49 艦隊襲来
こちらの世界でデオスと戦い始めて早数日、ガルデの言っていた通りデオスは徐々に強くなって行っている。今は苦戦する程のものでは無いが、いつこちらの攻撃が通用しなくなるかはわからない。俺自身ももっと強くならなければならないようだ。
このような状況で単身基地を守り続けたガルデは大したものだ。
「サザン、こっちでの生活もちょっとは慣れてきたかしら」
「ああ。食べ物は向こうとあまり変わらないのが良かったのかもしれないな」
「箱庭の中の世界はこっちの数十年前の世界を再現したものだから、そこまでの変化が無い部分もあるのよ」
「そうなのか?」
「ええ。新しい世界を一から作るよりも元からある世界を再現する方が楽でしょう?」
「それもそうだな」
この世界は向こうの世界の未来に当たるわけか。確かにそれなら次元迷宮の中で見つかるものが高い技術力で作られていても違和感はない。
……俺も本来はこの世界の記憶を持っているはずなんだよな。いつか思い出せると良いんだが。
「皆様、デオスが攻めてきました! しかもかなりの反応です……」
「なんだって!?」
ホールに引きつった表情でガルデが入って来る。今までは俺の圧倒的な戦いのためか、これほど慌てることは無かった。しかし今は違う。今までにない程に切羽詰まった様子なのだ。
「どうしたんだ!?」
「ヤツら……一気に攻め込んできたようです。この数で攻めてくることなど今まではありませんでした。恐らくサザン様を明確に脅威として認めたために一気に終わらせるつもりなのでしょう」
「わかった」
俺は急いで外へと向かう。とその前に、開発していた付与魔法を皆にエンチャントしていくのを忘れていた。
俺は以前開発した通信魔法をアップグレードし、不特定多数の人数でも通信が出来るようにしたのだ。
「何かあったらこれで通信してくれ」
「わかりました。それではお気をつけて」
俺は今度こそ外へ出たのだった。
外に出ると、目視でもわかるくらいの大きさの黒い点が上空に現れていた。恐らくあれ一つ一つがデオスだろう。地上からの進行では俺の魔力砲で蒸発させられてしまうことを学習したのか、ヤツらは空から襲いかかってくる。
とは言え、魔力砲の範囲に入ったらその都度撃破すれば良いだけだ。
魔力砲の連発によって視界内のデオスは殲滅される。しかし数秒経つとまた黒い点が現れるのだ。
何度も魔力砲で消しても、その都度現れる。いつまで経っても黒い点は現れ続けたのだ。
「どうなっているんだ……」
『サザン様、魔力は大丈夫でしょうか』
「ああ、まだ大分残っている」
『ヤツらの数があまりにも多すぎます。一度戻って補給を行うのも考慮してくださいね』
「わかった。その時はまた連絡する」
長いこと戦いが続いたためかガルデから連絡が入る。今のところはそれほど魔力不足なわけでは無いが、このまま戦いが続くのであればどこかのタイミングで補給が必要だろう。
ただデオスは変わらず現れ続けるため、補給すると言ってもそう簡単に戻れる状況でも無かった。
そこからどれくらい経っただろうか。ヤツらの進行は一向に止まる気配は無く、いつまでも現れ続けた。
「……あまりにも数が多すぎないか?」
どう考えてもおかしい。これだけの数がいるなら一度に攻めてくれば良いものを、ヤツらは倒される度にやって来る。まるで倒したそばから新しく生まれているみたいだ。
『サザン様! 上空に気を付けてください!』
「なに……うぉぉ!?」
ガルデの声で上空を向くと、太い光の線が向かって来ていた。すぐさま移動したため大きなダメージを負うことは無く、掠ったところが少し焦げただけだった。とは言えこれが直撃すれば緋色石の体と言えど無傷ではいられないだろう。
「ガルデ、今のは何かわかるか?」
『デオス一個体にしては反応が大きすぎますね……。考えたくはありませんが、ヤツらの母艦かと思われます。そうまでしてでもサザン様を消すつもりなのでしょう』
「母艦……ヤツらがいつまで経っても倒しきれないのは母艦が原因だったりするのか?」
『その可能性はあるかと。デオスについてはわからないことも多いですが、現状はそう考えるのが妥当かと思われます』
となると厄介だ。母艦を倒さない限りデオスは生まれ続ける。そうなればジリ貧どころの騒ぎでは無い。先にこちらの魔力が尽きるだろう。
だったら母艦を叩く。それが最善の手だろう。
光の線が放たれた方を向くと、他の点とは違う大きなものが見える。恐らくあれが母艦なのだろう。俺はそれに向かって魔力砲を放った。
しかし、その魔力砲は届くことなく空中で霧散した。あの母艦は、魔力砲の届く範囲よりもはるかに高い位置に浮いていたのだ。




