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生贄少女と王女様  作者: ココロ
5/12

優生と女王の母

 「アロウ様~。早くしてください」

「今やっておる!あまりそう急かすでない!」

部屋からばたばたと騒がしく音が聞こえる。

「まったく。夏用の服をちゃんと準備しないからそうなるんですよ~」

私は、アロウ様の部屋の前でため息をついた。

(というか、夏用っていっても生地が薄くなっているだけで長袖なのは変わらないんだから、もうそれでいけばいいのに)

すると、アロウ様の部屋の扉が開き、ようやく薄地の黄緑色のドレスを着てアロウ様が出てきた。

「ふぅ、やっと終わったぞ」

「まったくです。じゃあ、行きましょう」

そう言うと、アロウ様は満面の笑みで大きく頷いた。

 外に出ると、馬車がとまっていた。私達はそれに乗り込んだ。

 私達は今日、東の国へ行く。アロウ様が両親に呼ばれたのだ。そして、私もアロウ様に言われ、東の国へ行くことになった。アロウ様のご両親は、私のことを知らないのに行ってもいいのだろうかと思うが王女の命令、と言われたら断れなかった。

「あの、アロウ様。本当に私が行ってもいいのですか?」

「しつこいの~!よいと何度も言っているであろう」

「でも、私じゃなくったって冷華さんでも・・・冷華さんのことはご両親も知っているのでしょう?」

「冷は、城の事で忙しいのじゃ。それに、わらわは母上達が知らぬからこそ、優生を会わせたいのじゃ。わらわの直属の使用人として。そして友達として」

そう言われて、顔が熱くなった。

「顔が真っ赤じゃ。照れておるのか~?」

アロウ様は、ニヤニヤしながら言った。

「てっ、照れてません!」

私は顔を窓の外に向けた。

「そういえば、そなたは母上達に会うことになるのじゃが、その眼帯は付けておくのか?」

「当然です。本当はアロウ様にもこの目は見せるつもりではなかったんですから。いつかばれるとは思っていましたが、まさか初日でばれるなんて思ってませんでした」

「そうか。父上はともかく、母上は綺麗だと言ってくれると思うがのう」

「いえ、そもそもこの目に触れられたくないので。褒めるにしても貶すにしても」

「人それぞれでよいと思うがのう」

「え?」

「目なんて、人それぞれで違うと思わぬか?鋭い目、丸い目、おっとりした目、細い目。形だけではない。黒い目、茶色の目、青い目、緑の目と色も違う。それに見えぬ者だっておる。そのたくさんの目の中の一つでしかないのじゃ。そなたの目も。片目だけ色が変わらず、片目だけ色が変わる。それを特殊だと言うのであれば、その目はそなただけの目ではないか。その目はそなたが優生であるという一つの証明になる。それに触れてくるということは、そなたが優生だと、認識してくれているということだと、わらわは思うぞ。あくまで個人的な考えじゃがな」

「アロウ様。ありがとうございます。相変わらず心に響くことを言ってくれますね」

「そうか?」

「私にはとても考えつきません」

「それでよいのじゃ。考え方だって違うものじゃ。人はなにもかもが違うのじゃ。まぁ同じなところもあるがのう」

「矛盾してません?」

「人とはそういうものじゃ」

「・・・アロウ様って、本当に十六歳ですか?とてもそうは思えない発言をしますが」

「そなたこそ、十六歳とは思えぬ冷静さだと思うが?」

「そうですか?」

「基本、恥じらうか冷静かのどちらかであろう」

「怒ったりもしていると思いますが」

「それは、照れたりした時であろう?」

「照れてません!それに、冷静さなら、冷華さんの方が優れていると思いますよ」

「冷は、もう三十こえておる!」

「え?!」

「ん?もしかして、知らなかったのか?」

「はい。てっきり二十代かと」

「まぁ無理もない。冷は見た目は若いからのう」

「そういえば、アロウ様は冷華さんのことを冷と呼んでますよね。冷華さんからは、そう名乗ったと聞いたんですが」

「ああ、そうじゃ。冷が城に来た時名を聞いたのじゃが、少し考えるそぶりをしたと思ったら冷と名乗ったのじゃ。その時は疑いもしなかったが、冷は自分で名乗ったわりには、名を呼んでも返事が遅れたり、返事がなかったりと不自然な事が多々あって、少し疑問に思っておった。そして、冷の本当の名を知ったのは数週間後だった。あやつは、生活があまりよくなくての。なんでも、外の国に行った時に詐欺にあったらしく、膨大な量の金をとられたそうじゃ。それ以来あやつの家族は皆、嘘の名前で生きていたそうじゃ。なんといったかの~?」

