51 緋艦龍
『緋艦龍』……それがこの姿の名だった。
緋色の体はそのままに戦艦の装甲のようなものへと変質しており、強度は数倍に跳ね上がっているようだ。そして何よりも気になったのは砲塔だ。魔導戦艦の主砲のような見た目に変わっているのもそうだが、とにかくサイズが大きくなっている。この砲塔から繰り出される魔力砲なら、あの圧倒的な威圧感を放つ母衛星も破壊できるかもしれない。
魔導戦艦の力を手に入れたことによって俺は飛行することが出来るようになっていた。その飛行能力を使い、俺はぐんぐんと速度を上げ母衛星へと向かって行く。
数秒程飛び続けると辺りは徐々に暗くなっていった。宇宙……と呼ばれる空間に出たようだ。
母衛星まで大分近くまでやってきた。デオスもこの状況を良く思っていないようで攻撃が激しくなる。だが俺の飛行能力の前にはほとんど無意味だ。攻撃を避けつつ魔力砲で船を撃ち抜いていく。ただ、それだけではきりがない。なので俺は母衛星が船を生み出しているであろう部分に魔力砲をぶち込んだ。
俺の進化した砲塔による魔力砲は簡単に母衛星の一部を破壊する。予想通り、それ以降は新しく船が生み出されることは無かった。
同じように他の部分にも攻撃を繰り返して破壊していった。
「やっぱりこの母衛星さえどうにかできれば俺の勝ちだな……よし」
俺は覚悟を決め、さらに近づいて行く。今の俺の飛行能力でも油断すれば光の線を受けてしまう可能性がある。俺の体はより丈夫にはなったが、流石に直撃すればどうなってしまうかわからない。気を付けるに越したことは無いだろう。
新たに船が生み出されることは無いが、既に出ていた船が戻ってきているため取り巻きの攻撃にも気を張る必要が出てきた。そのまま放っておくと危険が危ないため、余裕があるときには随時魔力砲で撃墜していく。
とうとう母衛星の間近にまでたどり着く。しかし、あまりにも大きすぎるこの母衛星を破壊しきれるのかはまだ不安が残っていた。それでもやらないわけにはいかないのだが。
「今度こそ、終わってくれよ……!!」
全魔力を砲塔へと集中させ全力の一撃を放つ準備をする。宇宙空間では飛行能力を使わなくともその場で制止出来たため、飛行に使っていた分の魔力も注ぎ込む。今攻撃をされたら一巻の終わりだが、そうならないように取り巻きは排除してきたのだ。正真正銘の全力の一撃を叩きこむための準備を出来る限り行った。後はもうこの一撃に賭けるだけだ。
「うおおぉぉぉぶっこわれろォォォ!!」
体の中心、巨大な砲塔からは母衛星の半分ほどの大きさにもなる魔力の塊が放たれる。
「……は?」
あまりにも大きすぎるソレに、放った自分自身も驚いてしまう。今までも進化していくたびに魔力砲の威力は上がっていった。だがこれほどまでの常識はずれな上昇をしたのは初めてだ。やはり元々高威力な魔導戦艦の主砲を取り込んだのが影響しているのだろうか。
これほどの魔力の塊を受けた母衛星は半壊状態となり、その機能を停止させたようだった。もう攻撃してくる素振りも新しく船を生み出す様子も無い。
それはすなわち俺の勝ちを示していた。
「……勝ったな」
俺の圧倒的な火力の勝利だった。
「無事で何よりだぞサザン。それと、どうやらおもしろそうな能力があるみたいだ」
「面白そうな能力? ……って何だこれ?」
ファルの声が聞こえたかと思うと、次の瞬間には俺の姿は魔導戦艦に変形していた。特徴的な砲塔は変わらず主砲としての機能を果たしているものの、それ以外の龍のような特徴は無くなり完全に戦艦と化していた。
「それにしてもファルは何故こんな能力があるって気付いたんだ?」
「我の中にもサザンの状態が流れ込むようになったのだ。理由はわからんが、これで我もサザンのサポートと言う形で一緒に戦うことが出来るぞ!」
「それは何よりだが……」
それよりも気になるのは戦艦としての見た目だろう。わざわざ龍の形態から戦艦の形態に変化するという事は、俺の体内は今戦艦のものになっているという事なのだろうか。
「我の操作によっていろいろと出来るみたいだな。扉の開閉に操縦……操縦?」
操縦って……本体である俺の意思はどうなるんだ。
待てよ、ここまで来るともはや俺は生物の枠を超えてないか? それに転身解除を行うと中のものはどうなるんだ?
……謎だらけだ。
「……ひとまず基地に戻ろうか」
面倒なことは後回しにして、一旦基地に帰ることにした。考えるべきことはたくさんあるが、それは皆にも聞いてもらった方が効率が良いだろうしな。




