二回目の“まい”とのオフ会
済みません遅れて
7話です
「え、え~っと……」
僕はその黒ずくめと対峙して戸惑う。
「私よ、私っ。分からない?」
新手のオレオレ詐欺か? 僕はそう思って怪訝にいると彼女は少し笑って、黒のニット帽とサングラスを外し、纏めた髪をふぁさと降ろす。
「あ、まいちゃん!」
「そーですっ。まいですっ」
まさかとは思ったが、まいちゃんだったのか……。しかしそれにしても、
「どうしてそんなに黒ずくめなんだ?」
僕は素朴で気になった疑問を彼女に率直に問うた。
「ふむ。良い質問ね」
これは普通の質問……じゃないかな?
「前に用事があるって送ったでしょ?」
「え? うん」
「実は……そこから抜け出して来たの」
「え? そうなのか!?」
「ええ」
「それは大丈夫なのかい?」
「だから1時間くらいなら大丈夫よ」
「ゴメン、僕の都合に合わせてくれて……」
「ううん、大丈夫よそれくらいっ。さっ、時間がないし遊びましょ」
「うん、そうだな」
「で、どこで遊ぶ?」
「ん?」
「え?」
「……まだ決まってない」
「……」
そして互いに少し気まずい空気になった。
いやいやだって、1時間で二人が遊べる場所なんてなかなか思いつかないぞ!
心の中でそう言い訳しても彼女にその考えは届かない。少し落胆した表情になる。
「苦労して抜け出して折角ここまで来たのに~……。決まってなかったら遊べないよ……」
「ゴメン……」
彼女はうーんと言って腕組みをする。
「それじゃあ罰ゲームっ」
「え?」
「私を満足さらせれなかったお詫びに何か買って?」
「え!?」
少しツンツンしながら不服そうに言うもんだから、僕は何を要求されるのか不安になった。
(そんな高いのは買えないぞ?)
「じゃあ付いてきて」
僕は懐の財布を触りながら、おそるおそる彼女の後ろに付いていく。
「着いたわ」
(ここは……)
アニメ関係のお店だった。
「一人以外でここに行くの始めてねっ」
彼女は少しはしゃぎ気味で店内をうろうろする。彼女は楽しそうにする一方で僕はお金の心配をした。
(こういう店って高い奴は意外と高いからなーっ)
「で、何を買ってくれるの?」
「え?」
「何をキョトンとしているの? 貴方が買うのよっ」
「え!? 僕が買うのかい?」
「そうよっ。貴方の気持ちがどれ程なのか確かめたいからねっ」
「……」
良かった……。とんでもない値段をふっかけられるかもと思ったが、とは言え少し高めのを選ぶか。そして、しばらく選んで3000円超える物にした。
「これならどうかな?」
「……」
彼女は品物をじっと見て、不満そうな顔になる。
「何を基準に選んだの?」
「えーと、少しでも良さそうな商品を……」
彼女はため息を吐き、駄目ね……と言う。
「こっち見て」
「?」
ぐいっと僕の顔を彼女の顔の正面に向ける。なぜか恥ずかしくて目線をそらす。
「ちゃんとこっち見てっ」
「……」
僕は仕方なく彼女の方を見る。そして彼女のキリッとした目と合わせる。
「良い? 私が欲しそうと思う物を選んで」
「……」
「誠意を見せてねっ」
「……はい」
「はい、オッケーっ」
そう言って彼女はぱっと手を離して、僕に手を振る。
「彼女の欲しいもの……か」
(確かにさっきまではお金のことしか考えてなくて、彼女のことを何も考えてなかったな)
そして色んな商品を見ていると、ふと彼女とのSNSでのやり取りを思い出す。
『……のシーン良かったねー』
『彼女との再会シーンは本当に良かったと思った!』
『うん、もうお別れになるかと思ったけど会えた時の二人の表情が良かったよ。感動ー』
『また香奈ちゃんのあの表情がたまらなかったな』
『そうそう。彼女の泣いてる所に共感した……』
(……あれは『恋する乙女達!』のワンシーンの話だったな確か。彼女が好きな漫画だったな。いや待て他にも彼女は色んな漫画好きだなっ。一体どうしたら……。しかし……)
「どう? 決まった? もうあまり時間がないわ……」
離れていた彼女が僕に近づいて来て少し寂しい声になりながら言う。
「あと少しっ」
「……後5分ねっ」
二つまで絞ったがそこから先が決めれない! ううーん。ええい南無三!
「合計1000円でーす」
「はい」
そして購入して彼女と店を出た。
「で、なんか迷ってたみたいだけど、何を買ってくれたの?」
「……これ」
「! これは……」
二つまで絞ったがそれらを一つに決められず二つとも購入した。それは『恋する乙女達!』の男主人公とメインヒロインだ。その男主人公を巡って複数のヒロインが彼を争奪する作品なのだが、最後のシーンで彼と離れ離れになりそうだったメインヒロインが会って小さな式場で結婚して完結する。
「『恋する乙女達!』の優人と香奈のキーホルダー……」
「この作品でよく二人で話してたから、印象深くってさ」
「……」
「どっちが良いか選びきれなくてっ二つ買っちゃったんだ」
彼女は俯いて返事をしない。
(あれ? 不評……かな?)
「ゴ、ゴメン。嫌なら妹に渡すから……」
「ううん。そんなことないっ、嬉しい。ありがとうっ」
彼女はめいいっぱいの笑顔になる。
「これ大切にするわっ」
「そ、そっかっ」
良かった。気に入ってくれて。
「どっちにする優人? それとも香奈?」
「え? 両方……」
「え? 両方?」
「あ、駄目だった?」
「あ、いやー、別に?」
(まさか両方にするとは予想外だった)
彼女は不安そうに眉を下げる。
「うん、良いよっ」
僕もめいいっぱいの笑顔で返答した。
「ありがとう……来て良かった」
僕は彼女の嬉しそうな顔を見て、ドキッとしてしまい目線をそらした。
「じゃ、ゴメンね。もう帰らないといけないから」
「え? あ、うん」
そして彼女は急いで帰っていった。それからの夜も回った頃、僕は寝ようとした時、DMで彼女から連絡が来た。
『今日はありがとう。鞄に着けたから』
『そうか。気に入ってくれて良かったよ』
『それでね、もし良かったらラ○ンのID送るね』
と彼女からそれのIDが届く。
(え? これって……)
『これからこっちでメッセージ送りあわない?』
そして僕は即登録してそっちで彼女に送った。
『宜しく』
『よろしく(スタンプ』
『鞄にキーホルダー付けてる画像』
『ww』
そして彼女との話は終わり、僕は改めて彼女のアカウントを見る。それはクマのぬいぐるみの写真と『麻衣』の名前だった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ブックマーク、評価頂きありがとうございます。
感想もありがとうございます。