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11 居場所なんてない

「それはどういうことですか村長!」


「部外者は黙っておれ! これは我らの村の話なのだ。余所者が首を突っ込むものでは無い!」


 村長は物凄い剣幕でこちらを威圧する。その威圧感は、まるでAランク以上の魔物を前にした時のようだ。

 だがここで退くわけにはいかない。ランは俺の大事なパーティメンバーだ。そんなランがあのような扱いをされて、黙っていられるわけがない。


「お言葉ですが村長、彼女は」


「すまない、サザン……今は黙っていてくれ」


「だが……」


 ランの制止により俺は少し落ち着きを取り戻す。ふとランの横顔を見ると、その表情は悲しみと罪悪感で溢れていた。それはランと出会ってから今まで一度も見たことの無い表情だった。


「勇者パーティから追放されただなんて外に知られたら、我が村の名が落ちるではないか! なぜ帰って来た! 村の皆に申し訳ないとは思わなかったのかこの薄情者めが!!」


 村長のあまりの悪辣な言葉に、俺の内側で沸々と何かが湧き上がる感覚がする。だがランに制止されてしまった以上、余計なことをしてかえって彼女の立場を悪くしてしまうのが怖く手が出せない。

 ただひたすらに抑えることしか出来ない。それは恐らくメルとリアも同じだ。二人は優しい……いや、優しすぎるくらいなのだ。一緒に戦ってきたパーティメンバーがこのような扱いをされていれば絶対に許せないだろう。だが堪えてくれ。ランのためにも。


「この村にお前のような者の居場所は無い! 出ていけ! そして二度と帰って来るな!」


「そんな、あんまりだよ!!」


 とうとうリアが我慢しきれずに口を出してしまった。そしてそれを、村長は快く思わなかったようだ。


「まだ口を開くか余所者が!」


 村長はリアに向かって魔法陣を展開する。そして、風を集め矢のように放つ中級魔法のウィンドアローを発動した。長命のエルフ族の村長ということもあり、中級魔法と言えどかなりの威力となっている。

 俺は咄嗟に右腕に魔法無効をエンチャントし、リアの前に立った。そのまま右腕でウィンドアローを無効化し、村長を睨みつける。


「村長、今のは流石に容認できませんよ」


「ぐっ……わ、悪かった。流石にやりすぎたかもしれん。だがそれも一度までだ。今ここに警告する。ランの仲間であるのなら、お前らも同様に今すぐこの村から出て行け。そうでなければ我らは何をしでかすかわからんぞ」


 村長のその言葉を合図に、建物内にいたであろうエルフの兵士が続々と出てくる。その誰もかれもが、恐怖と罪悪感の入り混じった表情をしていた。

 俺はその様子に違和感を覚えた。なぜ攻撃しようとしているのに、そんなに悲しそうな顔をするのか……。誰一人として攻撃したくて攻撃しようとしている者がいないように思えた。


「サザン、村を出よう」


「本当に良いの!? ランの帰る場所が無くなっちゃうんだよ!?」


「元はと言えば私が追放されたのが原因だ。村は悪くない」


「……行くわよリア」


「メルまで……!!」


「悔しいがランとメルの言う通りだ。このまま居座っても分が悪い。一度撤退するぞ」


 俺は嫌がるリアを無理やり抱きかかえ、エルフの村を後にする。

 門を出る瞬間、誰かの謝る声が聞こえた気がした。

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