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キアとユリウスの日々


さて、前回に引き続きナハト侯爵家で暮らすようになったユリウスはと言えば。


よくある物語のように、最初はツンケンしていたり“近づくな”と威嚇してくることはなかった。かと言って預けられていると言う身で遠慮しまくって消極的オーラを全開にさせることもなかった。


「キア」

私を愛称の“キア”と呼び、今日も今日とてユリウスは私に懐いている。


「キア、どこへ行くの?」

「あ、刺繍の練習をしようと思って」

「じゃぁ、俺も隣に座ってる」

「え、でも」

ずっと見ているつもりだろうか。それとも乙女男子として開花するフラグか?(※違います)


「師匠から読むように言われた本を読むから」

あぁ、ユリウスは普通に勉強するのか。


「やっぱりキアの隣は温かい」

私の利き手ではない方の腕にぴったりとくっついて、ユリウスはうっとりとするような美しい笑みを浮かべる。


ぐっはぁ。何この尊い美少年!これがラスボス予備軍だなんて信じない!私は信じない!


―――そして、何だか宰相閣下にはツンケンしていたユリウスがどうしてこうも私にべったりなのか。そしてこの表情。

サイコ父の教育内容が若干気になるのは気のせいだろうか。しかし意外だな。本日は仕事と言って留守にしているお父さま。私を是が非でも独占してでろ甘に甘やかしたい性分らしいお父さまが、ユリウスをこんなにも私に近づけさせている。


いや、私は原作のユリウスも好きだが、今の人懐っこくて優しいユリウスも大好きなのでそれに越したことはないのだが。


お父さまなら嫉妬で虚無感を極めに極めた視線で見つめながら、地獄の笑みを浮かべそうなところである。しかし今のところはそういう感じはないのよね。


もしかしてだが、同じボスキャラとして意気投合?いや、待て。考えろ私。小説の中ではお父さまに心酔していたユリウス。お父さまは他にも心酔する部下たちには、敵意を抱いて見ることはない気がする。


―――と、言うことはまさか!お父さま!既にユリウスを攻略しただと!?そんなまさか。でもあのサイコお父さまだありえなくもないのだ。


ふと、ユリウスの方に顔を向ければ。


「キア?」

すかさずユリウスも私に爽やかイケメンスマイルを向けてくる。うん。その笑顔がお父さまの口元だけの不気味な笑みに似なくてよかったぁ。それだけが救いである。いや、救いにすんなそこ。


「いや、どんな本を読んでるのかなって」

「あぁ、これは」

ユリウスが本をたたんでその表紙を見せてくれた。


『世界鬼畜外道拷問百科』


お、おおおお父さまああぁぁぁ―――っ!あんのサイコ父っ!ユリウスに何て物を読ませてんだ。魔法の師匠じゃなかったんかい。魔法関係なくない?てか、どこの誰がこんな本執筆してんの出版してんのそれがまずは知りたいっ!


―――まさかお父さま著じゃないよね?いやいや、そんなまさか。


「出版社と著者名は?」

「ん?師匠はオリジナルって言ってたけど」

本の表紙には特に何も書いていない。そして、オリジナル?

お、お父さま―――。


私はどこか遠い目をするしかなかった。


「キアは何を刺繍しているの?」


「あぁ、これね。単なる花びら。まだまだへたっぴだから」

因みに刺繍の本をお父さまがくださったので、それを見つつ、それからメイドのアセナに手ほどきをしてもらっている。アセナは針を使うお仕事が得意なんだそうだ。でもアセナって本業暗殺者よね。原作小説の知識を拝借するかぎりは。


―――針を使う、そして暗殺業?何となく、深く考えてはいけない気がした。


それでも上手になったらお父さまとユリウスに刺繍入りのハンカチでもプレゼントしようかな。

原作小説ではすさんだユリウスの過去や暮らし、苦悩するシーンが多かった。だから、今こうしてユリウスとの穏やかな時間を過ごせるのが何よりも嬉しくて、幸福に感じた。


―――そして、私は程なくしてオリヴィア姉さまからのお手紙を受け取った。内容はお茶のお誘いである。オリヴィア姉さまは国王さまの計らいで王城で引き取られている。この間のパーティーの時は会えなかったから、久々にオリヴィア姉さまと会えるのは何だか楽しみでわくわくする。それに、宰相である大公閣下にも会えるかもしれない。私は迷いなくユリウスと一緒に行くことにした。





続きはまた明日お届け予定です(/・ω・)/

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