「偽名」

「そうじゃ!偽名じゃ!それで、その偽名で騙されぬようにしたと、冷に聞いたのじゃ。その時に教えてもらったのじゃ。本当の名を」

「そうだったんですか」

私は少し目をふせて、うつむいた。

「それにしても、そなたは本当に物知りじゃのう。スッと偽名という言葉が思い出せるのはすごいぞ!」

「ま、まぁ。あはは」

私は苦笑いをした。

「・・・もしかして、そなたにも覚えがあるのか?」

まるで心を見透かすように私の顔を見るアロウ様に私はドキッとした。でも、それを悟られぬよう、冷静に返した。

「いえ、偶然知っていただけです」

私は嘘をついた。本当は偽名を使っていた事がある。一時期とある理由で・・・。

「それより、あの冷華さんに本当のことを話させるなんて、アロウ様はすごいですね。一体なにを言ったのですか?」

「ん?特には何も言っておらぬぞ?ただ、さっき言った不自然なところを冷に伝えたら、話しだしたのじゃ。自分は偽名を使っていると」

「へぇ・・・」

「そなたも、実は偽名だったりしてな」

「本名です」

「冗談じゃ。そうムッとするでない・・・おお!」

窓の外を見て、アロウ様は急に声をあげた。

「どうしました?」

「海じゃ!海が見えるぞ!」

「あぁ。じゃあそろそろ着きますね」

「なんじゃ、反応が薄いのう。我が国では見られぬ海が目の前に広がっておるのじゃぞ?」

「海は好きではありません」

「なぜじゃ?」

「青いから」

「優生は青が嫌いなのか?」

「いえ、青は好きです。でも、海は青く見えるだけで、本当は透明です。それを手ですくって実感すると、なぜか騙されたような気持ちになるんです。だから、嫌いなんです」

「・・・わらわは、海が好きじゃ。外の世界を嘘偽りなく写し出してくれる。自分の色は隠すのに、他のものの色は写してくれる。自己犠牲のようで切なくもなるが、次は明日はどんな色を写してくれるのか、想像するだけでワクワクするのじゃ。まるでそなたの目のようだと思わぬか?」

