愛衣と仲直り
アブノーマル?
8話です
「モテ期来ないかなー」
月曜日早々に岩田がそんなことを言う。
「開口一番に何言うかと思えば、そんな馬鹿なことか」
「何だ宮田? やけに余裕綽々だな。ま、まさかお前……もう日野さんと……!?」
「馬鹿っ。そんな訳ないだろ!?」
「な~んだ。驚かせんなよ」
岩田は少しホッとした顔になる。どんだけ僕と対抗したいんだこいつ?
「それよりお前さ、何かあったか?」
「え?」
「何か日野さんとの距離が遠くなってる気がするが?」
こいつ……、妙に鋭いな。そうなのだ。土曜日の勉強会以来、彼女とは距離が出来ている。
「……そんなことよりテスト勉強しなくて良いのか?」
「ふっ。まぁ、ギリギリまで勉強してもあまり効果は見込めないからな」
「そうか」
岩田は余裕綽々で言った。そしてチャイムが鳴ると、SHRが始まり担任の早瀬が入って来て、色々注意事を言う。その間、僕はテストと愛衣のことを考えた。朝は知らない間にすれ違ったみたいだし。やっぱりあの土曜日から気まずくなっているなー。
(とりあえずテスト終わってから、愛衣に声をかけよう)
そしてチャイムが鳴り、休み時間をまたいだ後、本日3限までのテストが始まった。
「あー、テスト散々だったなーっ」
愛衣に教えてもらったところはある程度出来たけど、他がなかなか上手くいかなかったなっ。はぁ、とため息を吐きながら前を見ると、愛衣がいた。あ、と思い、
「愛衣ーーっ」
と僕は呼んだ。彼女はびくっとして後ろを振り向いた後、急いで立ち漕ぎして突如走って行った。
僕はえっ!? と思い、急いで彼女の後を追ったが、流石はバレー部である。どんどん引き離された。
「はあはあ、駄目だ……」
(やっぱり避けられているな……)
テスト期間中の後3日が勝負と思い、彼女に色々距離を縮めようと考えながらしたものの、上手に避けられてなかなか上手くいかない。
『どうだい? テストの調子は?』
水曜日の午後、麻衣ちゃんからメッセージが来る。
『テストはまあまあなんだけどねー』
『ん? 他に何か気になることでもあるの?』
『例のテスト勉強教えてもらった友達となんとなく気まずくなってしまって』
『それって仲の良いいわゆる幼馴染みの女の子?』
『そうそう』
『ふーん、そうなんだ』
『そうそう』
『それで何かあった?』
『多分彼女の恥ずかしい所見てしまったからだと思う』
そして少し時間が経って、
『ふーん、そうなんだ』
『そう』
『貴方は何かしたの?』
『見てしまっただけかな』
『ふーん、そっか。何かは分からないけど、女子の見られたくないところを偶然とはいえ見たのなら謝らないとね』
なんかいつもより内容が手厳しい気がする。けど確かにそうだな。よし、まぁ明日がテスト終わりだから、その日が決戦の時だなっ。
そして次の日、テストが終わり、
「テスト終わったーっ」
「部活だーっ」
と生徒達が賑わっている中、僕は急いで愛衣に駆け寄り、有無を言わせずぐいっと体育館裏に連れて行った。
「な、何よ……」
「……」
彼女はまだ気まずい感じでいる。そして僕は深々と頭を下げる。
「とりあえず済まん! 偶然とはいえお前の見て欲しくない物を見てしまって」
「!」
「あれからお前と距離が出来てしまっていたから……」
「……」
「幼馴染みとはいえ異性の僕に知られたくない内容もあるだろう。このまま僕が何もしなかったら、あまりにもデリカシーがなさすぎるから謝ろうと思ったんだ」
「……」
「それに気まずい空気がこのまま続くのも嫌だし……」
「!」
「そしてまさかお前が……」
「……」
「勉強終わった後にデートするとは思わなくってっ!」
「!?」
「だからあんな気合いを入れた服を着て、コ、……あれを鞄に入れてたんだろ?」
「……」
「まさかな……、お前に好きな人が……」
「もう良い、分かったわっ」
彼女は僕の言葉を遮るように強く言って、ため息を吐く。
「……貴方と距離をとっていたのが馬鹿らしくなってきたわ」
「え、じゃあ……」
「それより……周り見てよ……」
「ん? ……!!」
周辺を見ると、かなりの人数が色んな場所で聞き耳を立てていた。
「な、……何で君達が!?」
「いやー、宮田君が血相変えて彼女を連れて行ってたから」
周りはなぜかニヤニヤしていた。
「遂に『日が沈まない美女』の異名を持つ愛衣ちゃんを陥落させられる日が来る……」
「はいっ! もうこの話はお終いねっ。部活が始まるわよっ。早く散って散って!」
愛衣はそう言って野次馬を散らしていく。そして散らした後、彼女は僕の耳元に近寄ってこう囁いた。
「あの日は貴方以外の男に会ってないわ」
(え?)
と思い振り向くと、彼女はもういない。
(それって……)
僕は鼓動が早くなり、ある言葉がよぎる。
(……女とするつもりだったのか?)
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