デュラハン VS デュラハン
キーン! 白金の剣が重なり火花が散った――!
「はあ、はあ、はあ、はあ」
こいつ……強い。強過ぎる。まるで自画自賛だ。……マジでやばい。一瞬でも気を抜けば偽物にやられる。
顔が無いから表情が読めない~! 同じように疲れているのかどうかすら分からない~!
ハッキリ言って嫌なキャラだ。戦いたくない敵だ。なんか自己嫌悪だ……。戦場で出会った俺って、こんなに嫌なキャラなんだ。いやーん。
「ひょっとして勝負がつかないのではないかのう」
「同じ能力なら相打ちかもしれぬ」
偽物と戦って相打ちは嫌だぞ……。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
また汗がポタリと大理石の床へと落ちる。
「同じ能力であっても立ち位置が違えばまったく同じ条件にはならぬ」
「太陽の方向や月の位置の僅かな差でか」
……本気でどっちかが倒れるまで続けるおつもりか――! いや、戦い始めたのは自分の意思だが……もうやめたい。逃げ出したい。
もし偽物も私と同じ考えなら……そう思っているはず。だが、自分から言い出せない~!
誰が何と言おうと俺の方が本物だから~――!
「よし。もうよいぞよ」
「うん。飽きたぞよ」
「「……御意」」
飽きたって……酷いぞ……。白金の剣を鞘に収めた。
ダラダラ血が流れるところにガムテープを貼って止血する。手の届かない背中などは互いに貼り合って傷を塞いだ。
手の届かないところに手が届く不思議な感覚。こいつ……よく分かっていやがる。そして……玉座の間に滴り落ちたお互いの血をウエスで拭いて綺麗にした。
「血生臭いぞよ」
「アルコール除菌する必要があるぞよ」
「「……仰せのままに」」
あ、偽物も怒っている。隠しきれていない怒りがヒシヒシ伝わってくる。
「では、次の策に移るしか仕方あるまい」
「はっ! は?」
「次の策とは」
体中ガムテープだらけなのですぞ。ほぼ瀕死ですぞ。……でも、私はアンデットではないぞ……。
「役に立たぬ方を消す」
「異次元の彼方へ消し去る」
――!
「ちょっと待って下さい!」
「また死闘になります!」
体中がボロボロでも今すぐポテチのパシリでダッシュしたくなります! 魔王城の外にある魔コンビニまで。
「よーいどん!」
「いやいや、待ってください!」
よーいどんちゃう! 走らせようとすな! ガムテープに血がにじむ。
「そうです! 魔王様は二人でのうのうと玉座に座り、なぜ私たちだけ死闘を繰り広げなくてはならないのですか!」
「その通りでございます。いいこと言うなあ……偽物よ」
「本物は私だ」
「……」
いい加減に認めろよと言いたい。
「なにが言いたいのだ。予にはサッパリ分からぬぞよ」
「予はパリパリポテチが食べたいのだぞよ」
グヌヌヌヌ……。
「「要するに、魔王様だけズルいでございます!」」
超チートでございます!
自分は増えてもいいのに他人は増えてはならない説――!
自分の国民は増えてもいいのに、他国の国民は増えるな説――!
自分のお爺ちゃんとお婆ちゃんは大切なのに、他人のお爺ちゃんやお婆ちゃんは……。
他人のお爺ちゃんやお婆ちゃんを……同じように大切に思えない……説。冷や汗が出る……涙が出る。
「予は魔王ぞよ」
「予も魔王ぞよ」
「……魔王様とて、ズルやチートは許されません」
「そもそも、チートがお嫌いと魔王様はいつもおっしゃっていたではありませんか」
最近チートしてばかりだぞ。とは言えない。
「剣と魔法の世界にチートは必然。必要不可欠ぞよ」
「日常生活から逸脱してこそのラノベぞよ」
頭が痛いぞ……そのうち誰にも読まれなくなるぞよ~……。
「首から上は無いのだが……」
「偽物がそれを言うな! 冷や汗が出る!」
小癪な……。
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