アロウ様はそう言って無邪気に笑った。

「アロウ様は、変わるものがお好きなのですね」

「そういうそなたは、変わるものが嫌いなのじゃな」

「さぁ、それはどうでしょう」

そうつぶやいて、私は一人でふっと笑った。

アロウ様は不思議そうな顔をしていた。

 馬車は大きな城の前で止まった。

「着いたようですね」

「そのようじゃな」

馬車を降りて、城の門の前に立った。

「あ~。アロウ様の城より大きいですね」

上を見上げてそう言うとアロウ様は、自慢げな顔をした。

「当然じゃ!なんといってもわらわの母上が築いた国の城じゃからの!」

「フフッ。本当にアロウ様はお母様の事が好きなのですね」

「違うぞ。好きではない」

「え?」

「大好きなのじゃ!」

そう言って腰に手をあて胸を張るアロウ様を見て微笑ましいと思った。

「何を笑っておるのじゃ?」

「いえ、なんでもありません。それより中に入らないのですか?」

「はっ!そうじゃ。・・・おい、そこの者」

アロウ様は周りを見渡し、門の近くにいた男を見つけ、声をかけた。

「はい。なんでしょうか」

男は優しく笑い応えた。

「わらわは、レイ・アミスの娘じゃ。母上に会いに来たのじゃが、通してもらえぬか?」

「これはこれは、アロウ様でしたか。女王様から聞いております。どうぞこちらへ」

優男は手を行き先の方へ向け、歩きだした。

「・・・怪しい」

私がつぶやくとアロウ様が肘で軽くごついた。

「なにするんですか」

「母上に仕えておる者が悪い奴なわけがないであろう」

「そうとは限りませんよ。ああいう人ほど実は裏であくどい事をしていたりするんですよ」

冗談めかしてそう言うと、アロウ様は

「まるで経験済みとでも言うような物言いじゃの~」

と探りを入れるように言って優男についていった。

「未経験ですよ」

私もアロウ様の後をついていった。

 私達は大広間に案内してもらい、いよいよ女王様のいる部屋の扉の前に立っていた。

(なんか、アロウ様の時と似ている。多分、この先に王座に座った女王様がいるんだろうな)

「おい、優生。何をしている。早く入るぞ」

「あ、はい。すみません」

私は、深呼吸をして扉をノックした。

「失礼します」

扉を開けると、思った通り王座に女王様が座っていた。

青いドレスを着て、優しそうな目をしていた。

「母上!」

アロウ様は、扉を抜けるなり、女王様のところに走っていった。

「あっ!ちょっとアロウ様!走ると危ないですよ!」

私がそう言った時にはもう遅く、アロウ様はドレスの裾を踏んだ。よろけて、後ろに倒れかけた。

「うわわっ!」

「アロウ様!」

私はアロウ様のところへ走り、間一髪アロウ様の体を後ろから抱え込むように支えた。

「大丈夫ですか?」

アロウ様はそっと目を開けた。そして、私の顔を見ると慌てて立ち上がった。

「だ、だだだ、大丈夫じゃ!」

「まったく。だから走ると危ないって言ったでしょう」

「うぅ。すまぬ」

「いいえ。気をつけてくれればそれでいいです。ほら、せっかく久しぶりに会うんですから女王様に挨拶してください。外で待ってますので」

私が立ち上がり、去ろうとすると、アロウ様は私の服の襟を掴んだ。

「うわっ!」

「だめじゃ!紹介すると言ったであろう!すぐそなたは逃げようとする。母上にくらい会ってもよいであろう。でなければついてこさせた意味がないではないか」

「わ、分かりましたから、手、離してください。首、締まってます」

「おお、すまぬ」

パッと手を離され、私は首元を押さえながらアロウ様を睨んだ。

「怖い顔じゃのう。そんなんでは人から嫌われてしまうぞ?」

「余計なお世話です。それにそもそも誰にも好かれていません」

「またそう自己否定する!悪い癖じゃぞ」

「癖ではありません。元からこういう性格です」

「あの」

言い合いをしていると、さっきの優男に声をかけられた。

「女王様がお待ちです」

「あ、すみません」

(しまった。ついいつもの調子で。アロウ様のお母様も見ているのに)

おそるおそる、女王様の方を見ると彼女はやわらかく笑っていた。

「母上!」

アロウ様は女王様の胸に飛び込んでいった。

「アロウ、久しぶりですね。元気そうでなによりです」

女王様はアロウ様の頭を撫でながら笑った。

「母上も、元気そうでなによりじゃ!」

アロウ様もにこっと笑った。

(・・・私やっぱり外に出ようかな)

私はそーっと扉の方に体を向けた。でも

「こらーッ!そなたどこへ行くつもりじゃ!」

とアロウ様に見つかってしまった。

私は平静を装い振り返って

「外へですが、なにか?」

と言った。

「だ~から、そなたを母上に紹介すると言っているであろう!」

「必要ありません。私はただの使い人です」

そう言って、部屋を出ようとした。すると

「待ってください」

とても澄んだ声で呼び止められた。

「なんですか?女王様」

自分でもわかるくらい嫌悪感むき出しな声で私は返した。

「おい、無礼だぞ!」

女王様の横に立っていた兵士が叫んだ。

「お待ちなさい」

しかしそれを女王様が制した。

「ですがアミス様・・・!」

「いいのです。少し下がっていなさい」

優しく言われ、兵士は食い下がった。

(あれ?これ前にもあったような)

