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1 Sランクパーティからの追放

「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」


「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」


 俺はサザン。村の仲間と一緒に組み始めた冒険者パーティでエンチャンターとして今の今まで頑張って来た。

 だが、とうとうその頑張りが報われることは無くパーティを追放されることとなってしまった。




 パーティのリーダーは屈強な体を持ちながら不釣り合いな程に美しい金髪が目立つ男、グロス。彼は村にいたころから力持ちとして有名で、村に現れたゴブリンを一人で追い返したという武勇伝も持っている。

 パーティではタンクとして敵の攻撃からメンバーを守る役割を担っている。


 水色の髪と色白の肌に端正な顔立ち、まさしく美少女と言っていいルックスをしている魔術師のメル。保有魔力量が多く、強力な魔法を発動できることからパーティの火力担当として重宝されている。


 美しく輝く赤い髪が特徴的な美少女、リア。彼女は神官であり、パーティの回復役として幾多ものピンチを救ってきた。元々は近接戦闘も行う神官戦士であったがダンジョン内で片腕を失い、後衛からのサポートに徹するようになったのだ。

 

 そして俺は物体に属性や追加効果を付与することを得意とするエンチャンターである。


 彼らとの歴は長い。村では仲良し四人組としてよく行動を共にしていた。

 俺は黒髪であるというだけで多くの人に気味悪がられていたのだが、パーティの三人は何も言わず普通の人と同じように接してくれたのだ。

 今では冒険者としての活動を通して村人たちの信頼を得たためか、俺への態度も柔和なものになっている。

 

 だから俺は、俺を救ってくれた三人の力になれるように頑張った。誰よりも辺りを警戒し、パーティメンバーの魔力も把握し、自分に出来ることを精一杯行った。

 そして俺たちは、数多くのダンジョンに潜り、死闘を潜り抜けて、とうとうSランク冒険者パーティになったのだ。


 ……だが皆がどんどん力を付けて行く中、俺だけは全くレベルが上がらなかった。


 通常は魔物を倒したり、魔法の使用、技術の行使などによって経験値が手に入る。そして自らの能力を可視化した『レベル』が上昇していく。

 しかし俺はどれだけ魔物を倒しても、付与魔法を使用しても、レベルが上がらなかったのだ。 


「とうとう俺たちもSランクパーティか……感慨深いな」


「そうね。これもみんなで頑張って来たからよ」


「これからも頑張っていきましょうね」


「お、俺ももっと頑張るよ……」


 パーティの皆に申し訳なかった。皆はもうとっくにレベル40を超えているのに俺は未だに10ちょっと。適正レベルに届いていないため、ダンジョン内でだってほとんどお荷物状態だった。





「追放……か。そうだよな……普通に考えてみれば俺みたいな弱い奴が皆と一緒にいるのはおかしいもんな」


 改めてパーティからの追放を噛みしめ、自分が惨めに思えてくる。

 弱い奴は外される。それは正しいことだ。自分自身にそう思わせることでなんとか自我を保とうとした。


「最後にメルとリアにも挨拶させてくれ。もう会うことは無いだろうからお別れの言葉を言っておかないと」


「ああ……。そいつは無理な話だ」


 グロスはそう言った途端、俺の腹に短刀を突き刺してきた。

 一瞬、何が起こったのか理解できなかった。腹部からとてつもない痛みが襲ってくる。頭の中がぐちゃぐちゃになり整理できない。ただただ痛みと困惑だけが脳内に充満する。


「あ……あっぁああぁ……?」


「お前がメルやリアと一緒にいる時、俺はイライラして仕方が無かった。なんでこんな弱い奴にそんなに良いようにするんだってな」


「そ、んな……」


 グロスが俺のことをそんな風に思っていたなんて信じられない。グロスは優しくて頼れるみんなの兄貴分で、こんなことをするような人じゃない……。


「なんでって顔をしているが……こっちが本当の俺なんだよ。兄貴分を演じていれば信用を勝ち取れる。お前に優しくしてやっていたのも、メルとリアに良い顔を見せるためなんだよ」


 グロスは言い終わると俺の前から立ち去ろうとする。その顔にはもう以前のような優しそうなグロスの表情は無かった。


「お前は俺の身代わりになって魔物に殺されたってことにしてやるよ。そして悲しむリアとメルに優しく接して、俺に依存したところを食ってやるさ」


 俺は壮絶な痛みに襲われながらも、リアとメルの顔を思い出していた。このままではリアとメルが危ない……だが、体を動かすことが出来ない。グロスとのレベル差が高すぎるため、短刀で刺されただけでもダメージが大きい。


 俺はそのまま立ち上がることが出来ず、意識を落としてしまった。

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