55 最終決戦
最後に残ったのは、母衛星や他の基地に比べて遥かに大きいものだった。
ここから見てあの圧倒的サイズ感ということから、あれがヤツらの本拠地だと考えて良いだろう。つまりあれさえ破壊出来ればこの戦いが終わる。
そう考えると気が高まる。
俺は全魔力を主砲に集め魔力砲の準備を始める。同時にデオスの基地も光り始めた。恐らく光の線を放つ準備をしているのだろう。
数秒の後、俺が魔力砲を撃つのとデオスの基地が光の線を放つのはほぼ同時だった。
魔力の塊と光の線がぶつかり合い、衝撃波を起こす。どうやら俺の魔力砲の方が威力が高いようで、徐々に光の線を押し返していく。
そして基地にぶつかったかと思った瞬間、再度衝撃波が発生した。
デオスの基地は全体を魔力壁で覆っていたのだ。
何とか魔力壁を突破しようとする魔力の塊だが、結局魔力壁を突破できなかった。魔力の塊は霧散し、基地は再度光の線の準備を進める。一方で俺はほとんどの魔力を注ぎ込んでしまったため、もう高威力の魔力砲は撃てない。
どうするべきかを考えていると、一つ大事なことを思い出した。今までピンチの時にどうしてきたのか。今まで俺はあらゆるものを取り込んで進化してきたのだ。……ならば可能性はある。
俺は残る魔力を使って最初に破壊した母衛星に向かう。俺の読みが正しければ、あの母衛星を取り込んでさらなる進化が出来るはずなのだ。
半壊した母衛星は十数年経った今もそのまま残っていた。俺はその残骸を手に取るが、何も起こらない。体に擦り付けたり口に含んだりするが、それでも何も起こらなかった。
「どうすれば良いんだ……」
こうしている間にも基地の光はどんどん強く大きくなって行っている。あれを撃たれればリアの魔力壁も長くはもたないだろう。
もう一度考えろ。今までどうやって来た? 俺が新たな形態に進化した時の条件……。
緋砲龍になったときは起動迷宮の破片を取り込んだ。緋艦龍になった時は半壊した魔導戦艦との融合。そのどちらも俺は体の大部分を失っていて……。
「……それか」
その答えに辿り着いた俺は、自らの爪で腹部を引き裂いた。
「うぐあっぁあぁぁあ!!」
焼けるような痛み……今はもう慣れた龍転身を行う時のそれとは比べようも無い程の痛みが襲う。
「サザン!? 何をしておるのだ!?」
「進化するには……これしかないんだ……!」
緋色石で覆われた外皮は砕け、引き裂かれた肉から血があふれ出る。そこに再度母衛星の残骸をぶち込む。
その瞬間、俺の体は光に包まれ全身から力が溢れてきた。
「成功……したのか?」
光は母衛星の残骸を包み込み、そして消えた。
視界がはっきりしてきた時、俺の体は母衛星に匹敵するほどの巨体へと変わっていた。体の中心にある主砲には大きな変化がなかったが、代わりにその主砲と同じものがいくつも俺の周囲に浮いていた。どうやらこれは俺の意思で自由に動かるようで、純粋に火力が数倍に跳ね上がったことを意味する。それどころか今までは狙えなかった角度や方向にも狙いを定めることが出来るため、利便性も遥かに向上したと言って良いだろう。
俺はデオスの基地へと向き直り、すべての主砲から魔力砲を発射した。複数の魔力の塊は基地の放った光の線を簡単に打ち負かし、魔力壁へと衝突する。
最初の魔力砲よりも遥かに威力の上昇した今の攻撃は、基地の魔力壁を徐々に破壊していく。
そして数秒の後、魔力壁は完全に破壊された。
複数の魔力の塊は無防備になった基地にぶつかり爆発を起こす。何発もの魔力砲により、基地は完全に破壊された。
「これで完全に終わったんだな」
そう安堵した瞬間、おかしな現象が起こり始める。
破壊された基地に近い母衛星の残骸から、徐々に消滅し始めたのだ。その波は徐々に近づいてくる。
「何が起こっているんだ……」
『サザン様! お逃げください! 高密度な魔力爆発が……』
「ガルデ! どうした!?」
ガルデから通信が入るが、それもすぐに途絶えてしまった。
何が起こっているのかはわからないが、すぐに逃げた方が良いことは確実だった。
地上に近づくと、大変な状態になっているのが見て取れた。
人間たちが逃げまどい、混乱の渦となっている。
この状況から、地上にいても安全では無いという事を俺は認識した。ガルデの言っていた高密度な魔力爆発。恐らく基地を破壊したことでそれが発生したのだろう。そしてその爆発の影響は地上にも甚大な被害を残す。せっかく戻って来た人間の世界が、ここでまた破壊されてしまう。
そう考えた俺は、少しでも地上を守るために俺の巨体を利用して魔力爆発を受け止めることにした。
「サザン、何をする気だ?」
「ファル……すまない。もしかしたら俺はここで終わるかもしれない。そうなれば恐らくファルも……」
俺が死ねば、俺の中に居るファルも死んでしまうだろう。せっかくまた会えたのに、そしていつか生き返らせると決意したのに、こんな結末になってしまったことは悔やんでも悔やみきれない。
「気にするな。本来であれば我はあの時死んでいたのだ。こうして精神だけでも十数年間一緒に居られただけで我は満足だ」
「ファル……本当にありがとう……!」
俺のその言葉と魔力爆発が俺の体を焼いたのは、ほぼ同時だった。




