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魔物モドキと○○病

※冒頭から残虐描写あり、スプラッタ、流血注意

※吐血注意報発動中
















「あ゛、あ゛ぅ、な、なんで」

いや、何ではこっちのセリフ!何故か腰の部分で真っ二つになったその頭部の方は口が動いていた。真っ二つになったのに、何故?あぁ、そう言えば切断部にモザイクがかかっている。

これってまさかお父さまの分断魔法!?


その予想通りに、私の腰にそっと腕が回される。


「お父さま!?」

「やぁ、キア。危ないところだったね」

「師匠、俺が今やるところだったのに」

ユリウスは本気で残念そうである。全くこの師匠大好き弟子め。


「あぁ、これは俺の案件だからね」

お父さまの案件って、どういう意味だろう?

「―――それにしても」

そう、視線を口だけパクパク動かす彼の顔に向けたお父さま。その表情はいつものサイコ発動時のあの表情である。虚無を極めたかのような何の感情も抱かせないその冷たいアメジストの瞳。口元だけが半月状の弧を描いている。

―――これ、あかん方のやつや。


「俺の娘に手を出したね」

そう、お父さまが凄惨な笑みを深める。


「あ゛、あ゛、マリガァッ!」


「クソのような一族だ。マリカはいない。貴様ら一族が殺したのだろう」

殺した?精神をって言う意味だろうか。マリカさまは心を病んでしまわれたから。けれど彼女の発言はどこか真実を述べているようにも思えるのだ。


「俺の娘に手を出した以上は、契約違反だ」

―契約?―


そしてお父さまが指をパチンと鳴らした瞬間、ユリウスの手に両目を塞がれる。


「あっ、ゆりうっ」

そう、呼ぼうとした瞬間。


ブシャアアァァァァッッ


『――――――ッッ!!!』

言葉にならない断末魔の声が響いた。せめて耳も一緒に塞いでほしかったが、ユリウスの手は二つだけなので無理か。


「さて、お父さまはこれからお掃除に行かないと」

「け、契約、ですか?」

※私:ユリウスハンズアイマスク中


「うん、アレクとの契約でね。ふふっ、キアに手を出したら問答無用でっていいってね」

そう答えるお父さまの口調はどこかにこやかで口元だけは恍惚こうこつとした笑みを浮かべているような気がした。


「ユリウスはキアと先に帰っていて」

「ん、師匠」

「あのお父さま。せめて目の前で吐血しているご令嬢の手当てをしたいのですが」

「え?これは別に要らないけど」

「いや、そう言うわけにもいかないから!」

彼女はよくある残念当て馬令嬢とはどこか違うような気がしたのだ。


「ふむ、しょうがない。別に持って帰ってもいいよ。妙なことしたらすぐに殺せるし」

うん、それがナハト侯爵邸デスヨネー。


そうして私はふわりとした浮遊感に襲われた。ユリウスの転移魔法だ。


―――ユリウスの手の目隠しを外された私たちはナハト侯爵邸に転移していた。吐血者と共に。


「おや、お帰りでしたか。何です?オモチャ持って帰ってきたのですか?」

むにっ。


スリッパとは言え踏みつけちゃかわいそうでしょうが、しかもレディのあそこを!ヴィダルそれはダメだから!


「お嬢さま、お茶をお出ししますね」

おぅ、アセナよ。そこは注意して。スルーしないで注意して。


「あの、せめて彼女に治療をしたいのだけど」


「針治療ですか?」

いや、アセナ。今構えた針は絶対に治療用ではない。


「解剖ですね。お任せください」

何でそう言う解釈になるのヴィダル。


「お、お父さまから治療の許可は出ているから。ね、ユリウスお願い!」

何か妙なことがあればいつでも対処できる=別に治療したってしなくたって同じ=ならば治療すべし!


そう言うわけで空き部屋に彼女を運んでもらい、ユリウスのヒーリング魔法を掛けてもらう。ヒーリング魔法は基本的には病気には効かない。だからこの吐血が病的なものであれば薬湯で対処するしかない。


だが、やらないだけましだ。


彼女をベッドに寝かせ暫し様子をることになった。




―――


「ん、ここは」


「あ、気がつかれました?」

うっすらと儚げなシルバーブルーの瞳を開いた彼女は、ユリウスの顔を見て「ひえぇっ」となっていた。


「あの、落ち着いてください」

私がその横からひょいっと顔を覗かせたら。


「あぁっ、女神っ!」

え、女神?


「ふむ、なかなかいい目をしている」

ユリウスが彼女をさげすむような目から途端に感心するような眼差しに変えた。

え?何?その判断基準は何だろう。しかしながら、ユリウスの彼女への警戒心が少しマシになったってことかな。


「あ、あの。あなたは一体」


「わ、私は。私はこの世に生まれてはならない禁忌の存在」

えっと、中二病?


「それを口にしたが最後。クソオヤジに私は滅殺されてしまうであろう。あのクソオヤジめ」

相当お父さまをお恨みのようだ。例え父娘と言えど、毒親は毒親。オリヴィア姉さまの父であり叔父もクソであり毒の類。それはオリヴィア姉さまと私の共通認識である。


せめてサイコでもお父さまのように娘を溺愛して娘のおねだりならサイコでも聞いてしまうそんなでろ甘なら良かったのだけど。世の中いろんな輩がいるのでそうとはいかないだろう。

いや、その理論なら世の中サイコ最高になってしまう。この理論は凍結させてなかったことにしよう。うん!


「あの、それはもしかして」

こう言うフラグと言うのは、対処方法が大体決まっているのである。


「赤銅色の髪に青い瞳をした」

「クソオヤジイィィッッ!!!」

やっぱりあの不審者のことか。


「あれのことなら俺の師匠が真っ二つにしてこと切れたが」

それは真実だけどもユリウス。それをそのまま言っていいの!?吐血明けの中二病気味の儚げなご令嬢にっ!


「だが、だが敵はそれだけではない。その後ろには富や権力に固執する魔物どもが巣喰っているのよ!」

それは富や権力の虜の汚職好きな方々を魔物に例えたってこと?


「だめ。全てを終わらせるためには、魔物ホイホイが必要なのよ」

地球で言うG対策のことだろうか。てか、この世界にそんな便利なものがあるのかな。いや、あると言うよりもいるか。多分お父さまなら一瞬だし。あの様子だと。


「多分、あのひとの仲間なら今頃壊滅しているかと」

あのサイコ父の虚無の目はそう語っていたと思う。


「うぐおおおあああぁぁぁぁっっ!!!女神がこの呪われし忌まわしき運命を解放しようと言うのか。しかし私の命はあと、少、し」

「ならば手を貸そう」

いや、どの手を貸すつもりだ。その魔力剣納めてユリウス。


「いやああぁぁぁぁっっ!!いや!まだ死にたくないさっきのは嘘だから来ないで―――っ!!!げほっ」

「ほら、大声出したらまた吐血しますよ。落ち着いて。まずはあなたお名前は?私はキアラ・ナハトです。こちらはユリウス・アルギュロス」


「あぁ、それは知ってるわ。ユリウス・アルギュロス。でも、私にとっては女神以外の名前は聞こえないのよ」

いや、聞こえていたわよね。確実に。


「あぁ、女神さま。この憐れな小悪魔をお救いたまえ」

え?仔羊じゃないの、そこ仔羊じゃないの?小悪魔なの?ただの中二病だよね?




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