38 次元迷宮
ルガレア王国を襲ったイル・ネクロとイル・クロマが倒され、王国はかつてのような賑やかな国へと戻った。貿易の中心地が活気を取り戻したことにより世界はまた回り始める。平穏な日常を取り戻したのだ。
しかしそんな中、謎のダンジョンが各地に現れたのだ。取り戻した平穏に終止符を打つものか、はたまたさらなる平穏をもたらすものか、それは誰もわからない。何しろそのダンジョンには見たことも無い魔物や道具が溢れていたのだから。
◇
「皆さん! 噂のダンジョンから持ち出された火薬銃はこちらですよ!」
「こいつは……火薬銃なのか?」
「俺の火薬銃とは見た目が大きく違うようだが……」
何やらギルド内が騒がしい。どうやら最近話題のダンジョンから道具が持ち運ばれたらしい。火薬銃と言うと先日の戦いの際に傭兵が持っていたのを見たが、他の冒険者の言葉を聞く限り普通のソレでは無いようだ。
俺も見て見ようと、声の方へと向かった。
一目見てわかった。これは明らかに異質なものだ。俺自身火薬銃にそこまで詳しいわけでは無い。しかしそれでも何かがおかしいというのはわかった。この火薬銃にはやたらと突起が付いており、通常の火薬銃とは似ても似つかない風貌なのだ。
それだけでは無い。恐らく弾と思われるものも、よく見る鉛玉とは大きく形が違っている。筒形のような細いものであり、見たことの無い金属で加工されている。そして何よりも驚愕したのは、これを複数同時に装填できるということだった。
火薬銃は一発撃つと弾を装填し直す必要があり、連射など出来ない。だがこの火薬銃は恐らく連射をするために作られている。当然だがそのような加工技術を持っている国は今まで聞いたことが無い。
「これは凄い……」
思わず声に出る。何しろ、これほどの高性能な武器が手に入るダンジョンがあるのだ。冒険者だったら誰もが絶対に潜りたいダンジョンである。
「おや、この火薬銃に興味がおありかな?」
「火薬銃に、というよりはこれが発見されたダンジョンの方に興味がある」
「なるほど、それなら急いだほうが良い。近々大規模な探索体が派遣される予定だからね」
これほどのものが発見されるのであれば当然だ。であれば行くならさっさと行った方が良いだろう。探索され尽くされたダンジョンに潜ることほどつまらないものは無いからな。
俺たちはギルドから、例の火薬銃の持ちだされた場所……次元迷宮と呼ばれているダンジョンの場所を教えて貰った。そして早速そのダンジョンへとやって来たのだ。
「……何……これ?」
メルはダンジョンの入り口を見て呆気に取られている。それも当然のはずで、このダンジョンの入り口は岩や植物に覆われている自然の一部と言ったものでは無かった。見たことも無い金属のような物質で構築されているのだ。例の火薬銃もそうだが見たことの無い金属が多すぎる。未知なる要素が多すぎるのだ。
そうは言っても直接害のあるものでは無さそうなので、慎重に中へと入る。細い通路を抜けて最初にたどり着いた部屋がもう既に恐ろしい。例の火薬銃の小型のものが転がっているのだ。
それだけにはとどまらず、細く長いしなやかな剣や折りたたまれた謎の板など見たことの無いものがそこかしこに転がっている。これは探索のしがいがありそうだった。
あまりの光景に興奮していると、突然奥の方から物音が聞こえてきた。
「サザン、何かいるぞ」
「ああ」
どうやら魔物のお出ましだ。見たところ中型のイノシシの魔物のようだが、全身が金属光沢に包まれている。それはダンジョンの入り口と似たようなものだった。
「よし、いつもと変わらず俺たちが援護するからランとファルは前を頼む!」
「了解だ。とは言えあの魔物は初めて見る。何をしてくるかわからないから、後ろでも油断はするな」
ファルとランは己の武器を構え魔物の方へと走っていく。そして共に攻撃を行う。いつもならだいたいこれで終わっていた。だがこの魔物は違ったようだ。
「硬い……!?」
「なんだコイツは! 攻撃が通らんぞ!」
ファルもランも、強化された俺の付与魔法をエンチャントしているにも関わらず攻撃が弾かれたのだ。Sランク魔物すらも瞬殺できる程に上昇した能力でも、あの魔物には通用しなかった。
「どうなっているんだ!?」
「サザン、あの魔物何かおかしいよ……」
「そうね。ここ最近はSランク魔物も簡単に倒せていたわ。だからあれほどの硬さを持っているということは、Sランク魔物以上の脅威と言うことになるわね」
「そんな……」
不安そうな顔をするメル。俺の見立ては甘かったのかもしれない。これほどの未知なるものが発見されるダンジョンなのだ。当然魔物も未知なる存在であると想定するべきだった。Sランク魔物を楽に倒せると言う事実から調子に乗っていた俺のミスだった。




