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生贄少女と王女様  作者: ココロ
2/12

知らない感情

 目を覚ますと、朝になっていた。布団から出て、執事服に着替え、王女様の部屋へ行った。

「王女様、朝です」

そう声をかけてドアをノックしたが返事がない。仕方なくドアを開けて中に入った。無断で入るのは少し気が引けたが、このまま起こさないわけにもいかない。

中に入ると、王女様はまだベッドで寝ていた。

私は王女様の隣へいき、体をゆすりながら声をかけた。

「王女様、朝ですよ。起きてください」

すると、王女様は、結構大きな声で

「無礼者!」

と言って飛び起きた。

「すみません」

私は驚いて手をひいた。王女様は、ぽやーっとした目で私を見た。

「あの、寝ぼけてます?」

「おお、優生ではないか。こうして起こされたのは久しぶりじゃったから、つい反応してしまった」

王女様は、そう言いながらベッドから出た。

「そうじゃ!今日は何色じゃった?」

「え、なにがですか?」

くしをとりながら返事をすると

「そなたの目じゃ。昨日言うておったろう。毎日色が変わると。確か昨日は薄い紫じゃったな」

「そういえば、見てなかった」

「では、わらわが見よう」

「いえ、見ないでください」

「断る!」

そう言って王女様は強引に私の眼帯を外した。

「ちょっ!」

「あはは!そなたが取り乱すのは今のところその目を見られた時だけじゃからな。貴重で面白いのじゃ」

「なっ!」

「本当に毎日色が変わるんじゃな」

「・・・で、何色だったんですか」

「綺麗じゃの。深緑じゃ」

「そうですか」

「そなたの目はわらわの城の庭のように綺麗じゃな」

王女様は本当に愛おしそうに私の目をのぞき込んだ。私は、サッと目をそらした。

「わらわは、その目が羨ましいぞ。その目をわらわにくれぬか?」

「さらっと怖いこと言わないでください」

「あははっ。冗談じゃ。その目はそなたにあるからこそ綺麗に見えるのじゃ」

そう言って王女様は微笑んだ。

その言葉に、私は今までに感じた事のないような、なんともいえない気持ちになった。

「ん?どうした?もしや、照れておるのか?」

王女様はニヤニヤしていた。

「て、照れてなんかいません。帰るので眼帯を返してください」

「そうじゃったな。気をつけて行くのじゃぞ」

王女様は眼帯を返してくれた。

私はお辞儀をして部屋を出ようとした。すると王女様は「あっ」と私をひきとめた。

「どうしました?」

「わらわのことはアロウと呼ぶのじゃ」

「分かりました。では、行ってきます。アロウ様」

そう言うとアロウ様は満足そうな顔をした。

部屋に戻り、この城に来たときの服に着替えた。そして、外に出て門の前に行くと、着たときと同じ馬車があった。運転手は、やはりあの男だった。

「お前、殺されなかったんだな」

「ええ。残念だったね。それより、なぜ此処に止まっているの?」

「王女様の命令だ。家まで送れとな」

「あっそう」

歩いて行くと、昨日と同じ男がドアを開けた。馬車に乗り込むと、走り出した。

 家に着いてドアをたたくと、お父さんの声がした。

「どちら様ですか?」

そう言いながらドアを開けた。そこにはお父さんが立っていた。お父さんは私を見ると、とても驚いた様子で目を見開いた、かと思うとすぐさま私の腕を引っ張って家に引き入れた。ドアを閉めたと同時にお父さんは強く私を抱きしめた。

