ネット友達
新連載です。
お付き合い下さい。
「晴樹ーっ」
「愛衣っ」
僕は宮田晴樹。普通のしがない高校1年生だ。こいつは幼馴染みの日野愛衣。小学生の時からの腐れ縁で今でもよく話す仲だ。
「もう相変わらず姿勢が悪いぞ!」
「うるさいっ」
「あはは」
普段はそれなりに仲良いが、学校に着くと状況が一変する。
「日野っち、おはよう」
「愛衣ちゃんおはよう」
「きいちゃん、まこちゃんおはよーっ」
愛衣は学校で男女問わずかなりの人気者だ。肩まで伸びる黒髪に目はぱっちりした美人で、勉強はいまいちだがスポーツ万能と天性の明るさが人を惹きつける。だからあいつはスクールカースト上位で、僕は下の方だ。そしてクラスが同じだから如実にその状態が表れて分かりやすい。
「相変わらずお前の幼馴染みは人気者だな」
「岩田っ」
こいつは岩田孝治。僕の高校からの数少ない友人だ。
「で、いつぐらいに結婚するんだ?」
「馬鹿なっ。そんなことするはずないだろ?」
「あんな可愛い幼馴染みがいるのに付き合わないなんて、本当に勿体ないぞっ。俺ならもう婚姻届まで出してるね」
「さいで」
確かに愛衣の容姿は申し分ない。しかし彼女の性格は友人としては良いが、彼女となると話は別だ。僕はもっと優しくて清楚な女子が良い。
そして学校を終えた僕は家に帰るとネット友達と話しをする。
『やっ』
『おー、ハルじゃん待ってたよ』
僕は『ハル』というアカウント名だ。
『僕もさ』
『でさこの前の山田の刃のジンなんだけどさ』
『うんうん……』
僕達は漫画、アニメ、小説の話で盛り上がる。
『お母さんにはまだ話してないの?』
『そうなんだ。小説はともかく漫画はあまり好きじゃなくて』
『へえ、そうなんだ』
『君の家は羨ましいよ。了承してくれているんでしょ?』
『了承どころか親が漫画が好きだからね』
『いいなーっ』
といつものように話をする。もう『マー』(相手のアカウント名)と出会って二年くらいになる。こいつはリアルであまり趣味の話はせず、もっぱらネット空間でそれをさらけ出しているそうだ。まだリアルでは会ったことないが、どんな人か偶に会ってみたいと思う。
『いまから塾だから、また夜に』
『り』
そしてこの晩は『マー』と少し話してから寝た。
「お母さん?」
「うん」
ある日、突然に愛衣が学校の行きしなにそんなことを言う。
「久しぶりにお母さんの夢を見たの。おぼろげな記憶だけどね」
「あぁ……」
こいつの家はかなり小さい時に離婚している。だからお母さんの顔はあまり記憶にないそうだ。
「気になるか?」
「まぁ……そうね。気にならないと言えば嘘になるわね」
「……会ってみたいか?」
「え?」
愛衣は少し困った顔になるが答えてくれる。
「……あまり思い入れはないけど、私の唯一の母親だから。一度はね」
「そうか……」
そうこうしている間に学校に着いたので、愛衣は明るい顔になり友達の方に行った。
(普段明るい顔をしているが、やっぱりあいつも心の中では色々あるんだな)
『ボクは父親がいなくてね』
マーがそう言った。
『そうなのか?』
『うん。小さい時に離婚したみたいで』
『へえ』
『その時別れた妹がいるらしいんだ』
(そうなのか)
『どんな妹かは覚えてない?』
『さあ、分からない』
(そうか……)
『そうだ。この前話したイベントだけどさっ』
『あぁ、うん』
『ボクも行ってみたいっ』
『そうなんだよ。僕も気になっててさ!』
『そうそう』
『近いから一緒に行ってみるか?』
そう僕はすっと送信した。そしてあっと気づく。しまった、何を普通に送ってるんだ!? ど、どうしたら……。そして少しして連絡が来た。恐る恐る見ると、
『いいよ』
と来ていた。
良かったーっ。このネットでの関係を気まずくするところだったーっ。
そしてマーとこの土曜日に県内のイベントへ行く為に駅前で会うように約束した。
そして当日、黒のTシャツに下はジャージの出で立ちで駅前に向かう。
その格好で行くとあいつに昨日のうちに送ると、
『なんか君らしいなっw』
と笑われた。
とはいえあいつとリアルで会えると思うと少しわくわくどきどきする。
確かにネットで2年間話したほど仲が良い。しかし、実際リアルで会うのは初めてなので、まず来てるかどうかも怪しい。
突然昨日に用事が出来たから会えなくなったとかいうドタキャンなんてよく聞く話だ。そうなるとネットでも気まずくなるな……。
まぁけど来てない方に思ってた方が気持ちは楽だから、期待は止めよう。
そう不安に駆られながら予定のとこに10分前に着いたがおぼしき野郎はいない。
(確か上下白の服と白の帽子で来るって書いてあったな)
どんだけ白好きやねんと思いながら待っていると、5分くらい経っただろうか、その時にふわっと良い匂いがした。ふとそっちの方を見るとそこには白の大きめのハットに白のワンピースを来た子がいた。
僕は目を見開く。目の前にいる子は清楚を体現したような子だった。
「君が『ハル』?」
優しい声で僕に声を問いかける。微風でその子の大きめのハットが少しなびく。
「君は……」
その子はかなり僕の幼馴染みの顔に似ていた。しかし髪の長さや雰囲気が明らかに違っていた。その子と出会った瞬間僕は鼓動が高鳴り、そして僕も彼女に問いかけた。
「……『マー』かい?」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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