53 デオスの基地
「まさかサザン様の体の中がこんなことになっているとは……」
戦艦形態になっている俺の中に3人が乗り込む。
どういう理屈なのかはわからないが俺は魔導戦艦としての能力も持っているようだ。もう生物の枠組みを超えてしまっているような気がする。
「ちゃんと捕まっててくれ。かなり揺れるだろうからな」
俺は3人に注意を促す。デオスの前線基地まで一気に飛んでいくため、しっかり捕まっていなければ中は大惨事になってしまうだろう。
皆が捕まったのを確認し、俺は飛び始める。あっという間に成層圏を抜け宇宙空間に出た。速度をどんどん増していくと、小さな点が見えてきた。
それはどんどん大きくなっていき、形がはっきりしてきた。
母衛星よりも遥かに大きい宇宙船。あの母衛星がいくつも連結されている。直感的に理解する。これがヤツらの基地だと。
「サザン様、恐らくあれが基地でしょう」
「ああ。あれだけの大きさ、間違いない。それにあの母衛星と同じものがいくつもあるからな」
とは言え、母衛星を軽く破壊出来る俺の主砲ならばこの基地も破壊出来無いことは無いだろう。
俺が魔力を主砲に集め始めた時、巨大な映像が映し出される。
「あれは……!」
映し出された映像のデオスは、今まで倒してきたデオスとは違う雰囲気を纏っている。恐らく立場の高いものなのだろう。
「何故ここまで来られた?」
「何故……とは」
デオスはそう聞いてきた。何故と言ってもそれは俺が進化したからとしか言いようがない。
「人間がここに到達できるほどの技術力を持つのはまだ数十年先のはずなのだ」
「数十年先? まるで未来を知っているみたいな物言いだな」
「知っているとも。我々は未来から来たのだからな」
何を言っているんだ? 未来から来ただって?
「我々は未来から来た。遠い未来、人間は技術力を発達させ宇宙のあらゆる存在を手中に収めようと侵略を開始する。その中には我々◇◇◇も含まれているのだ」
「今何と?」
「貴様らには認識できない言葉になったか。我らの自動翻訳にも翻訳できる言葉と出来ない言葉がある。まあいい。将来的に宇宙の秩序を乱す人間を放っておくことは出来ない。だから人間を根絶させるために、我々は過去に戻ったのだ」
「その言葉を信じろと?」
「信じようとも信じなくとも、消滅する貴様らには関係が無いことだ」
仮にデオスの言う事が正しいのだとしたら、ヤツらが人間を執拗に殺そうとしているのと辻褄は合う。それに魔導戦艦を改良していけば宇宙空間を航行できるようにもなるだろう。人間による宇宙侵略と言うのは、少なくとも不可能では無いことだ。
だがだからと言って人間を殺しますと言われて、はいそうですかとは受け入れられない。最後まで抵抗するべきだろう。
「貴様らがここまで来られた理由はわからないが、そんなものはどうだっていい。今ここで抹消すれば良いだけなのだからな」
デオスはそう言って母衛星から一斉に光の線を撃ちこんでくる。今の俺にはそのどれもが簡単に避けられる代物だ。何よりこちとら中に大事な人が乗っているんだ。絶対に当たるわけには行かないんだよ。
「その速度、やはりおかしい。どうやってそれだけのものを作りあげたと言うのだ」
「色々とあるんだよ。こっちにも」
ヤツらは簡単に情報を開示したが、俺はそんなことはしない。この魔導戦艦が俺の体の一部だという事は黙っておいた方が良いだろう。情報戦を制した者が勝利に近づくんだよ。
俺は攻撃を避けつつ魔力砲の準備を進める。魔力が主砲に集まって来たところで、母衛星に向かってぶちかます。
侵略してきた母衛星と同じように簡単に破壊される。あっという間に基地に連結してあった母衛星は全て破壊されその機能を失った。
「なんだその攻撃は」
「俺の必殺技だ」
「……そうか」
それだけ言って映像は消える。基地からの攻撃は続くが、避けるのは難しいことじゃない。引き続き魔力を集中させ主砲から魔力砲を放つ。
何発も巨大な魔力の塊を受けたデオスの基地は完膚なきまでに破壊された。
「……もう終わったのか?」
一切の攻撃を止めた基地。もう何もしてくる様子は無い。沈黙。辺り一帯は沈黙に包まれた。
「どうやら終わったようですね。あまりにも呆気なさすぎるとは思いますが……」
「でも勝ちは勝ちだよ!」
「一応警戒は続けましょう。まだ何かしてくるかもしれないわ」
メルの言葉通りしばらく辺りの警戒を続けたが、何も起こらなかった。何か釈然としない感覚のまま俺たちは地上へと戻ったのだった。
--十数年後--
デオスの基地を破壊してから十数年が経った。
地上のデオスたちは皆活動を停止していたため、Bランク冒険者パーティでも処理が出来た。
人間はダンジョンの中に隠れる必要も無くなり、また地上が賑わい始める。デオスによって文明は破壊されてしまったため昔の文明レベルにまで戻ってしまってはいるが、箱庭の中の世界にそっくりであるため俺にとってはこっちの方が肌に合っていたりする。
しかしこの十数年間を生きてきて俺は自身の異質さに気付いた。俺は十数年間を生きているにも関わらず、年を取っていなかったのだ。
見た目だけの問題では無い。身体能力から記憶力、魔力量に至るまで何もかも衰退することが無かったのだ。
明らかにおかしい。とは言っても俺には原因がわからなかった。同じく箱庭から出てきたメルとリアは相応に成長しているのだ。
俺だけが、何故か年を取らなかった。
侵略艦隊 完




