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大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる  作者: 遠野紫
勇者パーティの後始末

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21 魔人の過去

 俺は対処法として『魔力抑制』の付与魔法を作ったことをファレルロに話した。

 魔力抑制を使えばファレルロから放たれる魔力を減らすことが出来、外の魔物の活性化も抑えられるはずだ。


「だがそれが上手くいったとして、我は魔人だぞ。到底人々に受け入れられるはずが無い」


「それについては、ファレルロが今後人を襲わないのであれば一つ提案がある」


「魔人が人を襲わないなんて、出来るの?」


「……? 何か勘違いしているようだが、魔人は高い魔力を持った異形の存在というだけであって別に人を襲うのが目的と言うわけでは無いぞ?」


「え……でも伝承とか逸話だとだいたい人を襲うって」


「我もそうだが、憎悪によって魔人になったものはその対象を抹殺するまで消えることの無い恨みと破壊衝動に苛まれる。多くの場合それが記されているのだろう。まあ人を殺したことに変わりはないのだが……」


 魔人についてわかっていないことが多いとは言え、これほどまでに大事なことが人に伝わっていないとは。

 ……考えてみれば当たり前だ。人を殺すと伝えられている魔人と誰が対話などしようとするのか。魔人も魔物も、同じく人を害するものとして扱われても仕方が無い。


 だがそれでわかったことがある。


「でもお前は母親を害した者しか殺していない……そうだろ?」


 ファレルロは被害者だ。彼女は母親の一件がなければ魔人になることは無かったのだから。


「……なぜそう思う」


「逸話が残っているということは、その惨状を見ていた者がいるってことだ。そしてその者が生きているってことは……ファレルロが殺してないってことだろ?」


「……ああ。確かに我は母親を殺した者だけを殺した。だがそれがなんだと言うんだ! 人を殺めたことに変わりはない!」


「そんなの、少なくとも俺たちは気にしないぜ?」


「なに……?」


「俺たちは冒険者だ。依頼があって、その対象が悪人なら人だって殺すさ。俺たちは正義の味方ではないからな」


 ファレルロは少なくとも母親の復讐を果たしただけだ。

 ならそれは正当な……と言うのもおかしい話だが、それでも糾弾されることでは無いと思う。世間一般的に許されるかどうかは別としてだが。

 仮にファレルロが糾弾されるのだとしたら、俺たち冒険者だって数多く人を殺しているから同類のはずだ。


「別に人を殺してもいいって言ってるわけじゃない。ファレルロ、お前がしたことを……お前はもう悔やまなくていいんだ」 


「……そうか」


「なあ、俺ならお前の見た目を変えられる。人の世界で生きてみないか?」


「何を言っているんだ!?」


 俺の突然の提案に、ファレルロは驚いたようだ。

 

「魔力を抑えて人の見た目になれば、冒険者としてやっていけるはずだ。ぜひ、俺たちの仲間になってくれ!」


「……本当に出来るのか?」


「ああ」


「なら……我はその言葉に甘えようと思う」


 俺はファレルロに魔力抑止をエンチャントし、続けて彼女の記憶を参照して人であった時の姿に戻す付与魔法をかけた。

 改めて俺がエンチャンターで良かったと思う。ここまでなんでもありの魔法を新たに作ることが出来るのは、きっとエンチャンターだけだろうから。


 付与魔法によってファレルロの姿は見る見るうちに変わっていく。

 発達した腕は細くしなやかなものに。禍々しかった体は華奢な少女のものに。

 薄い桃色のロングヘアに同じ色の目をした、とても愛らしい少女へと姿を変える。

 初めて使う魔法だが、見事にどこから見ても人間の少女としか思えない姿に変化させることに成功した。

 

 正直失敗したらどうしようかと考えていた。


「かわいい! かわいいよ!」


 リアがファレルロの手を握り、ぶんぶんと振り回す。

 先ほどまで命をかけて戦い合った存在だと言うのに、リアはもう順応していた。


「本当に、大丈夫なんだな? もし変なことをしたら、剣を抜いても悪く思わないで欲しい……」


「ここまでしてもらったんだ。これでお前らを裏切ったらそれこそ悪逆な存在になってしまう」


「そうか……。私はラン、エルフ族の剣士だ。これからよろしく」


「あ、私も挨拶するね。私はリア、神官だから回復が必要ならいつでも言ってね!」


「私はメル、魔術師よ」


「そして、俺がパーティリーダーのサザンだ。エンチャンターをしているからサポートは任せてくれよ」


「では我も改めて名乗ろう。我は魔人ファレルロだ」


 彼女が改めて魔人ファレルロと名乗ったことで気づいた。このままの名前だと不味いと言うことに。

 逸話に伝わる魔人と同じ名前だなんて、どう考えても怪しまれる……!

 そうでなくともその名を付ける親に問題があると思われる……!


「名前を変えよう。流石にファレルロのままだと不味い」


「それもそうだな。しかし人だった時の名前は覚えていなくてな……。ファレルロと言う名も、数百年前に我を一度殺した者がつけた名なのだ」


「ちょっと待て、過去に一度殺されているのか?」


「ああそうだ。まだダンジョンに封印される前、我は一度殺されている。だがあやつはあろうことか我に蘇生薬を使ったのだ。その後我が目を覚ました時、あやつは透明化の鎧をその場に残したまま姿を消した」


「ん? 透明化の鎧はその後どうしたんだ?」


「朽ちてしまった。流石に数百年と言う年月には耐えられなかったようだ」


 なんだその訳の分からないヤツは……。

 魔人を単身で倒すのも凄いが、倒した後蘇生させるのも戦利品の装備を置いていくのも異常な行動すぎる。

 いったいどんなヤツなんだ……。いや、会いたくは無いし恐らくもうこの世にはいないのだろう。


「ファレルロだから……ファル! ファルちゃんっていうのはどう!?」


「ファルちゃん!?」


「なるほど、それなら怪しまれないな」


「確かに」


 ファレルロを殺した存在について考えていたら、いつのまにかリアが妙案を出していた。

 ファル……確かにこれなら怪しまれないし響きがかわいい。


「では、我はこれからファルと名乗ることにしよう。新たな名をありがとう、リア」


「いいのいいの! もう仲間なんだから!」


「よし、そうと決まればギルドに行って正式にパーティメンバー追加の処理をしてもらうか!」


 俺たちはギルドに向かう。

 しかしこの時の俺たちは、この後のとてつもない歓迎など知らなかった。

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