そんなことを考えていると

「あなた、アロウの使い人ですか?」

「そうですが?基本、アロウ様の身のまわりのお世話をしています」

「あら、アロウの直属の使い人なんですか」

「ご不満ですか?」

「優生!母上にそんな言い方するでない!」

「アロウ様、名前を言わないでください」

「そんなのわらわの勝手じゃ」

腰に手をあて、ムッとした顔で言った。

「名前、言わずにいようと思ったのに」

小声でぼそっと言った。

「何か言ったか?」

「なんでもありません」

「アロウ。この方はどうして貴方の使い人に?」

女王様は、アロウ様に目線を移した。

「い、生贄の日の生贄じゃ」

すると、女王様は少し悲しそうな顔をした。

「そうですか」

そして、私を見ると頭を下げた。

「へっ!?」

「すみません。わたくし達の勝手なしきたりにまきこんでしまって。お辛かったでしょう。今日でやめてもよろしいですよ」

私は耳を疑った。

(やめる?私が、アロウ様の使用人を?まぁ、私みたいな人間が自分の娘の傍にいるなんて、不安だもんな。人間かどうかも怪しいし)

うつむいていると、アロウ様の声が聞こえた。

「嫌じゃ!母上!そんなの、優生はわらわの使用人じゃ!これからもずっと!」

「ですがアロウ。それは、こちらのわがまま。貴方がどんなに拒んでも、彼女を縛りつけておくのはよくないことです」

「縛りつけてなど、おらぬ」

アロウ様は、女王様のドレスの裾をギュッと握った。でも、それを見ても女王様は目の色を変えずに私を見つめた。

「優生さんといいましたね。どうぞ、こちらの都合など気にせず、ご家族の元へ」

「お断りします」

私は女王様の言葉をさえぎった。

「え?」

今度は女王様の目をしっかり見て、もう一度言った。

「お断りします」

「ど、どうして?貴方、家族に会いたいのでは」

「人の気持ちを勝手に決めないでください。私は自分の意思でアロウ様の横に立っているんです。女王様、娘が心配なのはわかりますが、貴方の意見など聞く気はありません。私はアロウ様のご命令でないかぎり、使用人をやめる気はありません」

広間はシーンと静まり返っていた。

すると、女王様は優しく微笑んだ。

「?」

「貴方は、本当にこの子のことを思ってくれているのですね」

私はいまいち状況がつかめず、目を丸くしていた。

「試すような事をしてすみませんでした。貴方の言うとおりわたくしはアロウが心配です。だから、アロウにもしもの事がないように、このような事を言いました。アロウが嫌がっているなら、すぐにでもやめさせるつもりでしたし、貴方が嫌だったとしても、やめさせるつもりでした。怒りを溜めて娘を殺されでもしたら、たまったもんじゃありませんから。ですが、そんな事はどちらもなかったようですね。アロウも貴方のことを気に入っているようですし、貴方もアロウの事を大切にしてくださっているようで安心しました」