「優生!無事だったんだな!よかった!」

泣きながらお父さんはそう言った。

「母さんにも顔を見せに行こう」

「うん」

お母さんの部屋に行き、ドアをノックした。すると中からお母さんの声がした。

「どうしたの、お父さ、っ?!」

お父さんだと思っていたのかお母さんは私を見た途端、言葉を詰まらせた。

「優ちゃん?優ちゃんなの?」

「うん、そうだよ。約束したでしょ?助かったら帰ってくるって」

私がそう言った瞬間、お母さんの目から大粒の涙が溢れてきた。お母さんのところへ歩いて行くと、お母さんは優しく私を抱きしめた。

「よかった。よかった優ちゃん。もう会えないかと」

「うん。私も。約束したけどほんとは自信なかった」

「いつまでいられるの?また、戻っちゃうんでしょ?」

「うん。夜までに帰ってこいって」

「そう・・・」

お母さんは私を体から離して優しく笑った。

「それなら、今日はおいしいご飯作んなきゃね!」

「え、でも病気は・・・」

「何言ってるの!娘が命の危機を乗り越えて帰ってきたのに病気なんて気にしてる場合じゃないでしょ!」

「でも、倒れたりしたら、それこそ私、帰ってきた意味が・・・」

「心配性ねぇ。大丈夫よ」

任せなさい、と笑うお母さんを見て私は諦めた。

「わかった。でも、私も手伝うから。拒否権は与えないからね」

「ええ~」

「ええ~、じゃない!」

私が怒るとお母さんは嬉しそうに笑った。

「分かったわ。じゃあ、ササッと着替えるから部屋の外で待ってて」

「うん」

返事をしてお父さんと部屋を出た。

「優生」

「何?」

「何か城であったのか?」

「なんで?」

「前にもまして優しくなったような気がしてな。明るくなったような気もするし」

「そうかな?自分じゃわかんないけど。うーん。もしかしたら王女様のおかげかも」

「王女様の?」

「うん。私のことを気に入ったらしくて、異常に甘えるっていうか、構ってくるんだ。部屋も隣だし」

「同じ歳だから、かもな」

「うん。って、お父さん、王女様の年齢知ってたの?!」

私が驚くとお父さんはきょとんとして

「当たり前だろう。一応はこの国の王女なんだから。年齢と顔くらいは知られているぞ。この町の人達全員にな。まぁ母さんは知らないようだがな」

「なら先に言っといてよ。私てっきり三十~四十代くらいかと思って、王女様の前で固まっちゃったんだけど」

「あっはは。そうか、固まったか」

そう言って笑うお父さんを見て、私は嬉しいと思った。こんなふうにお父さんと話したのは初めてだった。

「おまたせ~」

お母さんが笑顔で部屋から出てきた。そして三人で台所に行き、道具を手に取った。

「あ、何作ろうかしら」

「決めてなかったんだ」

「まぁいっか。いろいろ作ろう♪」

そう言ってお母さんは鼻歌を歌いながら、材料を取り出した。

 料理を隣で手伝って分かったことがある。お母さんは意外に料理が下手で、野菜や肉の切り方がめちゃくちゃだった。

お父さんはこれまた意外に料理が得意のようでお母さんに分量などを指導していた。

(まぁ、お母さんはほとんど寝ていたし、お父さんはお母さんの看病をしていたから当然と言えば当然だけど)

あとは火をとおすだけになったが、お母さんに火を使わせるのは危険だから、私とお父さんですることになった。

「優生、火を中火にしてくれ。野菜が焦げる」

「あ、うん。ってお父さん!そっちの鍋、煮えたぎってるよ!」

「うわわっほんとだ!」

「もう、人の見る前に自分の気をつけてよ」

「あはは、すまんすまん」

苦笑いで頭を掻くお父さん。すると、お母さんが後ろから

「意外でしょ?お父さんって結構あわてんぼうなのよ」

と言ってクスッと笑った。確かに意外だ。いつも私が見ていたお父さんは怖くて、厳しくて、物事をたんたんと、黙々とこなす人だと思っていた。誤解していたのは王女様と同じなのかもしれない。人を処刑するように命令する王女様を私は、非道で優しさを持たない人だと勝手に思い込んでいた。でも、話してみると普通の女の子で、お喋りが大好きな子だった。

(アロウ様は、最初に私を見たとき、眼帯を見たとき、どう思ったんだろう)

