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大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる  作者: 遠野紫
星龍の街と星龍教団

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68 魔王軍

「大丈夫ですよサザン様」


 その者は人語を話した。だがサザンが気になったのはそこでは無い。


「サザン……様?」


 サザンの記憶の中で、自分の名を知っていて、さらに『様』付で呼ぶ人物は一人しか思い浮かばなかった。


「ガルデか? いや、だが声が……」


「いえ、ガルデで合っていますよ」


 その者はメットを取り外し、顔を見せる。数年が過ぎたことで少し顔つきは変わったものの、紛れも無くガルデだった。


「生きていたんだな!」


「ええ。彷徨い歩いているところをサザン様……緋星龍の方のサザン様に助けていただきました」


「そうだったのか。でもその装備は一体……?」


 サザンはガルデの纏っている装備について尋ねる。デオスの艦隊に使われていた素材で出来たその装備は、独特な金属光沢とともに謎の光を放っている。


「そうですね……何から説明いたしましょうか。まず、今の我々の状況から説明いたします。私とサザン様は魔王軍に対抗するために、まず情報を集めることにいたしました。しかしサザン様は結界の維持のためにこの場から動くことは出来ません。ですので私が魔王軍の中に潜入し、情報を集めることにいたしました」


「なるほど、そのための装備という事か」


「はい。そして私が手に入れた情報を元に、作戦を立てていたのです」


 ガルデはそう言い、作戦について書かれたタブレットをサザンに渡す。そこには魔王の住まう魔王城の大まかな構造から、魔王軍の兵士の情報、使用している兵装等が詳しく書かれていた。


「火薬銃……機械化された体ということから薄々わかってはいたが、やはり旧文明の武器を使っているのか」


「そのようです。魔王軍は火薬銃と魔法銃の両方の量産体制を整えており、全兵士に渡らせています。機械で出来た魔物は魔法を使うことは出来ませんが、武器を持たせることで攻撃性能は補えるでしょう。今の魔王軍は武力で言えば既にルガレア王国を余裕で滅ぼせるだけのものを持っているようです」


「それは不味い状況だな。だがそれなら何故侵攻して来ないんだ? それだけの力があればあっという間に人族の国なんて占領出来るんじゃないか?」


「確かにそうでしょう。ですが、幸いなことに魔王軍はサザン様の結界を通り抜けることが出来ないのです。それも、今は……という話ですが」


 ガルデはサザンにタブレットのページを変えるように促す。サザンがページを変更すると、謎の装置の図が目に入った。


「ご覧ください。結界の中和装置です。この装置が完成すれば、奴らはこの結界の中へ入って来るでしょう。そうなれば全面戦争は避けられません」


「そう時間は無いってことだな」


「だからお前には他の俺を探し、共に魔王軍と戦って欲しい」


「結界の外でか?」


「ああ。そのための防御魔法も渡す。そうだ、この際ファルもお前が連れて行ってくれ。このままここに居ても出来ることは少ないだろうからな」


「ファル……ファルがいるのか!?」


 緋星龍から出たファルという名に、サザンは強く反応を示す。


「これだけ近ければパスを繋げられるはずだ。よし、繋がった」


「サザンよ……お主もサザンなのか?」


「ファル! 良かった、無事だったんだな……!」


「……なるほど、確かにサザンなのだな。読み取れた記憶、確かに同じものだ」


 ファルはサザンの記憶を読み取り、サザンがサザンであることを確かめたのだった。


「ファルのサポートがあればまあきっと何とかなるだろう。いや何とかならないと世界が滅ぶ」


「そんな無茶苦茶な」


「だから何とかしてくれ俺。ファルと協力して何とか他の俺を探して魔王軍を倒して欲しい。いやせめて中和装置の破壊とその研究者の抹殺だけしてくれれば時間稼ぎが出来る」

 

「我も協力するから心配するなサザン」


「はぁ、わかった。ただ俺がこの街に来たのは教団の腐ったヤツがこの街にいるからなんだ。そいつを野放しには出来ない」


 そう、サザンがこの街に来たのは祝福の薬の取引先の中にこの街が記載されていたからだった。そのため魔王がどうこうと言うよりも、まずは教団が気になって仕方が無いのだった。もちろんサザン自身も魔王の方が緊急の事柄であることは理解していたが、それでも目前の悪は放置出来無かった。


「そうだったのか。なら心配はいらない。教団の中でも特に信頼できる者に任せよう」


「大丈夫なのか? 強い魔物になった司祭もいたんだが」


「ああ。パス経由でお前の記憶を読み取った限りだと、相当なことが起こらない限りこちらで対処が出来るだろう」


「そうか。ならそちらは任せる。と、俺の能力の事なんだが……。巨砲龍の一部を俺の中に取り込んだら能力が戻ってきたんだ。だからお前の一部もくれないか?」

 

 サザンは形態を進化させて緋星龍としての力を取り戻すために、体の一部を渡すように願った。しかしその願いを緋星龍は断る。


「すまん、俺としても同等の力を持つ者は欲しいが今は無理なんだ。いくつも形態を飛ばして進化すると体に負担がかかりすぎるんだ」


「そうなのか……ならしばらくは巨砲龍の力で何とかするしかないか。よし、ひとまず聞くべきことは聞いた。まずは他の俺と合流しないとな」


「色々不便ですまんな。だが出来る限りのサポートはする。任せたぞ俺」


 緋星龍から形態の進化が不可能であることを聞いたサザンは他の自分を探すために洞窟の外へと出て行く。サザンを見送った緋星龍はその後、教団の中から特に強い力を持つ二人を呼び出し、祝福の薬の対処に向かわせた。

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