骨な大剣を担ぎ、怒りと呆れの混ざった表情を浮かべる大男が一人。そのそばには双剣を背負った小柄な女性が立っている。教団の者にしては物騒な装備をしたこの二人は、緋星龍が直々に編成し管理している戦闘用部隊の内の二人だった。


「そうね。それも話を聞く限り相当な悪党じゃない。許してはおけないわ。でしょ? カイリ」


「ああ、そうだ。この俺がしっかりと罪を償わせてやるさ。にしてもラパル、お前がそんなにやる気になるなんて珍しいじゃねえか」


 カイリは豪快に笑いながらラパルの頭を撫でる。


「ちょっとやめて……もう」


 口ではそう言うラパルだが、その表情は決して嫌がっているようには見えない。むしろ少し嬉しそうでもあった。


 二人は孤児院育ちであり、幼いころから共に過ごしてきた兄弟のようなものだった。そのころからカイリはラパルのことを実の妹のように可愛がっており、ラパルもカイリのことを兄のように慕っていた。その後緋星龍にその才能を認められ、教団の戦闘部隊として実力を磨いてきたのだった。


 故にカイリのこの行動は一種の愛情表現だったのだ。昔は嬉しそうに撫でられていたラパルだったが、年齢を重ねるにつれて羞恥心が芽生え始め、今では言葉上では否定するようになっている。とは言え本気で嫌がっていないことはカイリも理解しているため、今でも人のいない所では撫でることがあるのだった。


「さて、本題だ。話によると取引が行われていたらしいな」


「ええ。それも相当なお金の動きが無ければ出来ないようなもの。可能性としては教団の資金に手を付けているか……でもそれなら資金を管理している者の目に入らないはずは無い。ひとまず担当の者に話を聞こう」


「そうだな」


 二人は部屋を出て経理部門の元へと向かった。


「……カイリ様とラパル様が二人揃っておいでとは、一体私に何の用なのでしょうか」


「どうやら教団の者が他所の街で不埒な行いをしているようでな」


「おお、それはなんと罪深い」


「それでその者と取引を行っている者が、この星龍の街の中にもいるのよ。それも動いているお金の額から教団の中の者だと考えられるの。直近に何か不審な支出は無かったかしら」


「そうですね……特段異常は無かったかと思いますが」


 担当の教団員は少し言葉に詰まりながらそう答える。


「なあラパル、少し怪しくないか」


 カイリはその担当者の様子を見て、ラパルにそっと耳打ちをした。


「そうかしら。少し緊張気味なのは私たち戦闘部隊の者が来たからじゃない?」


「……そうか」


 戦闘部隊は緋星龍直属の部隊という事もあり、教団の中でも別段格の高い存在とされていた。そんな二人が突然現れたのだから緊張もするだろうとラパルは考えていた。


「まあ見落としもあるかもしれないからな。一応直近の内容を確認させてもらおう」


 教団の使用している帳簿は緋星龍によって特殊な魔術がかけられており、金庫内の資金の増減を自動で記載するようになっている。そのため教団内の金の動きがあれば絶対に帳簿に残るのだ。それを知っていたカイリは帳簿を確認しようとする。すると教団員は即座にその帳簿を取り上げたのだった。


「だ、駄目です。いくらお二方でも教団の帳簿は渡せません」


「そうか。まあ俺たちがその取引を行っている者だったなら、こうやって立場を利用して証拠を隠滅しようとするだろうからな。渡さないのは当然か」


「カイリの言う通りではあるわね。でも私たちは今回緋星龍様から直々に命令を受けているの。だから帳簿を確認する権利も貰って来ているわ」


 ラパルは懐から緋星龍の作った魔術的効力を持つ証を教団員に見せる。


「……星龍様の証。それでは仕方がありませんね。どうぞ」


 教団員は諦めたように帳簿をカイリに渡す。


「……見ろラパル。この部分、隠蔽魔術がかけられている。ほとんどの者は感知すら出来ないレベルまでに厳重に隠されているようだ」


「私に任せて」


 ラパルは隠蔽解除の魔法を使用して、帳簿の隠されていた部分を表示させる。


「おい何だこれは……教会がいくつも建てられるほどの金が出て行っているじゃねえか」


「この出金があった辺りに、何か大きくお金を使うことは無かったはず……。まず間違いなく取引を行っている者は教団内にいる……それもそれなりに地位の高い者のようね」


「金庫から金を出すには特別な証が必要だからな。それを持っているのは司教クラスや星龍様本人、もしくは管理を行う担当の者……。だが司教様は回復魔法も通用しない程に衰弱してしまわれている。とてもじゃないが教団内の金を動かして外部の者と取引が出来るとは思えん……」