そう言ってニコッと笑う女王様は、本当に安心しているようだった。まぁそれでも、私が初対面の人に素直になれるはずもなく

「その笑顔、嘘っぽいですよ。第二の罠でも仕掛けてるんじゃないですか?」

「アロウ。なぜこの方を使い人にしているのですか?貴方があのような態度の者を目の前にして怒らないとは生贄の日だからというだけの理由ではありませんね?」

女王様にたずねられ、アロウ様はコクリと頷いた。

「と、友達なのじゃ」

女王様は、驚いた様子だった。

「友達?あの方が?それは詳しく話を聞きたいですね」

そう言うと女王様は、私を見た。

「私から話すようなことはありません。久しぶりにお会いするそうなので、一度席を外させてもらいます。何かありましたら外にいますので声をかけてください」

私はアロウ様を見て部屋を出た。女王様に呼ばれたが無視させてもらった。

 外に出て、人のいないところに行き、壁に寄りかかった。もちろん、城の範囲内。

「はぁ~。アロウ様に似て、探りを入れてくるな。触れられなかったからよかったけど・・・いや、気付かれてなかっただけか」

私は自分の目に手をあてた。

「なにが気付かれてなかったのですか?」

急に、横から声をかけられた。驚いてそちらに顔を向け、警戒態勢をとるとそこにはあの優男がいた。

「すみません。驚かすつもりはなかったのですが。そんなに警戒しないでください」

顔の前に両手を挙げ笑う優男に、私は更に警戒心を強めた。

「何の用ですか?王女様からなにか?」

「いえ、部屋を出てから外にいかれたので探していたんですよ」

「へぇー。王族でもない私をですか?」

「貴方も客人には変わりませんから。それより何か企んでいらっしゃいますか?気付かれてなかった、とは」

「こちらの話です。貴方には関係ありません」

「関係はありますよ。女王様に関わることなら、こちらも動かなくてはなりませんから」

「女王様には、何の関係もない話なので安心してください。王女様のお母様に危害を加えるような事など、できませんから」

「先ほどの発言をした人の台詞とは思えませんね」

「そんなことより、貴方は女王様のところにいなくていいんですか?貴方は女王様の直属の使用人なんでしょう?」

すると、優男は怪しげに笑った。

「ほう、どうして分かったのですか?いいましたか?」

(ずっと私達の後ろにいて、見張るように見ていてたのにも関わらず、私の発言に女王様の隣にいた兵は怒鳴ったのにこいつは一言も何も言わなかった。女王様の言葉でない限り動かないということはそういうことだろう。でもまぁ)

「ただの勘です」

そう言って私は立ち去ろうとした。

「おや、どちらに?」

「貴方には関係ありません」

優男の隣を横切ろうとした時、私は腕を思いっきり引っ張られた。体に衝撃が走る。壁に背中を押しつけられたのだ。正面には、男。

「なんですか?」

私は男の顔を睨んだ。

「その目、どうしたんですか?さっき押さえていましたよね」

「お前には関係ない」

自分でもびっくりするぐらい低い声が出た。

「悪い言葉遣いですね」

「ほっといてください。それよりいいんですか?客人にこんなことしても。誰かに見られたらまずいんじゃないですか」

「問題ありません。ここには、あまり人が来ません。だからこそ、貴方はここに来たのでしょう?」

「・・・何を企んでいる?」

「貴方は勘がいいですね。ですが、それはまれに命取りとなるんですよ」

男は私に殴りかかった。だが、私は手をはたき落とし蹴りをいれた。

男の脇腹にあたり、男はグッと顔を歪ませた。

「悪いけど、どこぞのか弱い女達とは違うんで」

「そ、そのようですね」

「このことは、他言しないでくださいね。襲われないかぎり、人前で私からは攻撃するつもりはありませんから」

そう言って私は立ち去った。

 城の中に入り、廊下をうろついていた。

(あっぶな~。服が執事服でよかった。スカートじゃ動きにくいし。にしても、あいつ何をするつもりなんだ)

「おっ優生!」

後ろから声がした。

「ん?あっ、アロウ様」

「ちょうどよかった。こんなところで何しておるのじゃ?」

「え、いや。さ、散歩です。アロウ様こそ、ここで何を?」

「そこの母上の部屋で母上と話しておったのじゃ!」

アロウ様は、すぐそこの扉を指差した。

「そうですか。それよりちょうどよいとは?」

「そうじゃ!母上にそなたを呼んでくるよう言われたのじゃ」

「え?私をですか?」

「うむ。話がしたいそうじゃ」

「私からは話すようなことはありませんと言ったはずですが」

「まぁそう嫌そうな顔をするな。母上から話したいそうじゃ」

「女王様から私にって一体どんな話を・・・」

「考えるのは入ってからでよいであろう。ほれ入れ入れ」

アロウ様に背中を押され、部屋の前に立った。

「そうそう。そなたが他人を疑ってしまうのはわかるが母上はそんな人ではない。あまり警戒心をむき出しにするでないぞ。さっきの態度もよくなかったぞ」

「すみません。というかアロウ様は入らないのですか?」

「二人きりで話したいそうじゃ」

「じゃあ、それまでどうするんですか?アロウ様を一人にするわけには」

「問題ない。わらわは、勝手に時間を潰しておる。そんなことより早く入るのじゃ」

そう言ってアロウ様は、ニッと笑った。

私は大きくため息をついた。

「わかりました。くれぐれも城内から出ないでくださいよ」

「わかっておる」

私はもう一度ため息をついて扉をノックした。

中に入ると女王様が長テーブルの奥に座っていた。

(えっ。この部屋本当に一人用の部屋なの?!)

