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断罪茶番

※残虐描写あり

※切断・スプラッタ系につき注意。血は出ません。

※ラストが何となくホラーです

※サイコ、久々に暴走する!


つつしんで、お受けいたします」


「えっ」


第2王子リカルド殿下の宣言に、オリヴィア姉さまは「そうですか」と言わんばかりに淡々と頷いた。その様子にリカルド殿下も呆気にとられ、聖女ミナモ・ユメミヤさまもぱちくりと目をしばたかせている。


「城下に屋敷を購入する資産くらいでしたらありますので、早々に城を後にいたします。ユヅカも一緒に行きましょうか」

「は、はい!オリヴィアさま!」

オリヴィア姉さまの言葉にユヅカさまも頷く。なら、ウチのナハト侯爵家の近くだったらいいなぁと私は一瞬思ったのだが。


「い、いや、王都からも出て行け!」


「はい?」

第2王子リカルド殿下の苦し紛れの言葉に、オリヴィア姉さまは思わず唖然として淑女の完璧スマイルをも崩してしまう。


「わたくしもユヅカも王都での市民権を得ておりますので、王都で暮らす権利はございます」

姉さまについては元々王都で暮らしてきたのだから当然である。ユヅカさまも姉さまの侍女となったことで同じく市民権を得たのだろう。


それを第2王子ごときにどうこうする権利はないはずだけれど。


「では、正式な命令書を提示してくださいませ」

「ぼくがそうせよと言っているではないか!」

「はぁ」

完全に姉さまが呆れ顔だ。周囲も同じく「はぁ?」と言う感じ。そりゃぁそうだ。王子のひと言で王都から追い出されたらたまったものではない。


「じゃぁ、聖女の私も賛成するわ!」

ここで口を出したのが聖女ミナモさまである。


「被害を受けたミナモが言うのだ!この命令は絶対である!」

この王子は今までの人生で一体何を学んできたんだろう。学ばない人間っているわよね。地球でも、異世界でも。ぶっちゃけここまでアホなのは奇跡であろう。

はく製にして博物館に展示するのもいいのではないかな?


「あと、そこのあなた!」

え、私?私は地球での記憶があるものの、ミナモさまとは小説の中でしかお会いしたことはないのだけど。てか、小説の中のヒロイン・ミナモちゃんと同一人物だとはつゆほども思えないのだけど。


「モブのくせに仰々しくもユリウスと婚約したそうね!」


「えぇ、まぁ」

明らかに機嫌が悪くなったユリウスの腕を見えない位置から掴んで牽制しつつ答えれば。


「ユリウスルートは私のものよ。じゃまなモブは消えて頂戴」

え、何。ユリウスルートって。まるで乙女ゲームみたいじゃない?それとも小説が乙女ゲーム化して、本来は結ばれないはずのユリウスと結ばれるルートでもつくられたんだろうか。まぁ、原作のミナモちゃんならわかるが、目の前のミナモさまでプレイするのは嫌だなぁ。


「そうだ、ユリウス!呪われたバケモノであるお前を、ミナモは聖女として救いの手を差し伸べてくれるんだぞ?ありがたく思え!ひいてはそこのオリヴィアの劣化版と婚約解消し、聖女ミナモに誠心誠意尽くせ!」

なっ、何その横暴な言い草はっ!そもそもユリウスは呪われてもいないしバケモノでもないのに!私のことをどう言っても構わないしどうでもいいけどこんなバカ。でもユリウスをバカにするなんて!


「さぁ、ユリウスもいらっしゃいな」

と、ミナモさまがリカルド殿下の腕から体を離し、そしてつかつかと歩いてきてユリウスに手を伸ばす。


「―――ちょっとっ!」

これには私も物申そ、―――うとしたのだが。


シュパッ


バシュッ


その刹那、伸ばされたミナモさまの白く華奢な腕が輪切りになった。


―――エ??


「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ――――――っっ!!?」

ミナモさまの絶叫が響き、彼女がへたり込んだのだが。彼女が確かめるように腕を曲げて見やれば、そこには先ほど輪切りになった腕がぴったりとくっついており傷跡もない。


え?あれ?どういうこと?ミナモさま同様、リカルド殿下、周囲もきょとんとしている。


「俺に勝手に触れるな。次は胴体を輪切りにしてやろうか?」

ヒェ―――。

すっかり闇堕ちは回避したかと思ったのだが、師匠譲りの感情のない虚無に満ちた目でミナモさまを見降ろし、そして口元には半月状の笑みを浮かべていた。


さっきの輪切りはユリウスの仕業!?そして恐らく、この間聞いたお父さまの殺戮劇場譚のごとく、回復魔法で修復したのだろう。


「ど、どうしてよ、ユリウスっ」

彼女は震えながらユリウスを見上げるが。


「俺の名を呼ぶな。そうだな、次は喉を輪切りにしようか」


「ひぅっ、ど、どうして!その、その女のせい!?その女が邪魔をしているのね!」

と、ミナモさまが私をきぃっと睨みつける。いや、あんたのセリフが原因だろうが。はぁっ、と息を吐いた瞬間。


後ろからぎゅむっと抱きしめられて、思わずびくんとして振り向けば。


「口うるさい女だ」


―――師匠こ~うりんっ☆


ちょっとかわいらしい表現にしてみたが、実際は恐怖である。いや、むしろ恐怖の色もねぇ。虚無に満ちた目でミナモを見つめ、凄惨せいさんな笑みを向けるお父さまが、私を後ろから抱きしめておりましたとです。


ひぇー。


「なっ、何で裏ボスがここに!?あなたはユリウスと力を合わせた聖女の私に倒されるはずなのに!」

えっと、それは原作小説というより、それを元にしたゲームの知識か何かだろうか。


「やはり何を言っているのかまるでわからないな。そう言えば、新しい魔法を思いついたんだ、キア」

そう言って、優しい微笑みを浮かべながら私にすりすりしてくるお父さま。そしてその瞬間、パーティー会場が恐怖に包まれた。


ハッとして聖女ミナモさまの方を向けば。


ぐぇ。


ミナモさまが頭から胸元まで縦ふたつに切り離されており、血も出なければ切断部分はありがたくモザイク魔法がかかっている。いや、てか何、それ。それが新しい魔法!?

ホラーすぎるわあああぁぁぁぁっっ!!

隣に立っているユリウスの腕を思いっきり引き寄せて抱きしめたのは言うまでもない。






※本日も1話のみの更新になります<(_ _)>※

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