救いと未来
※再びユヅカさま視点です※
※あの日キアちゃんがあげた包みの中身が明らかになります※
オリヴィアさまが私のために届けられたと言うドレスを侍女のみんなと着付けて、ヘアメイクをしてくれた。
「とても似合っているわ、ユヅカ」
「ありがとうございます、オリヴィアさま」
「オリヴィアでいいのよ。むしろ、私の方が“さま”を付けなくてはならないかも」
「そんなっ!それはさすがに」
「では、オリヴィアと」
「―――はい、オリヴィア」
そんな私たちの姿を見て、他の侍女たちも微笑まし気に見守ってくれた。
今日は、私の旦那さまとの初対面の日だ。今日まで私が旦那さまの元へ嫁ぐためのマナーや勉強をオリヴィアが教えてくれた。そして、異母妹が処刑されたと知らされて数日、準備が整ったと言うことで遂に対面となる。
そしてそれと同時に、婚姻が結ばれる。この国の王侯貴族の間では政略結婚が一般的だ。だけど私の旦那さまになる方は、私を大切にしてくれる人だからと、オリヴィアが優しく教えてくれて緊張しつつも何とか会話はできている。
私は市民権を得たと言っても異界から来た平民であった。だから、国が決めた婚姻を結ぶために私は養女に入ることになった。宰相である大公閣下の家で、嫡男のユリウスさまもナハト侯爵家への婿入りが決まっているので、この国の慣例通り一代限りの大公閣下の家ならば余計な跡継ぎ問題も生まれないし、そして万が一そのような面倒な問題が産まれたとしても、大公家ならばそれを抑え込める。それが宰相閣下と陛下が決められたことらしい。
私自身が、異界から召喚されたと言う特殊な立場だ。この国に住まうところを与えてくれるだけでも嬉しい。
準備が終わって、時間まではゆっくり過ごして欲しいと言われ、今日は畏れ多くもオリヴィアがお茶を淹れてくれた。せっかくだからとお茶菓子には最近オリヴィアの元でお世話になった侍女たちと作った地球の菓子を出してもらった。
「あら、これって」
「あ、オリヴィアは初めて?これは」
「あら、知ってる。どら焼きね」
「まぁ、ご存じなんですか?」
こっちの世界にも同じものがあるのかな。ふと、そう首を傾げてみれば。
「たまに従妹が作って差し入れてくれるの。作ってはいろんな人に差し入れているから。あぁ、そうだ。以前王太子殿下にも知らずに差し入れたらしくて。従妹にそれを言ったらひどく驚いていたけれど」
クスッと微笑むオリヴィア。
キアラさまもどら焼きを?不思議な縁もあるものだと思った。
―――そして、ティータイムでリラックスした後は、遂に旦那さまの準備もできたということでご対面となった。
養父となった宰相閣下がエスコートして下さり、部屋に通されれば。そこにいたのは。
陛下とよく似たミルクブラウンの髪に、サファイアブルーの瞳。何一つ、重なる部分など無いはずなのに。けれど、あの時顔を見た時の衝撃は忘れられなくて。彼が幸せになってくれればいいと思っていた。私は、オリヴィアに拾われて、侍女仲間に囲まれてとても幸せだったから。
「柚津花」
名前を呼ばれた瞬間、不敬だとはわかっていても抑えきれなかった。腕を広げて私を呼んでくれる彼に、我慢ができなかった。
「あぁっ、わああぁぁぁっっ」
「あぁ、柚津花。やっと出会えた」
愛しくて、大好きだったひとの胸の中に飛び込み、優しく抱擁されれば、私はメイクが崩れることなどお構いなしに彼の胸元に顔をうずめた。
「うん。でも、なん、で」
「わからない。でも、だからこそやっと、柚津花を守ることができる」
「う、うぅっ」
「今度こそ、ずっと一緒に生きよう」
「う、んっ」
そうして、彼に優しく頭を撫でられながら、いくら時間が経ったかもわからぬほどに泣いた。
はたから見れば、何が起こったのかわからないだろう。けれど、泣き止んだ私に彼の侍従がそっと化粧が崩れた顔が見えないようにベールをかぶせてくれた。彼の衣装が汚れてしまったことに驚愕してしまったが、大丈夫だとまた頭を撫でられて。その日の顔合わせの後早速オリヴィアと侍女たちに苦笑されながらも連れて行かれて、しっかりとキレイにしてもらったのであった。
もう二度と会えないと思っていたひとに出会えて、そしてその最愛のひとが私の旦那さまになった。
今の名前は“ローウェン”と言うらしい。私は相変わらず柚津花だけど。それでもずっと会いたかった旦那さまと結ばれて、私は今も幸せに暮らしている。
続きは明日更新予定です(`・ω・´)ゞ
時間はまだ未定ですがご容赦くださいまし<(_ _)>




