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吐血者と不審者にご注意

※本話には吐血描写(※前半)、凌辱的発言(※だけ。ただの言いがかりとも言う)、残虐描写(※スプラッタ、後半)が含まれますのでご注意くださいまし。


―――物語がこういう展開を迎える時、決まってフラグと言うのが来襲するものなのである。だからなるべく外には出たくない。私引き籠り=お父さま、ユリウス的にはひゃっはー。だけどもどうしても大公妃マリカさまのことが気になってしまう。


お父さまにしれっとマリカさまと出会ったことを話してみたのだが、「あぁ、カイルの配偶者か。興味ない」だったおかしいな。こういう場合って何か伏線的な反応をするものでは?


いや、お父さまがサイコな時点で伏線から脱線しているのだから、不本意ながら想定外以前に興味範囲外だったのかもしれない。


もう引き籠っていてもしょうがないかと、一念発起(※表現がいきすぎかもしれないが引き籠りにはこれくらいの表現が必要なのである)。ユリウスも一緒なのだからと本日は王城の書庫に行ってみることになった。


王城の書庫については事前に申請して許可が出れば部外者でも利用できる。尤も貴族などしっかりとした身分や、貴族でなければ身元保証の推薦状などが必要なのだが。


私とユリウスはどちらも貴族で、また大公閣下が許可をくださったので2人で行くことになったのだが。やはり伏線と言うのは、サイコを除きしっかりと来るものであったようだ。


「ユリウスさま、お会いしたかったですわ!ゼェハァ」

そう、息せき切って現れたひとりのレディ。年齢は私と同じくらいである。紫色のぱっつん前髪にロングヘアーの切っ先もぱっつんと言う徹底ぶり。瞳は吊り目気味できりっとした目元の美人。瞳の色はシルバーブルーの珍しい色である。そして顔色が物凄い悪いのだが。本当に大丈夫だろうかこの方。


「いや、大丈夫ですか?」

私が手を差し伸べようとすればユリウスに抱き寄せられて止められてしまった。ユリウス?


「お前は誰だ」


「げほっごほっ、いや、そのユリウスさまっ」


「貴様に名を呼ばれる筋合いはない。とっとと消えろ。殺されたくなければな」

いや、ユリウス。明らかによろよろしながらせき込んでるんだから。無礼でも一応は体調を心配したほうがいいのでは?


「な、何を言うのですかっ!それでは前門のクソオヤジ後門のツンツンではないですか!」

前門の虎後門の狼のアレンジ?

てか、明らかに儚げな深窓のご令嬢なのだけど、少々言葉遣いが荒々しくないだろうか。


「あなたは私のフィアンセではないですかぁ―――っ!がっはぁっ」

「あ゛?俺のフィアンセはキアだけだ」

冷たい双眸で彼女を射貫くユリウス。確かにそこは乙女の胸キュンポイントかもしれないのだが、あの、彼女吐血してるんだけど。多分ユリウスの力のせいではなくあくまでも彼女の自発的自然吐血(※医療的な考察ではありません。ただの状況予想描写です)のような気がするのだけど。


「消えろ」

「ぐはぁっ!」

ユリウスが珍しく固まっている。多分、ユリウスが魔力圧を放とうとしたのだが、その前に彼女が吐血してぶっ倒れたからであろう。


「あ、あの!どなたか治療術師はいらっしゃいませんか―――っ!」

この世界での「どなたかお医者さまはいらっしゃいませんか」的な言葉ではあるものの周囲はシーンとしていてひと気がない。


「あ、ユリウス!ユリウスもヒーリング魔法を使えたでしょ!?彼女を」

そう、ユリウスの服を引っ張ったのだが、ユリウスは怪訝な表情を浮かべて正面を凝視していた。彼女を、ではない。


その先にいたのは。―――誰?


赤銅色の不思議な髪の色に、そして青い瞳を持つ男性だ。年齢はお父さまや大公閣下と同世代だろうか。


「―――あの、どなたですか」

「キア、いい。後ろへ」

「いや、要救護者はどうするのよ」

そっちのほうがむしろ重要では?そう思ったのだが。私の言葉を聞いて何が面白かったのか、不審者がほくそ笑んだ。


不審者発言については、それが真実なのだからしょうがない。だって突然現れた知らないひとだし。城には知らないひとがたくさんいるけれど、このひと気のない場所で、吐血者がいる中意味深に現れたのだ。彼は紛れもなくよくある伏線フラグ的な何かを意味する不審者であろう。


「使えない女だ」

そう言って彼は吐血者の脚を蹴り飛ばしたのだ。(※吐血した人を蹴ってはいけません)


つまりこのふたりは、知り合い!でも蹴っちゃぁダメでしょう!


「やはり自ら手にするしかないな。ユリウス。お前はシュロス侯爵家へ来てもらう」

え?シュロス侯爵家?何か唐突に本編に出てきたフラグ侯爵家の名前である。なお、ファミリーネームはあくまでも“シュロス”である。


「はぁ?何を言っている。お前誰だ」

「そうですよ。要救護者放っておいて何言ってるんですか不審者!」


「だ、黙れ!このどこの野良犬ともわからん小娘が!」

「いや、野良犬ではないですね」

少なくともお父さまの首輪のリードは国王陛下が握っているはずである。


「五月蠅い!いいからとっとと貴様は来い!そして“マリカ”を産め!」

「いや、ユリウスは男だから産めないでしょうに」

「何だコイツ、エース以上に重症だぞ」

それはエースが夫婦になったから?一応男女と言う概念をしっかり理解していると言う衝撃の事実が最近明らかになっていたから?


「違う違う違う!女をはらませて“マリカ”を産めと言う意味だ!私のために!!」

いや、何言ってんだコイツ。言い直したとはいえ言ってることが常軌をいっしている。そして、“マリカ”と言うのはシュロス侯爵家の庶子である大公妃マリカさまのこと?つまりはユリウスのお母君のことである。


「男同士は妊娠できませんよ!」


「いや、だから私とではない!そうだな、お前でもいいぞ小娘。俺のために“マリカ”を産め!」

ほんと何言ってんだこのひと。サイコ父の方がまだまし・・・。



ん?


これってもしかしてサイコ父激怒案件ではなかろうか。そう思った矢先のことである。


―――目の前の不審者が上下に分断された。


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