そんなことを考えている間に料理が出来上がっていた。

「よーし!じゃあ、皿にサラッとのせるか!・・・なんてな」

「お父さん、寒いわよ」

お母さんは苦笑いをしながらそう言った。

私もお母さんの横であはは・・・と笑った。

 ご飯を食べているときにアロウ様に会った時のことを話した。そして、その後の事も話した。お母さん達は驚いた様子で目を丸くしていた。

 あっという間に半日が終わり、帰らなければならない時間になった。

私は今、お母さんの部屋にいる。もちろん、お父さんも一緒に。

「もう、行ってしまうのか」

「うん。もう暗くなるから」

そう答えると、二人は寂しそうな顔をした。

私は心配させまいと笑顔で振る舞った。

「大丈夫。落ち着いたら手紙書くから」

そう言った時、お父さんは黙って私を抱きしめた。

「え?」

するとお母さんも私を抱きしめて

「つらかったでしょ?あなた、一度も泣いたことないもの。今までの生活も周りの目もあなたを苦しめるものばかりだった。知らなかった。本当の優生を」

「お母さん・・・」

「おれも、初めて知った。お前が、あんなに話すのが好きで、いろんな事で笑うことを。ごめんな。おれがあんな態度だったから、話すことも笑うことも出来なかったな。寂しかったよな。親なのに、何も出来なくてごめんな」

私は二人を体から離して笑って首を横に振った。

「そんなことないよ。確かにお母さんが病気になってから一人が怖くて、誰にも助けてもらえなくて、陰口とか、呪われてるとか、言われるたびに苦しかった。こんな目じゃなければって何度も思った。でも、昨日、二人におめでとうって言ってもらって、愛されてることを知って、すっごく嬉しかった。だから、今日、戻ってこれて、みんなで料理作って、お喋りして、抱きしめてもらって、心配してもらって・・・」

そう話していると、視界がぼやけてきた。頬を冷たい感覚がつたう。

「あれ?涙が。なんでだろ」

二人は心配そうな顔をしていた。

「だ、大丈夫!目にごみが入っただけ。ごめんね、あははは・・・」

笑って涙を拭おうとするが、涙は止まらず流れてくる。

「変だなぁ。止まらない。深く入っちゃったのかなぁ」

次々に流れ出る涙を拭っていると、お父さんが再び私を優しく抱きしめた。

「もう、いいんだ。我慢しなくて。吐き出していい」

「おとう、さん・・・」

すると、一気に涙が溢れてきた。

「私、お父さんとお母さんともっと一緒にいたい。また、みんなで料理したり、もっといろんなことしたい。せっかくみんな、新しいこと知れたのに、これで終わるなんて嫌だ」

その後、私は柄にもなく声をあげて泣いていた。その時も、お父さんは私を抱きしめて、うん、うんと話を聞いてくれていた。お母さんは私に寄り添い泣いていた。

 「それじゃ、もう行くね」

笑顔で二人にそう言った。二人はまだ少し心配そうな顔をしていた。

「もうほんとに大丈夫。ありがとう」

二人は顔を見合わせて安心したような顔をした。

「気をつけてね」

「うん」

「たまには、帰ってくるんだぞ」

「それは王女様に聞いてみないと・・・」

そう言って、もう一度笑うと二人も優しく笑った。三人で笑いあっていると

「おーい。早くしてくれないか。おれらが王女様に怒られちまう」

と運転手が言った。

「あ、急がないと。私も怒られる」

馬車の方に走りかけて、私はサッと振り向いた。

「お母さん、お父さん。行ってきます」

「行ってらっしゃい」

私は手を振って馬車に乗った。馬車が動き出して、窓から外をのぞくとお母さんとお父さんはやっぱり心配そうな顔で立っていた。でも、その顔は昨日よりやわらかい表情のような気がした。

 城に帰り、アロウ様の、部屋をノックした。

「ただいま戻りました」

「優生か。入れ」

「はい」

中に入ると椅子にアロウ様が座っていた。

「遅かったの」

「すみません。いろいろとありまして」

「まぁ、よい。夜になってまだそんなにたってもないからの。だが、遅れたのも事実。何か罰を与えねばな」

「何でもいいですよ。帰らせてもらいましたし。約束を破ってしまったので」

「ほう、いさぎよいの。そうじゃな。なにがよいか」

アロウ様はうーんと考え始めた。

(どんな罰がくるか。雑用、体罰、最悪処刑・・・)

