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2 異世界に立つ

おれは死んだ。それは間違いない。夢とかそういうのではないのかと思うが、


「いまのこの景色の方が夢みたいだよなぁ…」


おれが目を覚ますと草原の上にいた。そりゃもう周りを見渡しても何も無い。ほんとに大草原不可避であるwww


「スラさん…」


ポツリと呟いて悲しくなる。どうやらスラさんはあの事故でいなくなってしまったらしい。思い出したら涙が出てきた。


スラさんはおれと10年以上コンビを組んでいる。今おれがここにいるものスラさんのお陰であろう。なのでそのスラさんがいなくなるというのは…涙が止まらん


「起きたと思ったら何をいきなり笑いながら泣いておるのじゃご主人様よ」

「うるせえよちくしょう」


代わりと言ってはなんだが、スラさんの代わりなのかスラさんを名乗る和服幼女が付いてきた。俺のことをご主人様とか言ってるけど、こんなの雇った覚えはない。


「ご主人様よ、姿が変わって多少驚いているのは分かるが、ワシはアンタの愛銃のSRR81+じゃよ」

「ンなわけあるかよ!スラさんは黒いフィルムが似合うごついカッコイイ銃なんだよ!」

「ワシってそんなイメージじゃったのか…てか、いい加減その笑い泣きやめてくれ…」


ずずっと鼻水を吸い込んで状況把握をはじめる。


「ここは…異世界…なのか?信じられんが」

「そうかの?過去にタイムスリップとかあるかもしれん、とりあえずは人と会わんとどうとも言えんぞ」


ざざぁと、風が草を揺らす音がする


「ん?」


だが、その中に何か異質なものが混じっている。悲鳴のような、戦闘音のような…集中して拾ってみるか。


「数は15。1人を囲む形で他の14人が襲っている。武装はどちらも鉄製の剣。」

「さすがご主人様じゃの、そこまでわかるとは…助けるのか?」

「助けよう。この世界に来て初めて会った人間だ。」


でも今はスラさんがないし、どうしても近接戦闘しかないわけか…


「じゃあ、ご主人様よ。ワシを装備してくれ。」

「装備?何言ってんのおまえ。」

「そこも知らんか。ご主人様よ、ステータスオープンと言ってみてくれ。」


言われるがままにステータスオープンと言う。すると目の前に薄いボードが現れた。ボードの内容はこんな感じだ。


ステータス

名前:無し

種族:人族

年齢:17

レベル:1

HP:50

MP:50

称号:無し


一言で言うならばゲームだな。やったことないけど、見たことはある。これはRPGというやつだ。


「感心するのは分かるが、今は時間が無いのじゃ。そのボードを横にスクロールしてくれ」


横にするロールすると装備一覧が出てくる。


「そのメインウェポンというのをタップしてくれ。そしてワシの名前を選択するのじゃ。」


装備というのをタップするとSRR81+というのがあった。おれは急いでSRR81+を装備する。どこかの格納庫にしまってあって、そこから出てくるんだろーなーと思っていたら、急に隣の少女が光だし足から光の粒となって俺の元に集まってきた。


おれは何が起きているのか全くわから無かったが、少しして光が銃の形になっていくのが分かった。


「まさか、そんな事が…」


完成したその形はどこからどう見てもSRR81+だった。じわっと目に熱いものを感じた。


(これで信じて貰えたかの)

「スラさん…なんだな?」

(そうじゃ、ご主人様が10年間愛用なさったSRR81+じゃ)

「スラさん…おれ…」


今は疑ってしまったことに罪悪感を感じまくっていた。だが、


(今するのは、そうでは無いはずじゃご主人様よ)


やはり、擬人化しても喋れるようになってもこの相棒はどこまでもおれの相棒だった。おれはごめんと苦笑して


「一匹ダウン。目標を14から13に変更。目標距離300弱。風は東に1。」

(弾はワシのMPを使って生成しているからリロードはいらんぞ。)


心の中で了解と答えてバイポットを立てる。


(初段装填完了。)

「じゃあ、今日もよろしくスラさん!」

(おうともさ!)


