思い切りの良い彼女
掲載日:2019/01/31
「なんかね、死にたくなったの」
そんなことを彼女は言う。
今まで、そんな気配は一つもなかった。
いつも朗らかに笑い、日々を楽しんでいるように見えた。
ネットを泳いでいて不快になった時でも、彼女の笑顔を見ていれば忘れられた。
なのに、どうして?
「だって、だれも私を必要としていないんでしょう?」
そんなことはない。
少なくとも自分にとっては必要不可欠な存在だ。
なのに。
「だから、いらないかなって」
普段は穴の空いた靴下だって捨てるのを戸惑うくらいなのに。
時々ものすごく思い切りが良くなる。
前日まで着ていた服も、「もういらないかな」ってあっさりゴミ箱に放る。
あれほど執着して集めたものでさえ、「いらないかな」って売り払う。
それは彼女のいいところでもあり……怖いところでもあった。
こんなふうに簡単に、自分の命、いや自分の人生すらも「いらないかなって」言って捨ててしまおうとするなんて。
だから、僕も言い返す。
「いいよ。でも、君がいなくなったらすぐ追いかけるけど」
「だめよ、あなたは」
「それに、君のいない世界はいらないから」
毎日伝えよう。
忘れないように。
君を必要としている僕がここにいると。
君が本当に僕を「いらないかなって」言うまで。