そんなことを想像していると、アロウ様は拳で手のひらをポンッとうった。

「そうじゃ。明日一日、わらわの言うことに従うというのはどうじゃ?」

「いや、どうと言われましても。私への罰を私に聞かないでください。自分で決めてください」

「ならば、これに決定じゃ!明日は絶対にわらわの言葉に従うのじゃぞ。異論は認めんからな」

「は、はい。わかりました」

「うむ。では、今日は下がってよいぞ」

「はい」

私はお辞儀をして自分の部屋に戻った。

(アロウ様は一体なにを考えているんだ。なにかやらせたいのか?なら普通に頼めばいいのに。私が拒否しそうな頼みなのか?まさか、人を殺せとかか?でも、今は特に殺したい人などいないはず。アロウ様が、生贄の日以外に人を殺す命令を下したという話しは聞いたことがない。だとすると一体。やはり雑用?)

あまり考えても仕方ないので、私はさっさと寝てしまった。

 朝起きて、着がえてドアを開けると、部屋の前にアロウ様が立っていた。私は、ゆっくりとドアを引いた。すると、あわててアロウ様はドアの側面に手をかけた。

「まてまて、閉めるでない」

私はドアを開けた。

「なんですか。人の部屋の前で。なにかご用ですか?」

「言うたであろう。今日はわらわの言葉に従ってもらうと」

「だからって、部屋の前で待たなくても」

「そんなことより、早く朝食を食べに行くぞ」

「え、私も一緒にですか?」

「当然じゃ。さ、行くぞ」

そう言ってアロウ様は、歩き出した。後ろから小走りで追いかけて、彼女のすぐ後ろを歩いていると

「そうじゃ!今日の目は何色じゃった?」

そう聞かれた瞬間冷や汗がでた。

(やっば~。見るの忘れてた。さすがに廊下で外すのは嫌だ。誰が見てるか分からないし)

チラッとアロウ様を見ると、アロウ様は期待の眼差しで私を見ていた。

「もしかして、見てないのか?では、わらわが見てやるぞ」

「あ、あの。さすがに外では。後で部屋に戻った時ではだめですか?」

「なぜそう嫌がるのじゃ」

少し不機嫌になったのを見て、さすがに罪悪感をおぼえた。

(いや、私全然悪くないけどね!?)

「その、二人だけの秘密に、したいの、ですが。私との特別は、嫌ですか?」

そう言うとアロウ様は顔を少し赤くした。

「ま、まぁ、そういうことなら、仕方ないの。ちゃんとあとで見せるのじゃぞ」

「はい」

返事をするとアロウ様は

「ふふっ、特別か、悪くないの」

などと一人でつぶやいていた。

(あれ?こういうことは、疑うと思っていたけど、あっさり信じたな。アロウ様の感覚ってよく分からない)

「あの、アロウ様。信じてくれるのですか?」

「なにがじゃ?」

「その、こういう前向きな事って信じないんじゃ」

「そなたのことを疑う理由がどこにあるのじゃ。初めて会ったとき、そなたは正直に言った。わらわに仕えるのは嫌だと。あの命の危機なのがわかっている状況でそんな事が言えるのなら、嘘などそう簡単につく者ではないであろう。それに、信じたいと思ったのじゃ。優生、そなただけはな」