「えぇ、わたくしの部屋ですよ」

どうやら、口に出ていたようだ。

「あ、すみません」

「フフッ。よいのですよ。それより座ってください」

「失礼します」

私は手前にあった椅子に座った。

「あの、お話って」

「そんなに堅くならないでください。先ほどのことはお気になさらないでください。大体のことはアロウから聞きました」

「え、じゃあなんで私を?」

「お話したかったんです。アロウの話しだけじゃ貴方のことをはっきりとは知ることができませんから」

「なら、あの広間で聞いてくだされば」

「貴方が出ていかれてしまったのではないですか。それに二人だけでゆっくり話したかったのですよ」

「はぁ・・・」

「まずは、自己紹介ですね。レイ・アミスと申します。この城の女王です」

「ゆ、優生です。先ほども言ったとおりアロウ様のお世話をしています」

「早速ですが、その隠している目を見せてください」

心臓が飛び出るかと思うくらい驚いた。

「なっなんでですか」

「さっき、アロウに聞きました。右目は違う色をしていると。しかも毎日色が変わるそうですね」

(あのばか王女~っ!)

チラッと女王様の方を見ると、女王様は曇りのないキラキラした目で私を見ていた。

(なんで!?なんでこの親子はこんなに私の目に興味津々なの?!)

「あの、あまり見せたいものではないのですが」

「そうですか。でも、いつか見せてくださいね」

女王様は、少し残念そうな顔をした。

(な、なんかこっちが罪悪感感じるんですけど)

「あ~もう!わかりました。見せますよ。ただし、一度だけですよ」

そう言うと、女王様は顔をパアァァァと明るくした。

「わかりました!」

(どんだけ見たかったの。アロウ様は間違いなくこの人の娘だ。まぁ、アロウ様は強引だったけど)

「じゃあ、わたくしが眼帯を外します!」

「なんでですか!?」

「なんとなく、外したいんです。だめですか?」

「だめですよ。理由が不確か過ぎます」

「あ、もしかして至近距離に人が立つのが恥ずかしいとか?」

「はい?!」

「アロウに優生さんは照れ屋さんだと聞きました。なら、安心してください。とったらすぐ離れますから」

「そういう問題じゃありません!照れ屋じゃないですし!」

(というかアロウ様、なんてこと言ってくれてんの?私のイメージどうなってんの!)

「あら、そうですか。なら外させてもらっても大丈夫ですね」

「大丈夫じゃないです!」

「そうおっしゃらずに」

(なんなの!?アロウ様も女王様もなんで自分で外そうとするの!?この親子、相手するの疲れるんですけど!)

「自分でします!ほらっこれでいいでしょう!」

私は自分で眼帯を外した。

「・・・」

(なに黙ってんの!自分で見たがっておいてまさか引いたとか言わないだろうな)

「きれ~い!」

女王様は歓喜の声をあげた。

「へ?」

「アロウの言った通り!なんで隠してらっしゃるの?とてもいいではないですか!」

私は冷や汗を流した。

「な、なんでって。それアロウ様に聞いていないんですか?」

「はい。アロウは目を褒めてばかりで、詳しいことは話しませんでした。なのでよろしければ教えていただきたいです」

「暗い話になりますよ」

「構いません」

「・・・私の目は生まれた時からこうでした。片目だけ毎日色が変わって、町の皆から気味悪がられていました。いつからか、この目は“呪われた目”と呼ばれるようになりました。両親もそのせいで苦労していて、生贄の日まで父は私に冷たく接していました。この目のせいで嫌われ、避けられてきました。だから私はこの目が大嫌いなんです。だから私はこの目を隠しました。相手が見なくていいように。そして、自分でも見なくていいように。私は貴女方が羨ましいです。両目とも同じ色で、変わることのない普通の目を持っている貴女方が」

