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王太子

※引き続き聖女ミナモがさけてますが、すぐくっつきます


『え、あれ、なに?これぇ』

唇が2分されているからか、ミナモさまのセリフが2重に聞こえる。


「いや、お父さま。あれ何すか」


「ん?面白いだろう?」

キラッキラ~。全く面白くないけどもっ!サイコ父よ、頼むから愛娘のドン引きの表情を適切に判断してくれ頼むから。


「妙な遊びはやめなさい。ルシウス」

と、そこに響いたおごそかな声に、私はついつい崇めたくなってしまった。


(こっ、国王陛下~~~っ!!!)


私たちの傍には、リカルド殿下やミナモさまに相対するように、国王陛下、大公閣下、そしてお会いしたことはないものの、陛下によく似た青年、近衛騎士団長や近衛騎士たちが集まっていた。


「みながドン引いている。くっつけてくれるか」

国王陛下もドン引きとか言うんですね!何か親近感湧きます!やっぱり国王陛下は救世主!むしろリカルド殿下よりも勇者だと思うある意味!!


「仕方がない」


ぐちゃっ


何か嫌な音がしたのだが、聖女ミナモさまは再びひとつに統合された。いきなり何が起こったかわからず、狼狽うろたえるミナモさまはくわっとリカルド殿下を振り返る。


「り、リックぅっ!」

ミナモさまがリカルド殿下の愛称を呼び駆け寄ろうとすれば。

「や、やめろぉっ!寄るなぁっ!バケモノぉっ!!」

と叫び、ミナモさまを突き飛ばした。

うおおぉぉいっっ!お前ら愛し合ってる感むんむんにしておきながらそこまでの関係かよ!てか、リカルド殿下の“バケモノ”の定義がよくわからん。


「静粛に」

国王陛下の言葉に、一応は王子なリカルド殿下の背筋がピンと伸びる。


「た、助けてください国王さまぁ~っ!」

しかし、ミナモさまには効果がなかったのか、無謀にも国王陛下にり寄ろうとし、近衛騎士団長・グウェンさまに剣を突き付けられていた。


「まぁっ!グウェンにまで会えるなんて!私を助けに来てくれたのね!」

いや、何を言ってるんだろうか。それとも分裂のせいで頭がおかしく?お父さまには分裂させるのを禁止させないと。


「黙らないのなら舌を抜くぞ」

グウェンさまの低く地を這うような声が響く。


「まだ抜くなよ」

と、陛下。

「え~、今抜こうと思ってたのに~」

お父さまやる気だったぁ―――。国王陛下、ありがと~っ!あれ、“まだ”??


「さて、まずはリカルド」

「は、はい。父上」


「先ほど、オリヴィア嬢との婚約を破棄すると宣言したな」

「は、はい!」

「そして、そこな聖女ミナモ・ユメミヤと婚約すると」

「え、は、はぁ」

その目が泳いでるんだけども、やっぱりあの分裂事件で気持ちが変わったのかな。随分と薄っぺらすぎる愛だこと。


「そこまで言うのなら認めよう」

「え、えと、ミナモとの婚約はちょっと」

優柔不断すぎるだろ―――がぁっ!


「国王である私が認めた婚約を勝手に破棄した挙句、新たに婚約を結び直すと告げることがどのような罪になるかもわからぬか?」


「えっと、それは、その」


「それは国王である私への翻意も同然。それを特別に認めてやるといっている」

「で、ですが」

「二言は認めん。その代わり、お前は廃嫡。無論王位継承権も剥奪だ。一生涯塔に幽閉する」


「なっ、何故です!」


「何故?当たり前だろう。本来、お前に婚約を破棄する権限もないし、オリヴィア嬢は私の許可の元王城にて保護している。それを勝手にでていけだのとのたまう。更にはそこの聖女殿を勝手に部屋から連れ出し、このような場に同伴させ、不貞を働いていることをみなの前で見せつけた。お前はどれだけ私をバカにすれば気が済むのだ」


「い、いや、そんなつもりは。それに、ミナモはずっと部屋に閉じ込められて、かわいそうで」


「彼女は突如この城に現われた異界人。その上聖女であったから慎重に取り扱う必要があったのだ。それを私の許可なく連れ出し、その上このような場に連れてくるとは何を考えている」


「じゃ、じゃぁあの女はどうなのです!?あの女だけが自由でミナモだけが閉じ込められるなんて間違っています!」

リカルドはユヅカさまを指さし、オリヴィア姉さまが彼女を庇うように前に出る。


「ユヅカ嬢を追い出したのはお前ではないか」


「えっと、それは彼女が聖女じゃなくて」


「だから何だというのだ。あと、彼女は聴取の結果、念のため監視は付けさせてはいたがオリヴィア嬢が後見人になることで市民権も認めたのだ。しかし、聖女殿については未だ市民権すら認められてはおらん。つまり、彼女はこの国で、城で自由に歩き回り、国王主催のパーティーに顔を出すことはどうあってもできん」


「だから、どうしてあの女ばかり!」


「それほどまでに、聖女殿に夢中のようだな」

「いや、そう言うわけでは」

先ほどの分裂を見てから、熱愛が一気に冷え込んでいるリカルド殿下は口ごもる。


「だから婚約を認めてやろうというのだ。これで彼女も市民権を得られるぞ」

「いえ、やっぱり婚約はなかったことに」


「そんなことできようはずもない!お前はどれだけの醜態をこの場で晒したと思っている!」


「いえ、でも。ぼくは未来の王太子ですから、これくらい」

「そのようなことは一度も言っていない」

「母上が」

「そなたの母にも度々言い聞かせ、お前にも繰り返し言ったはずだ。私は王太子をお前に指名した覚えはない。いい機会だ、みな、聞きなさい。私はこの第1王子ローウェンを王太子に指名する」

国王陛下が紹介したのは、ミルクブラウンの髪にサファイアブルーの物憂い気な双眸をした青年だった。なるほど、やっぱり父子おやこだったんだ。あの方が滅多におおやけの場に姿をお見せにならない第1王子殿下!


「そんなバカな!そいつは、母上と父上の本当の子ではないじゃないですか!!」

え?どういうこと?


そのリカルド殿下の言葉に会場内が騒然となったのは言うまでもない。







※暫くは1日1回更新となります。ご容赦くださいませ<(_ _)>※

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