「・・・それこそ、本当なのですか?同い年で王女の好みの目だった。面白い存在だから、そばにおいておきたいと思っているのではないですか?」

「本当に人間不信じゃな、そなたは。わらわは嘘などつかぬと言ったであろう」

「保証がないです」

「ムッ。ならば、今からわらわを信じるのじゃ」

「はっ?いや、そんな急に・・・」

「今日はわらわの言葉に従うと言ったはずじゃが?」

「うっ。わかりました。できるだけ疑わないようにします」

「うむ。それでよいのじゃ」

アロウ様は、満足そうに笑って鼻歌を歌いだした。

 食堂に入ると、テーブルにもう料理が並んでいた。

「すごい」

思わず言葉がでてしまった。でも、本当にすごかった。綺麗な盛り付けで、だけど食べにくくなさそうで。作った人はそうとうな腕の持ち主だろうと思った。

「ありがとうございます。優生様」

突然、後ろから静かな声で声をかけられた。

振り返ると、長いメイド服をきた、大人びた女性が立っていた。

「え、えっと」

私が戸惑っていると、女性は目を細めて笑った。

「これは、失礼。わたしは、この城の食事を担当している冷華(れいか)です。あなたのことは聞いています。一昨日、生贄に選ばれた子ですね」

「い、生贄・・・まぁ、そうですけど」

「朝食、食べていかれるのでしょう?」

「い、いえ。私は王女様についてきただけですので」

「なにを言っておる。そなたも食べるのじゃ。ついてこさせた意味がないではないか」

「えぇ~」

「なんじゃ?聞けぬのか?」

「いえ、ではいただきます」

うなだれてそう言うと、冷華さんは、優しく笑って

「かしこまりました。少々お待ちください」

と、お辞儀をして去っていった。

「優生よ」

「なんですか?」

「わらわの事はアロウと呼べと言ったではないか」

「呼んでますが?」

「そうではない!今、冷と喋るとき、王女と言ったであろう」

「それは、冷華さんが相手だったからで」

「関係ない!わらわの事はアロウじゃ!わかったな!」

「わ、わかりました」

(なんだ?なんでこんなに怒っているんだ)

