52 帰還、そして反撃の始まり
基地へ戻ると、何やら大変なことになっていた。
「サザン! 生きてたんだ……良かった……良かったよぉ!!」
「突然通信が切れたので心配いたしましたが、無事のようで何よりです」
どうやら俺に通信が繋がらなくなってしまっていたらしい。恐らく宇宙空間に行ったことが原因だろう。通信魔法は通信できる距離を延ばさないといけないな。
「ちょっと通信出来ないところにまで行ってたんだ。心配をかけてすまない」
「いえ、無事ならば良いのです。それよりも、通信が届かないとなると……宇宙まで行ってたのでしょうか?」
「そうだ。デオスの母衛星は宇宙空間にまで行かなければ攻撃が届かなかった」
「そうですか……」
ガルデは急に黙り込む。何やら考え事をしているようだ。
「とうとうこの時が来たのですね」
「この時、とは?」
「私たちの反撃です。デオスの前線基地の位置は判明しています。しかし私たちにはそこまで行く手段がありませんでした。サザン様が宇宙空間にまで行けるというのであれば、その前線基地を叩くことが出来るためこの戦いを終わらせることが出来るのです。ヤツらに私たちの強さを見せつければ、攻めてくるのをやめるはずですから」
「デオスの本部を叩くってことだな」
「はい、その通りです」
今回倒したのはあくまで攻め込んできた部隊の込んできた母艦だ。またその内同じように攻めてくるはず。ならいっそのこと前線基地を叩くというのは作戦としては悪くないだろう。
「そう言えば今まで聞きそびれていたんだが、デオスが攻め込んでくる理由って何なんだ?」
「まだ話していませんでしたね。あれは数年前の事です……」
ガルデは俺にデオスが現れた時の事やそれからの戦いの日々、その中で判明したことなどを話した。
侵略者デオスがどういったものなのかはこちらに来てすぐ聞いていたが、詳しいことについて聞くのはこれが初めてだ。
ヤツらは高い知能を持っている生命体であるらしい。それは船や衛星を作ることが出来る技術力があることからも明らかだ。
最初に現れたのはルガレア王国周辺であったようで、魔物と同じように冒険者や軍隊によって処理されていたらしい。しかしだんだんとデオスは強さを増していき、いつからか並みの冒険者たちでは手が出せなくなってしまったのだという。
それでも高ランクの冒険者パーティや軍隊の実力者ならば倒せない相手では無かったようで、危険ではあるものの国民を避難させるというレベルでは無かったようだ。
その判断が間違っていたのだと、ガルデは怒りと後悔の滲む表情で話し続けた。
徐々に強くなるデオスの異常性に気付いた時には既にSランク冒険者パーティなどでも手に負えなくなっており、あっという間に人口は減っていったのだという。
その中で判明したデオスの生体は知りたくも無いものだったようだ。ヤツらは生き物の体液を吸いエネルギー源としていたのだ。それだけならば他の魔物とそこまで変わらない。問題なのは、ヤツらは生きているもののみを狙うというところだ。後からわかったことでは、ヤツらは生き物の体液から魔力を取り込んでいたのだという。今では他の方法で魔力を補給する方法を見つけたらしく、生物からの補給無しでも活動を続けているようだ。
こうして地上は瞬く間にデオスに侵略され、死体とデオスのみの荒んだものとなってしまった。魔物すらもデオスに殺され、地上から姿を消してしまった。もうこの星はおしまいかと思われたその時、各地に存在するダンジョン内にはデオスが入らないという情報が出たのだった。
この情報にすがって、人々はダンジョンの内部へと避難した。幸いダンジョン内の魔物は強さがだいたい決まっており、適正レベルの冒険者や傭兵がいれば安全は確保された。
それでも安全なダンジョンと言えるのは一握りである。ほとんどのダンジョンは強力な魔物が跋扈しており、そこで生活するのは苦労を強いられるだろう。それでもデオスに比べれば遥かに対処しやすかったため今に至るまで何とかしのいでいるのだと言う。
その後、一部のダンジョンに避難した者たちがレジスタンスを名乗りデオスに反旗を翻したのだという。
「それが、ガルデたちか」
「はい。今この基地にはサザン様を含めて4人しか残っていませんが……」
それだけデオスとの戦いは熾烈を極めたということだろう。
「そう言えば、こっちの世界にも冒険者はいるんだな。これだけ技術が進んでいるから他のいい方法があるのかとも思ったが」
「大きな国は高い技術力と訓練された軍隊を揃えていますが、地方ではまだそうもいきませんからね」
「小さな村や町は自分たちを守るために冒険者というシステムを残したんだな」
「その通りです」
「それで、結局ヤツらがこの星を狙う理由はわかっているのか?」
「それがまだ詳しくはわかっていないんです。デオスが魔力を必要としていることからこの星に満ちる魔力を求めていることはわかるのですが、何故執拗に人間を殺そうとするのか……それがわからないんです」
デオスの頭領と直談判……と言う訳にも行かないよな。
「なのでこのまま絶滅してしまうくらいなら、私たちはヤツらを殲滅し地上を取り戻します。そうしなければ死んでいった者たちが報われませんから」
「ああ、改めて俺も協力させてもらう。デオスを放っておけばメルとリア危険が及ぶかもしれない。それに他の人にも被害が出るんだ。ただ黙っているわけには行かないさ」
「協力感謝します。それでは早速準備をいたしましょうか」
ガルデはそう言うとホールから出て行った。
しばらく待つと、抱えられるだけの武器を抱えて現れた。
「ガルデ、それは?」
「私たちが作り出した兵器です。デオスに効力があるのは確認済みですから安心を。……数週間前の事ですが」
最後の一言ですごく不安になる。
「このダンジョンには魔物が湧かない代わりに機械兵が湧いてきます。あれはルガレア王国を始めとした大きな国が共同で開発していた新兵器なのです。これの開発がもっと進んでいればあれほどの被害を出さずに済んだのかもしれないのですが……いえ、今更考えても意味はありませんね。この機械兵を魔物として湧かせるための装置をこのダンジョンには仕組んであるのです。だから今まで戦ってくることが出来ました」
なるほど、あの大量の機械兵はダンジョン内で自然生成されるものだったのか。恐らく箱庭内の次元迷宮にもその影響が出ていたのだろう。
「その機械兵の一部を使い作り出した武器がこれなのです。従来の武器では歯が立たないデオスにも、これならば対抗できるはずです」
「そこに俺のエンチャントを使えば敵無し……と言うのは傲慢かもしれないが、それでも相当な武器になるはずだ」
「是非、よろしくお願います。英雄が戦士でも魔術師でも無くエンチャンターであることを知った時はどうなるかと思いましたが、今思えばサザン様がエンチャンターで良かったと思っています」
「真正面からそう言われると恥ずかしいが、悪い気分じゃないな。……ふぅ、これからが本番なんだな。俺の力がどこまで通用するのかはわからないが、最後まで全力でやってやるさ!」
いよいよ最後の戦いだ。と言ってもこちらに来てからそう長いことは戦っていないのだが。
だけどそれは今の俺にとってでしか無い。元の俺やメルやリア、ガルデにこの世界に住む人、色々な思いを背負って戦わなければならない。
今ここから、俺たちの最後の戦いが始まるのだった。