掛け声と共におれは笑って引き金を引いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

結構なピンチだった。周りに煽られてゴブリン討伐に出てきたのだが、最初の3匹だけ順調に狩れて、現在10体以上に囲まれている状態だった。


HPもMPもそこをつきはじめていた。だが、そんなことはお構い無しにゴブリンは襲ってきた。


「ウィンドブラスト!」


風の初級魔法で、風の弾を敵にぶつける魔法なのだが、今は集中力が乱れていて突風を相手にぶつけるだけの技になっていた。


「ギャ!?」


ゴブリンが怯んだスキをついて鉄の剣で切りつける。だが、大振りすぎて後ろから迫るゴブリンに気がつけなかった。


(父様、母様、先に逝くことをお許しください!)


来るであろう衝撃に私は目を瞑った。だが、その衝撃はいつまで経っても来なかった。少し遅れてズガンという爆発音が響く。


恐る恐る目を開けると、そこには頭を細い何かで貫かれたゴブリンが倒れていた。


さらに間髪入れずに発砲は続いた。ズガン、ズガン、ズガン!と音がなる度にゴブリンは倒れていく。


(な、何この魔法!?音がなるとゴブリンがどんどん死んでいく!?)


ゴブリンたちは慌てて逃げ出すが、逃げ出すことは許されない。逃げようとしたものはみな後ろから頭を貫かれ、私に向かってきたものも同様に頭を貫かれていた。


そんな光景に私はただただ唖然と立っているだけしか出来なかった。


そして、音がなりやんだ時私の周りにゴブリンはただの1匹も立っていることは無かった。それはほんの数十秒の奇跡のような出来事だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ラスト」

(あいよ)


ズガンという音が鳴り響く。スラさんに言われるがままにしたら鼓膜を強化したらしく、スラさんの発砲音もそこまで大きく感じなかった。


(命中、さすがじゃのご主人様)

「これくらいおれとスラさんなら余裕でしょ!」


おれは装備解除と心の中で命ずるとスラさんは銃から和服幼女の姿に戻った。


「んじゃ、初めての人間に会いに行くとするかの」

「うん、行くか」



とまあ歩いてきたわけなんだが、歩いてくる間少女はただの1歩も歩かずにそこにへたりこんで目の前の惨状を唖然と見ていた。


「やあ、君大丈夫?なんか危なそうだったから助けちゃったんだけど」


少女はぼーっとしていて反応しない。歳は自分と同じくらいだろう。あの戦闘を見るに貴族様か初心者平民で間違いはないだろう。気づかないので肩にタッチしてみた。


「ひゃ!?な、な、何するんですかいきなり!」

「いや、ずっと声かけてたんだけどさ…ていうか、大丈夫?」

「だ、大丈夫です。それに助けてくれたのにも感謝します。ありがとうございます。」


ちゃんとお礼は言えるのか、なかなかいい子じゃないか。


「ですが、何なんですか?その格好見たこと無いですし、あの魔法だってその…」

「そんなことよりっ!」


パニックが解けていないようなので、少し強く声を上げると少女はビクっとした。


「そんなことよりも助けた報酬を先に頂こうかな?」

「ほ、報酬?はっ!な、何する気ですか!?まさか、その、あの、か、体はあげられませんよ!」

「ど、どうしておれが君の体が欲しいと思ったのか聞いてもいいかい?」

「だ、だってニヤニヤしてるし、小さい女の子連れてるし、その、私の体をいやらしい目つきで見てる気がして…」


俺は額を抑える。隣でスラさんが肘でついてくる。もう放っておいてくれよ…


「体は要らないし、金が欲しいわけでもない。おれが欲しいのは情報だよ…」


一気に下がったテンションで要求する。


「じょ、情報ですか?」

「そう。おれたちはこの世界に無知なんだよ。だから少しでも情報が欲しくってさ…」

「は、はあ。分かりました。私に答えられる限りならばお答えしましょう。」

「んじゃあ、君の帰りを護衛しながら話を聞くって感じでいいかい…?」

「はい、構わないんですが…なんかあの、スミマセン」

「放っておいてくれ……」


初対面でそんなこと言われたのは初めてだったので俺は思ったよりも深い心の傷を負ってしまった。

読んでくれてありがとうございます。次回の投稿は約一週間後に投稿します。

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