48 デオス
害宇宙からの侵略者デオス。人型ではあるものの、蛸のような触手を持っており人間とは似ても似つかぬ異形の存在だ。
何やら魔物ともまた違う雰囲気を感じる。
俺はヤツを倒すため、龍転身を行い緋砲龍の姿になった。その姿に気付いたデオスはこちらへと向かってくる。周りの機械兵よりも脅威になる存在だと判断したのだろう。
ヤツは触手を巻き付かせて来る。そのまま俺の体を潰そうとしているのだろうが、残念ながら傷一つ付けることは出来なかった。緋色石で出来ているこの体にはそう簡単には傷を付けることは出来ないのだろう。
それを理解したのか、今度は目からレーザーを放ってくる。ただその攻撃も俺の体に弾かれる。
「侵略者だか何だかわからないけど、向こうで戦った魔物よりも弱いじゃないか……」
俺は触手を掴み、引きちぎる。そのまま本体を引っ張り地面に叩きつける。砲塔を使うまでも無かった。
俺は元の姿に戻り、建物へと戻ったのだった。
「サザン、大丈夫!?」
「ああ、特に怪我もしていないよ」
「よかった~!」
「思っていた以上の力です。サザン様ならデオスたちを殲滅出来るかもしれません」
実際に戦ってみた感覚からも、俺ならどうにかできるのでは無いかと思ってしまう。だからと言って油断すれば起動迷宮との戦いのときのように犠牲者が出てしまうだろう。もうファルのように大切な人を失いたくはない。
「しかし、記憶が無いと言うのは不便ですね。こちらの道具の使い方などもわからないのでは生活するのも難しくなってしまいます」
「いや、箱庭や侵略者についての記憶は無いが道具についての知識はあるみたいなんだ」
「そうなのですか?」
「この建物が緋色石で出来ていることや、さっき見せてくれたタブレットなんかはどういったものなのかがわかったんだ。もしかしたら一部の記憶が抜け落ちているだけなのかもしれない」
侵略者についての情報が抜け落ちているのは、これから戦う対象として問題かもしれないがこれからまた覚えて行けばいい話だ。
箱庭と言えば、もうあの中には戻れないのだろうか。ランに別れの言葉も言っていない。……いや、さっきガルデはランから俺に付いての記憶を消去したと言った。今会ったところで彼女は俺の事を覚えていないだろう。わざわざそうするということは、俺はもう箱庭の中には戻れないと考えるべきだ。
「さて、ひとまずはこの基地の中を案内しようか。これからここで生活することになるわけだからね」
ガルデに案内され、基地中を周った。各々の部屋からホールへはほとんど一直線なため迷うことは無いだろうが、バスルームや食堂、倉庫などの施設へは入り組んだ道になっているためにしばらくは大変そうだ。
何故こんなに入り組んでいるのかをガルデに尋ねたところ、帰って来た答えは元々はダンジョンだったこの建物を基地に流用しているからだというものだった。
確かに起動迷宮と同じ素材で出来ているダンジョンを使えばデオスたちから身を守るのに最適だろう。
部屋の数から考えて他メルたち以外にもメンバーがいるはずだ。一応声をかけておくべきだろう。俺もこれから一緒に戦うことになるんだからな。
「なあ、他のメンバーはどこにいるんだ? 一応一声かけておきたいんだが」
「いませんよ。いえ、最初は数十人いました。ですが戦いを続けて行く内にどんどん減っていき、今では私とメル様、リア様……そしてサザン様の4人しかいません」
「それじゃあメルとリアが箱庭の中に居た時、どうやってここを守って来たんだ……?」
「機械兵を使って何とか防衛してきたんです。ですがそれも限界が近く、無理やりにでもサザン様をこちらに連れてくることにしたのです」
思ったよりも状況は悪いようだ。たった数人でデオスたちを殲滅し世界を取り戻す必要があると言うのか。中々難しい話ではある。
でも、俺の力を信じてガルデは耐えてきたんだ。それを無下には出来ない。
必ず俺がヤツらを殲滅し、この世界を取り戻して見せるんだ。
覚悟を決めた俺をよそに、再度警報が鳴る。
「さっき倒したのに!? 新しいのが来るの速すぎるよ!」
「どうやら、デオスたちはサザン様の存在を良く思っていないようですね。ここで一気に攻め落とすつもりでしょう」
「そんな……」
「大丈夫、心配しないでくれ。俺がすぐ終わらせてやるさ」
俺は外へ出て行き、緋砲龍になる。そして砲塔に魔力を集中させ、ヤツらの群れにぶちかました。
数千体と言うデオスの群れが魔力の塊に包まれ蒸発していく。
「終わったな」
俺が元の姿に戻ろうとしたその時だった。
「サザンよ、聞こえておるか」
声が聞こえた。もう二度と聞くはずはない声……ファルの声だった。
「……ファル……なのか? でもいったいどこに……」
「どういうことかはわからぬが、我は今サザンの中にいるようだ」
「龍転身に巻き込まれたのか!?」
「どうやらそう言う事でも無いようでな。我には今体が無いようだ。気が付いたらサザンの中で目が覚めたのだ」
「そうか……」
あの時、起動迷宮と一緒にファルの一部が俺の中に取り込まれたと考えるのが自然か。龍転身にはまだわかっていないことも多いから、俺の知らない力があったとしてもおかしくは無い。
「決めた」
「何をだ?」
「このままデオスたちを倒しつつ、ファルを元に戻す方法を探すよ。いつになるかはわからないけど、また一緒にいられるようにな」
「……ありがとう、サザン」
もう二度と話すことは無いと思っていた。けれど、もう一度会うことが出来たのだ。この奇跡を逃すことは出来ない。ランも含めて、いつかまた5人で冒険が出来る日を取り戻してやる……!
起動迷宮 完