そこまで言って私はハッとした。

(しまった。また私マイナスな事を)

うつむいていると、女王様はいつの間にか私の横に来ていて、私の頭に手をのせた。

「じょ、女王様?」

「アミスでいいです」

顔を上げると、女王様は優しく笑った。

「たくさん傷ついて生きてきたのですね。でも、大丈夫です。そんなに不安になる必要はありません。といっても、急に変わる必要もありませんよ?貴方らしく、ゆっくり力を抜いていってください。何かあったらわたくしのところにいらっしゃい。力になりますよ」

「えっでも、私はそんな資格ありませんし、そういう立場でもありません。なにより悪いです。私なんかのためにじょう、アミス様の時間を使うなんて」

「いいんです。アロウがお世話になっているお礼もかねていますから」

「いえ、私はただ仕事で」

「友達は仕事ではありませんよ?」

「うっ」

「フフッ。実はアロウ、昔から友達を欲しがっていたのですよ。お母様の目があったせいで外にもろくにでられず、城外の方々と会う機会も少なくて一人で人形遊びをしていたり庭で花を見ていたりすることが多くて、いつも寂しそうでした。前に会った時もどこか寂しそうで、会話も少なかったのですが、さっき、アロウと話してを聞いていてわたくしは涙が出そうでした。とても嬉しそうに、楽しそうに貴方のことを話していたんです。自慢の友達じゃ!って言って」

そういうアミス様もとても嬉しそうだった。

(というかアロウ様、また恥ずかしいことを)

「アロウはレイ家のしきたりのせいで、人前では強気な態度で王座に座っていました。ですが広間に入って来たときの貴女方の会話を聞いていて、嬉しく思いました。アロウがあんなに本心で話しているところは初めて見ました。貴方がアロウを変えてくれたのです。あ、そうです。転びそうになったアロウを助けてくださってありがとうございました」

「えっいや、大したことではないので。というかとっさに体が動いていて、自分でもはっきりと助けたという意識は残っていません」

「だからこそ、感謝しているのです。大切に思っていないと、瞬時に動くことはできません」

「・・・アミス様は、アロウ様の言うとおりとてもいい人ですね」

「あら、ありがとうございます。でも、いい人なんかじゃありません」

「え?」

アミス様は頭から手をどけ、悲しそうな顔をした。

「わたくしは人殺しですから」

その言葉を聞いた途端、あの手紙の事を思い出し、心臓が締めつけられるような感じがした。

「わたくしはお母様を手にかけてしまいました。人の命をこの手で奪いました。アロウのために」

私は、そのことに対して文句を言おうと口を開いた。でも

「ですが、そんなんじゃないって自分でわかっています。アロウのためだと自分に言い聞かせているだけで、結局本当は自分のため。自分がつらかったから、自分がお母様の目から逃げたかったから、そんな理由でわたくしはアロウのおばあ様をこの世から消してしまった。と言いたいところですが・・・優生さん、ここからの話しはアロウに内緒にしていただけますか?」

「・・・?はい」

返事をすると、アミス様は微笑んだ。

「ありがとうございます。実は、おばあ様の事は手紙でアロウに伝えました。わたくしが毒を盛ったと。ですが本当はそうではないんです」

「えっ?それってどういう・・・」

そう尋ねたが、アミス様は首を横に振った。

「それが、わからないのです」

「わからない?」

「はい。信じられないなら、それでも構いません。とにかく貴方に話しておきたいのです。本当は、おばあ様を殺したのはわたくしではありません」

「っ!?」

私は目を見開いた。

「あれは、二ヶ月ほど前でした。わたくしが朝おばあ様の部屋に行って扉を開けると、おばあ様はなぜかビクッと体を震わせたのです。頑固な方でしたので理由は教えてもらえませんでしたが、まるで何かに怯えているようでした。その時に気付くべきでした。おばあ様の命が狙われていたと」

「えっ」

「その日の夕方、部屋に行くとおばあ様が倒れていました。駆け寄りましたがもう手遅れでおばあ様は息を引き取っていました。わたくしは誰に言うべきか迷いました。理由が定かではない死をどう伝えるか。誰に信じてもらえるか」