 二人が帳簿を確認しながら話していると、途端に背後から強烈な殺気が放たれたのだった。


「……ぐっ!?」


 二人が振り返るよりも先に、後ろにいたはずの教団員はラパルを拘束していた。


「バレてしまっては仕方がありません」


「速いっ!?」


 殺気が放たれるのとほぼ同時に、教団員はラパルを拘束し終えていた。その速さは、相当な手練れであるはずの二人ですら反応しきれなかったほどだった。


「そうですね……あなた方二人は件の取引を行っている者に殺されたということにいたしましょう」


「そう簡単にはさせん!」


 カイリは背負っている大剣を抜き、構える。


「おっと動かない方が良いですよ。ラパル様がどうなるか……わかるでしょう?」


「くっ……」


「放せ! このっ!」


 体格こそ小さいものの、ラパルは鍛錬によって常人を凌駕する力を持っていた。にも関わらず、教団員の拘束から全く抜け出せる様子が無かった。


「私をただの教団員だと思っていたのが、あなた方の敗因なのですよ。何しろ私は元アサシンギルドの所属ですからね」


「何!? だが身辺調査は念入りにしていたはず……」


「そうでしょうね。でもそれを超えて行くのがアサシンなのですよ。でなければ殺し屋というものは成り立たない」


「……なるほど。力が入らないのはアサシンお得意の毒のせいということだな」


「その通りです。ですが心配はありません。身体能力の弱体化が目的であって致死性の毒ではありませんから」


 教団員はラパルに毒を注入し、無力化していたのだった。


「ふむ……小柄ではありますが、整った顔立ちにしっかりとした肉付き。殺すのは惜しいですね。いっそのこと奴隷にでもいたしましょうか」


 教団員はラパルの全身を舐めるように見ながら、あえてカイリを煽るようにそう言葉にする。


「貴様……!」


「やってくれ……カイリ! 私ごと斬れ!」


「おお、なんて健気なのでしょう」


「どうせ最初から殺すつもりだったんでしょう? アサシンであるなら最初に詰め寄った時にあんなに動揺するはずが無い……」


「ええ、そうですとも。実のところ私、ラパル様のことは昔から気になっておりまして」


「な、何を……!?」


 教団員はラパルの下腹部に触れる。


「とても良い形の生殖器をしていらっしゃる……」


「なっまさか透視魔法!?」


「はい。ラパル様をお見掛けする度に、透視魔法で覗いておりました」


「な、なんなんだお前は……!」


 透視魔法があるにも関わらず裸体では無く臓器を見ているその異常性に、ラパルは寒気が止まらなかった。


「いい加減にしろや!!」


 カイリは教団員の側面に回り、背丈ほどもある巨大な大剣をまるで片手剣かのように軽々と振るう。


「おっと……全く、血気盛んですね。それでは仕方がありません。聞き分けの悪いカイリ様のために、ラパル様には罰を受けてもらわねば」


「おい、やめろ……何をする気だ!!」


 教団員はラパルの太ももにナイフを突き刺す。


「うぐっ……」


 太ももから流れる痛みに、ラパルは苦痛の表情を浮かべる。


「貴様!」


「おやおやカイリ様。あなたのせいなのですよ? 私はラパル様の生殖器さえ無傷で残れば良いのですが……あなたはそうでは無いでしょう?」


「……ラパル」


 両者膠着状態のまま、動けずにいる。教団員もカイリとのタイマンでは絶対に勝てないことを理解していた。そのため人質であるラパルの死は自身の死を意味する。だがそれを悟られないように立ち回ることが彼には出来た。一方でカイリはラパルを人質に取られた状態では思うように動けない。一見すればカイリとラパルの二人が圧倒的に不利。


 だが、それはこの二人が普通の冒険者であればの話しだった。


「あ……ぁ?」


 教団員の胸には、ラパルを貫通してカイリの大剣が突き刺さっていた。

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