「お待たせしました。どうぞ、そちらにおかけください」

奥にある扉から、冷華さんがアロウ様と同じ料理を持って出てきた。

「あ、ありがとうございます」

「相変わらず冷は仕事が早いのう」

「とんでもございません」

冷華さんは深くお辞儀をすると、また去っていった。

「じゃあ、いただこう」

そう言ってアロウ様は、朝食を食べ始めた。

「いただきます」

私も手を合わせて、食べ始めた。

「んん~。今日のも美味じゃのう」

「ほんと、美味しい」

「そうであろう!冷の作る料理は世界一じゃ」

アロウ様は、とても機嫌がよくなった。

「料理人さん達は、とても腕がいいのですね」

「達?なにを言っておる。これはみな、冷が一人で作ったのじゃぞ?」

「そうなんですか。・・・えっ?!盛り付けも!?」

「もちろんじゃ。最初から最後まですべて冷がやっておる。そなたの分は、さっき作ったばかりじゃよ。冷は余計な分は作らんからの」

「え?!この量をあのたった数分、いや、一分もなく!?」

「なにを驚いておる」

「アロウ様!感覚がおかしすぎますよ!ほんの数秒でこの量を、しかも一人で作っているなんて、普通じゃないですよ!」

「でも、あやつはやるのじゃ。あやつができるのだから、普通の事であろう。少なくとも冷にとってはな」

アロウ様は、一度気に入った人は否定しない。そんな優しいところも持っているのに、なぜ、人を処刑することができるのか。私は、彼女の過去が気になった。

「ごちそうさま。今日も美味であったぞ」

「ありがとうございます。そう言っていただけて光栄です」

いつの間にか冷華さんが戻ってきていた。

「手が少し汚れてしまった。水を使わせてもらうぞ」

「はい。奥の水道をお使いください」

「すまぬな。あ、優生よ。ちゃんとそこで待っておるのじゃぞ」

そう言ってアロウ様は奥の部屋に入っていった。

「言われなくても」

そうつぶやいたとき、後ろからそっと冷華さんに話しかけられた。

「ふふっ。優生様は王女様に気に入られているのですね」

「えぇ、異常なくらいに。でも、冷華さんもそうでしょう?」

「まぁ、そうなのですが、あなたは特別気に入っておられますよ」

「え?どうしてそう思うんですか?」

「王女様が名前で呼ばせるなんて、初めてですので。それもわたしと話しているときもだなんて」

「聞いてたんですか?」

「聞こえたんですよ」

「だけど、冷華さんも冷って呼ばれてるじゃないですか」

「それは、私がここに来たときにそう名乗ったんですよ」

「え、なんで・・・」

そう訪ねると、冷華さんは、少し困った顔をした。

「あ、すみません」

「いえ、いいんですよ」

冷華さんは優しく笑った。そのとき、アロウ様が部屋から出てきた。

「待たせたの。ん?二人で何をしておったのじゃ?」

「何でも。少し優生様のことを聞いていただけです」

「そうか。優生行くぞ」

「あ、はい」

アロウ様は、食堂から出ていった。私も出ようとしたとき、

「優生様」

と冷華さんに呼び止められた。

「はい?」

「話の続きは、今日の夜。庭で待っていますね」

「え?わ、分かりました」

にこっと笑う冷華さんを見て私は首をかしげた。

「何をしておる!早くせい!」

「あ、はい!」

アロウ様に言われ、私は冷華さんにお辞儀をしてあわてて部屋を出た。

「す、すみません」

「まったく。このあと、わらわの部屋に来るのじゃ」

「はい」

(怒られるのかな)

一度別れて、それぞれの部屋に戻った。

私は鏡の前で眼帯を外した。

「・・・白?いや、灰色?」

そこにうつった私の目は、白いような灰色のような曖昧な色だった。

「こんな、曖昧な色、初めてだ」

今までは、青、緑、黄、黒、白のように色がはっきりしていた。少し濃淡はあったが、白っぽい~色や黒っぽい~色などはなかった。灰色のときは、はっきり灰色だった。

「これ見て、アロウ様はどんな反応するんだろう」

(あれ?なんで私、こんなに目のこと気にして・・・)

そう思ったとき、ノックの音がした。

「おーい。優生?まだか?」

「あ、はい。今行きます」

私は眼帯をしてアロウ様の部屋に行った。

「よしっ。では、まず目を見たい」

部屋に入るなりアロウ様はそう言った。

私は黙って眼帯を外した。

「おお、今日は白っぽい灰色か。いや、灰色っぽい白か?どっちにしても綺麗じゃな」

そう言うとアロウ様は、うんうん、と一人で頷いていた。

(ああ、そうか。この間までこの目を見るのも最後かもって思ってたのに、助かって、アロウ様に肯定してもらって、何色かを知るたびに嬉しそうにするアロウ様を見て、いつの間にかこの目が嫌じゃなくなったんだ)

「ありがとうございます」

私がお礼を言うと、アロウ様はすごく驚いた顔をした。そして、勢いよく私に近づいてきた。

「もう一度じゃ!」

「え?ありがとうございます?」

「違う!顔じゃ!」

「か、顔?」

「そうじゃ!今の笑顔じゃ!」

どうやら、自分では気づかなかったが、笑っていたらしい。

「もう一度と言われましても。どうやったか・・・」

「いいから、早くやるのじゃ!」

「えぇ~。こ、こうですか」

私は、なんとなくでにっこり笑った。

「うーん。もう少しナチュラルに」

「ナチュラルにって、どうすれば?」

「もうよい。本題に入ろう」

(珍しい。諦めた)

「本題?」

「そうじゃ。わらわの願いじゃ」

「あぁ、なんなりと」

「では、そこで待っておれ」

「は、はぁ」

アロウ様は、なにか、クローゼットをごそごそとあさっていた。

「何をしているんですか?」

「昨日、買っておいたのじゃ」

「買った?・・・えっ」

アロウ様が出したのは大量の服。

「な、何をするおつもりで?」

私は少し後ずさりした。

「見ればわかるじゃろう」

「ま、まさかそれらを着ろと?」

アロウ様はにっこりと笑った。

「わらわの願いはそなたにいろんな服を着せる事じゃ」

服を持ったまま、ゆっくりと近づいてきた。

私は、それと同時にゆっくりと後ずさった。が、とうとう壁まで追い込まれた。

「さぁ、観念せい」

そして、私はアロウ様に捕まった・・・。

 「おお~!似合っておるではないか!」

「あの、これすっごい恥ずかしいんですが」

一着目を着せられた。もう、正直脱ぎたい。 もう一発目から派手なのだ。膝のあたりまでしかない黄色いスカートに、上は半袖のブレザーみたいなオレンジ色の服。こんなんじゃ先が思いやられる。