「アミス様が言えば誰もが信じるんじゃ・・・」

「いえ、駄目です。おばあ様の性格は誰もが知っています。わたくしがそれに苦労していたことも国民は皆知っています。国民の間では、わたくしがおばあ様を恨んでいるという噂もあったようで理由が説明できない以上、おばあ様の死の理由がわたくしであると疑われる可能性が一番大きかったのです。城内でも同様に。だからどうせ疑われるのなら、それを真実にしてしまおうと、アロウに手紙を出したのです。国民もわたくしのことを人殺しだと言っています。わたくしは国の嫌われ者です」

「そんな・・・」

「ですが、これでよかったと思っています。もしこの事を言っていたら、きっと国民も城内の方も恐怖に怯えていたでしょう。正体不明の殺人者。そのような者が国内にいると思ったら、怖くて仕方ないでしょう?だから、よかったと、」

「よくないです!」

私は思わず叫んだ。アミス様は驚いた表情で私を見た。

「そんなの、よくなんてないです。アミス様が罪を被る必要なんてないです。国民の、周囲の人の噂で自分を犠牲にしなくていいじゃないですか。嘘をつくならもっと別の、病気とか、寿命とかいくらでもあったじゃないですか。なんで、なんで自分を殺人者にする嘘をついたんですか」

「国民を恐怖で怯えてさせないためには、それしかない。それに、どう言ってもきっといずれはわたくしのせいだと噂がでてきます。だから」

「そんなことを言ってるんじゃありません!国民まではいいです。この国は貴方の国です。どう思わせようと構いません。ですが、アロウ様にまでそんな嘘つく必要はなかったと思います!その嘘で、アロウ様を傷つけたんですよ!」

そう言ったとき、扉をノックする音が聞こえた。

「おい、優生。さっきから何を大声を出しておるのじゃ?また、母上に失礼なことを言っておるのではないだろうな」

「アロウ様・・・。大丈夫です。少し興奮してしまっただけです」

「興奮?おぬしがか?」

「少しですよ。そろそろ、終わるので待っていてください」

「わかった。すぐそこで待っておるぞ」

「はい」

すると、アロウ様の足音が遠ざかっていった。

私は扉の方へ歩いた。ドアノブを手に取ったところで、私は振り返った。

「アミス様、無礼な事を言ってしまいすみませんでした。でも、偽りの真実は、真実じゃありませんよ。それと、アミス様の言う事ならアロウ様も私も信じますよ。ちゃんと味方を見てくださいね」

そう言って私は部屋を出た。

「おお、話は終わったか?」

「はい。アロウ様、もしかして聞いていました?」

「いや?なんじゃ。聞かれてはまずいことでも話しておったのか?」

「いえ、聞いていないのならそれでいいんです」

「やっぱり、何か話しておったな?」

「秘密です」

「なんじゃ、つまらんの~」

「ふふっ・・・あ」

廊下を歩いていて、ふと後ろを見ると男が歩いていくのが見えた。

(あれは、さっきの男)

「アロウ様、先に行っててください。アミス様のお部屋に忘れ物をしたようで」

「何をしておるんじゃ。はよう取ってこい」

私は礼をして、きた道を戻った。

もちろん、忘れ物なんてしていない。なんとなくあの男が気になり後をつけたのだ。

とある部屋で彼を見つけて、私は壁に背をあててそっと中を覗いた。男は電話で何か話しているようで、私は耳を傾けた。

「わかっている。ああ、大丈夫。ちゃんとやるさ。偽りの殺人者、アミス女王の殺害計画」

そう言った彼の目は、とても怪しく光っていた。

ココロです。ここまで読んでくださった方ありがとうございます!

アミス「皆様ごきげんよう。女王兼アロウの母、アミス・レイです。こちらの作品を読んでいただき、ありがとうございます。アロウにあんな素敵なお友達が出来てとても嬉しく思います。皆様。どうかこれからもアロウをよろしくお願いします」

今回はアミス様にお言葉を頂戴いたしました!アロウ様への愛情をひしひしと感じますねー。

今回も私の作品を読んでいただき、ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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