15 あっけない最後
「クイーンワーム!? アイツはさっき倒したはず……!」
倒したはずのクイーンワームが現れ、村長を食い始めたのだ。この場にいた誰もが何が起こったのかわからなかっただろう。
「助けてくれ! 我はここで死ぬべき存在じゃないんだ!! おい、聞いているのか!!」
村長がわめき散らすが、誰一人として動こうとしない。
それもそのはずだ。村長の洗脳スキルは、たった今完成した俺の洗脳無効エンチャントによって全員解除されているのだから。
「クソッ! いやだ! 死にたくない!! 我は……われ……は」
クイーンワームは村長を食い終えるのと同時に、再度消滅した。あとで分かった話だが、Sランク級の魔物は時折蘇生スキルを保持しているらしい。
蘇生といっても完全なる復活では無く、死亡後一定時間後に再度短い時間だけ行動が可能になると言うものだ。終わったと油断した冒険者を道連れにするためのスキルなのだろう。
これにて一件落着と言うことでやることは一つ。
「さて、諸悪の根源の村長もいなくなったことですし……勝利の宴、開きますか!」
こうなりゃもう飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。
何気に冒険者になってから初めての宴だ。めいっぱい楽しませてもらおう……!
◇
白くなる視界。そして酷い頭痛。そうか、朝か。
うぅ……流石にハメを外しすぎた。
飲み過ぎが良くないと言うことを身に染みて思い知ったよ。
「サザン……起きたか?」
「……んんぅっ!? ラ、ラン!?」
なぜかランが同じベッドにいる。え、これは……。いや落ち着け落ち着け……。
落ち着けねえ! 顔が! 近い! まつ毛長い!
「昨日は凄かったな」
そして何も覚えていない……!! え? 何があったの? もしかして人生終了のお知らせ……?
「はははっ冗談だ。さっきベッドに入ったばかりだよ」
「あ、ハイ……」
良かった……!
心臓がバクバクしている。やっちまったかと思った。
ひとまずベッドから出て落ち着こう。
「でもまあ、少しくらいなら……私は構わないが?」
ランはそう言うと不敵な笑みを浮かべ、俺の隣に座った。
落ち着けない……!
今日はなぜだかランが積極的だ。
寝巻がはだけていて、肌色成分が強い。これ以上見ていたら戻れなくなるような気がする……。
あまり意識したことが無いと言えば嘘になるが、それでも極力パーティメンバーにそういう目を向けるのは控えているんだ。
なのに、そっちから誘惑されたら俺は……。
「サザン、起きてる? ……え?」
顔を赤くした男と、はだけた服の女がベッドの上で二人きり……。
終わった。メルにこの状況を見られた。もう終わりです俺の冒険はここで終わってしまうのだ。
「……サザン」
「サザン、頬赤いけどどうしたの?」
「なんでも無いんだ。リアは知らなくていいことだから」
メルに盛大に平手打ちを食らったが、それだけで済んだと考えればまだマシなのか……?
一応その後、誤解も解けたことだしね。
「ところでラン、村には顔出さなくて良いのか?」
「昨日の夜、既に話は終えているからな。朝に出発することも伝えてあるから心配はいらない」
「そうか。なら良かった」
ランは帰る場所を取り戻した。やっぱり一人は寂しいからな。故郷から爪弾きされるなんて考えたくも無い。
それに、悪しき村長がいなくなり村は健全に動くようになったようだ。今までのような村長ファーストの村では無くなり、村人全員のための運営を行っているらしい。
何もかもが良い方向に動いたと言って差し支えないだろう。
いやー、良いことをすると気分が良い。
こうして俺たちはまだ見ぬ冒険と強さを求め、今日も行く……なんてね。
エルフの村 完