私は今、アロウ様のベッドに座っている。

「アロウ様は、頭がお悪いのですか?スカートの長さおかしいですよ」

「そうか?」

「そうですよ!アロウ様のドレスは床にほぼつくくらい長いじゃないですか!そもそも、なんで私にこんなの着せるんですか!」

「本当は、この中から一着だけ選んで、着たときのそなたの反応を見たかっただけだったんじゃが」

「じゃあ、もういいでしょ。私の服、返してください。いつまでもこんな格好は・・・」

「でも、気が変わったのじゃ」

「なんでですか?!」

「一つ目は、思ったより反応が面白かったからじゃ。まさか、そなたがそこまで赤面して恥じらうとは思わなくてな」

「嘘!?」

私はサッと頬を触った。

「それと、二つ目は服が似合っていたから、ほかにもいろいろ着せたいと思ったからじゃ。だから、続けるぞ。もちろん拒否権はない。今日一日は言うこときく約束じゃからな」

(これなら、雑用とかの方がましだった・・・)

「さて、じゃあ、次は何を着せようかの」

アロウ様はとてもご機嫌で服を選び始めた。

まだ時計は九時をさしていた。

(これから、一体何分やるつもりだろう。まさか何“時間”とまではいかないよな)

だが、私の予想は当たってしまった。

 一着目は気づかなかったが、今は自分でもわかる。確実に赤面しているだろう。それもそのはず。ばか王女が的確に私が恥じらうような服を持ってくるのだ。服だけならまだしも、アクセサリーも持ってくる。それが帽子とか、チョーカーだったところまではよかった。でも、だんだん路線がずれてきて、魔女やドラキュラなどの仮想衣装に変化していった。そこで止まってくれれば、ぎりぎりセーフだった。でも、とうとう猫耳のカチューシャや城内でも見たことのないメイド服がでてきたら、もうアウトだった。そして、現在、私はそれを着せられている。多分、目に止まった物全てを適当に買ったのだろう。文句を言いたかったが、もう私は言葉もでなかった。いや、だせなかったというのが正しいだろう。恥ずかしさでそれどころではなかった。

「そういうのも似合うのう。すごいな、こんなにいろんな服が似合うの人はなかなかおらんぞ。あ、こんなのもあるが」

笑顔で取り出したのは、しっぽ(?)だった。

「・・・アロウ様は何を求めていらっしゃるのですか?」

「同い年の女の子とは、こういうのを楽しむものではないのか?」

「どっからの情報ですか!?」

「違うのか!?」

「違うでしょ!・・・多分」

「なんじゃ、そなたも分からぬのか?」

いたいところを突かれて、少しグサッときた。

「そりゃ、私も友達とかいたことないですし」

「そうなのか?」

アロウ様は、目を丸くした。

「言ったでしょう。この目は、嫌われてきたと。大人からも子供からも呪われてるって言われてきました。だから、って、何してるんですか」

「できたぞ!」

「何がですかって、ちょっおおおっと!」

私の腰のあたりにしっぽがついていた。

「おお。今までで一番の反応じゃの」

アロウ様は楽しそうな顔をした。・・・え。

(楽しそうな、顔?楽しいがなんなのか分からないのに、なんで今、私そう思ったんだろう)

「どうした?恥ずかしすぎて意識がとんだか?」

(あぁ、この人が、教えてくれたのか。私に、楽しいという感情を)

そう思うと嬉しくなって、私は大きな声で言い返した。

「分かっているなら、着せないでください!」

私は、今までで一番清々しい気持ちで言った。

アロウ様は、そんな私を見て、すごく驚いたようすだった。

「そんな反応されると、他のも着せたくなるのう。拒否権はないぞ!」

そのあと、王女からの着せ替えは三時間続いた。

ココロです。第二部を読んでくださりありがとうございます。今回から各キャラクターにも挨拶してもらおうと思います。

優生:「優生です。あまりいい作品だとは思えないけど、読んでくださってありがとうございます。よければ今後も見ていってください」

今回は優生さんに挨拶していただきました。辛口な評価で少しションボリ・・・は、置いといて。

今後も続けて書いて行くので、これからもよろしくお願いします。

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