スケジュール変更
え~っと……え? まさかそっち!? まさかそう来るとは……一体どうしたら? 僕はちらっと彼女の方を見ると、にこにこした顔でこっちを見る。
「それなら遊びじゃないから大丈夫でしょ?」
確かにその通りだっ。しかし土曜日は出来ればまいちゃんに会いたいっ。くそっ、どうすれば……。
しかし愛衣は次第に少ししょぼくれた顔になっていく。僕はふぅと軽く息をはき、
「分かった。良いよ……」
「本当!?」
「ああ」
そして彼女は明るい声になり軽くガッツポーズをした。とは言え“まい”には何て言おう……。元々先約が有りました~っなんて言えないし。はてさてどうしたものか、と愛衣の話を軽く聞き流しながら僕はしばらく思案にくれた。
そして学校の休み時間に“まい”へ謝りの内容を書いた。
『ごめん、今度の土曜日はどうしても外せない用事があったのを忘れてた』
何度も繰り返し読み、いやいや送信した。
はぁ、せっかく会えそうだったのに……。仕方ないよなっ、確かに愛衣のが先約だったし……。でも、あ~~~~~~っ。
「宮田って」
「!? 岩田、どうした?」
「どうかしたか?」
「いや、別に?」
「どうしたら先輩と付き合えるかなーっ」
「……知るか」
「……どうした宮田。哀しい顔して?」
「何でもない……」
「……日野さんと何かあった?」
「……なんでそこで愛衣が出てくるんだよ?」
「いや、日野さん以外と絡んでるのあまり見たことないから」
「……」
確かに。
「半分正解だ」
「へぇ、フラれた?」
「フラれたらアイアンクロー喰らわせてる」
「“アイ”だけに?」
「そう」
「DVだ」
「……ドメスティックではない」
「ふ、そうだな」
と岩田と他愛もない話をした。それから昼休みになり、スマホを見るが、“まい”から連絡は来てなかった。
(凹ませたかなーっ)
と僕は少し切なくなった。そしてご飯を食べ終えた頃、誰かがこっちに来た。愛衣だった。
「ん? どうした愛衣? ご飯なら余ってないぞ?」
「違うわよ、馬鹿ねっ!」
「じゃあ……」
と言おうとした時、彼女は手招きする。僕は不思議に思いつつ彼女の後を追う。外の人気の少ない所に連れられた。
「うーーん、外も悪くないなー」
「晴樹、あのね……」
「ん? どした?」
「はい! 背伸びをするっ」
「へ?」
「はい、背伸びっ」
「な、何で……」
「背伸び!!」
「は、はい……」
「1、2、3! 1、2、3!」
「1、2、3……1、2、3……」
「2、2、3! 2、2、3!」
「2、2、3……2、2、3……」
僕は彼女になぜか半強制的に体操をやらされた。
「いい汗かいたわっ」
「はぁ、はぁ……」
(疲れた……)
「どう、元気出た?」
「え?」
「朝からテンション低かったみたいだから」
(気づいてたのか……)
「まぁ、気分が低い時もあるさ」
「それはそうだけどね」
でも……と彼女は続ける。
「やっぱり晴樹には明るくいて欲しいからっ」
「え? それは……」
「あっ、もう予鈴鳴るから早く戻ろう。クラスまで駆けっこよっ」
「それは勘弁してくれ!」
そしてクラスに歩いて戻った。
それから部活を終え、スマホを見るとDMが来ていた。
(もしかしてっ)
と思い急いで見ると、別のネトフレの『やっぴー』さんからだった。僕はガクッとなる。
『この前ハルさんが呟いていた漫画読みました。ちょー面白かったです!』
『そうですか。良かったー』
『やっぱりあの二人の付かず離れずの距離間がたまんないですねー』
『本当にそれですよ!』
『あんな恋してみたいなーっ』
『本当それ!』
『特に二人のすれ違う所とかっ』
『あー、ありましたねー』
『9時の時間を二人が勘違いしたところはハラハラしました!』
『僕も思いました。遂に二人の心が離れるのかと!』
『何とか勘違いを解消出来て良かったです』
『僕もそれ思いました』
等と家に帰りながらやっぴーさんと盛り上がった。
(時間の勘違いは気をつけないとなーっ)
と一人思う。
(まいちゃんとの日にちも愛衣とずれてたら良かったのに)
ん? ずらす?
「あっ!」
僕は気づいた。
「そうだ。日にちをずらしたら良いんだ! どうしてそんな簡単なことに気づかなかったんだ!」
僕は彼女に急いで送る。
『今週の日曜日なら大丈夫だよ!』
そしたら直ぐに彼女から来た。
『ごめんなさい。その日は用事で……』
ダメかーーっと僕はかなり落ち込むが、彼女からもう一通届いた。
『けど1時間会うだけなら大丈夫です』
僕は急いで賛同の文章を送った。
『ok! 分かった』
『けど勉強は教えられないけど大丈夫?』
『平日に勉強詰め込むから大丈夫!』
『okです♪』
それから3日間僕は勉強の鬼になった。
「凄い気迫で勉強しているなっ。何かあったのか?」
岩田がジュースをストローで吸いながら、ずーずーと音を鳴らしながら訊いてくる。
「邪魔をするなっ。集中が途切れる!」
「お、おう……」
それから数日経ち、気づけば佳境に入った土曜日だ。そして僕の家にピンポーンと鳴る。
「よっ」
「こ、こんにちはっ!」
目の前にいる女の子はやけに気合い入った格好で、なぜか頬が少し紅く見え声は緊張している風だった。
(こいつ。勉強終わったら、デートにでも行く気か?)
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