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10 いざ学校へ

「ではこちらになります」

「ありがとうございます」


おれは姫のいる待合室に案内された。ドアを開けて一礼する。


「では姫様よろしくお願いします」


と顔を上げると同時に銀貨を数枚投げる。姫は少し驚きつつも魔法で風を操り見事に銀貨を集めて見せた。


「やはり覚えていらっしゃいましたか」

「金の恩は忘れないからね」


彼女はこの世界にきた初日に金を貸してくれたおれの恩人なのだまさかこんな立場で再開するとは思ってもいなかった。人生わからないものである。


「この数日であなたがここまで名を高めるとは考えてもいませんでした。」

「おれもこんなになるとは思ってもいなかったよ。まあ、それでこうして再開できたから今は素直に喜んでおくよ」

「ええ、私もです。この国を救っていただきありがとうございます。」


優雅な一礼をあの時と同じように見せてくれた。


「じゃあ、そろそろお願いしようかな。それで、一つ追加でお願いがあるんだけど」

「お願い…ですか?」

「うん。今から見る未来はおれだけに見せて欲しいんだ。」

「そうですか。個人情報もあるかもしれませんし承知しました。では、そこのソファーに横になってください。」


言われた通りソファーに横たわる。促されて目を瞑り額にサラスティアの手が置かれる。


「神目よ我が願いをもって未来を写したまえ」


そう言うとおれの意識は闇の中に落ちていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

跳ねるように飛び起きる。とてもリアルな夢を見ていた気がする。少し考えるとあれが未来なのだと理解する。


「未来は見えましたか?」

「あ、ああ。なんか実感ないな。」

「ふふふ。でも、その顔ではいい未来が見れたみたいですね?」

「え?」

「なんだかいつもより嬉しそうな顔をしていらっしゃるので」


確かに、おれの望む未来だったのでだいぶ喜んでいるがほとんど顔には出していないはず。おれがポーカーフェイスが下手になったのかこの子の観察能力がずば抜けているのか。


「それにしてもあなたと同じ学舎に通えるとなると少し楽しみですね。」

「姫様もあの学校に?」

「ええ、貴方は編入なので同じ学年です。あと、私のことは姫ではなくサラスティアとお呼びください。」

「わかったよサラスティア様」

「様もなしで!」

「さ、サラスティア。これでいいのか?」

「はい!学校でもさんはなしでお願いしますね!」


妙にグイグイ来る子だな。王族ってもっと大人しいイメージあったけど、やっぱり人によるんだな。


「同じ学校なら同じクラスになれるといいな」

「それはあなたの腕次第ですねー」

「ん?クラスってランダムに選ばれてるんじゃないのか?」

「なわけないじゃないですか!実力が近い人同士を集めて互いに競い、高め合うのが学舎ではないですか!」

「ふむ…確かにその通りだな」

「まあ、あなたならその心配は杞憂だとおもいますがね。ちなみに私は1番上のAクラスなので」

「へー。優秀なんだな」

「ふっふっふ。王族なら当たり前なのです!」


程よく出た胸をそり立ててドヤ顔をかました。なんかお姫様のイメージがどんどん崩れていく。


「自己紹介しっかりと考えておいて下さいね!最初が1番肝心なんですから!」

「じ、自己紹介か…紹介出来るところが恐ろしい程ないな」

「なーに言ってるのですか!僕がこの国を救いましたーって言えばいいじゃないですか!」

「なんで自己紹介でクラス全員に恩を着せなきゃいけないんだよ…それにおれがアレを倒したのは国民には秘密になってるはずだし…」


あの時、実は裏で防音と幻術の魔法を王国騎士達が貼ってくれたおかげであの騒動は一分の人間にしか広まっていない。国の出入りを完全に封じたおかげで多少国民に不振がられたらしいけど。


「姫様。そろそろお時間です」

と、陽気なお姫様とお話しているとメイドから声がかかった。


「あら残念」

「まあ、学校に行けば沢山喋れるんだしいいだろ?」

「ふーん」


サラスティアがニンマリとしてクスクス笑っている。


「さすが英雄様は最上クラスに行くのも余裕ですよねー」

「いや、そう言う意味では…」

「ふふふ、冗談ですよ!」


笑いながら姫が退出していく。部屋を出る際「またね!」とウィンクしたのが妙に✕✕✕✕と思った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「と、言うわけですね。学校に通うことになりました」

「学校か…人生で2回も学校に通えるなんて主様は幸せじゃの」

「そうだね。ていうか、結果は聞かないんだね」

「結果なんて主様の顔見れば人目で分かるわい」

「まじ?おれってポーカーフェイス苦手になってる?」

「特には変わらんが、どうしてじゃ?」

「いやね、姫にも同じこと言われてさ…」

「予想じゃが、姫はいつも大人に囲まれて笑顔を振りまいていると聞いたことがある。人の感情を読むのは人一倍長けているのかもしれんの」

「なるほどね…となるとやっかいだね」

「ああ、この作戦で姫は最重要人物じゃからの…」

「そうだな、姫には要注意だ。じゃあ、作戦はプランBでいく。」

「ん」「了解じゃ」


せっかく学校に入れるのだからどうせならそこでしか手に入れられないものを手に入れておきたい。明日は編入試験だし今日は早く寝ることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌朝。

また人目を釘付けにする馬車が宿の前にどんと止まっていた。


「どんだけ高待遇なんだよ…」

「まあ、主様は表に知られてないだけで王族内では英雄様らしいからの。これくらい当たり前じゃろう」

「なんか、マスターそわそわしてる」

「逆に何が不満なのじゃ?これ以上ない好意ではないか」

「だって……この馬車奇襲されたら即死しそうな作りしてるしさ…」

「「ああー…」」


それにこんなに人が多く、周りの目線が釘付け。もっと言えば目線が全員なにか不思議なものを見るような好奇心の目線で見られているので殺気を感知しにくい。そしてこの馬車の脱出しにくさといったら、襲撃されたらどうやって脱出する気なのだろう…と、そんなことはあるはずがないのに癖で考えてしまう。


「おはようございますクロ様。お迎えにあがりました」

「おはようございます。王都までよろしくお願いします」

「これはこれはご丁寧にありがとうございます。では、参りましょうか」


案内人に促されるままに中に入る。中イスはフカフカでそこまでサイズは無いもののくつろげるようになっていた。おれは目をつぶり周りの探知に集中した。






まあ、こんな街中で襲撃などあるはずも無く無事に学校にたどり着くことができた。そして案内人に付いていくと体育館のような場所に案内された。


「ようこそ、魔術学校へ!」

「は、はあ…」


中に入ると妙に熱い半袖短パン熱血教師が挨拶してきた。その他2人。体格は細いが軸はしっかりと通っている金髪イケメン先生にボディーのラインがくっきりと浮き出ている大人しそうなキノコショートの先生。どうやらおれ達はこの3人と試験をするようだ。


「今日はよろしくお願いします」

「おう!ではさっそく始めようか!」


体育館を3分割にして行う試験だが、体育館の広さが尋常ではないので別分スペース的には問題ないようだ。ちなみにスラさんの相手はきのこ先生。キルさんの相手は金髪イケメン先生で俺の相手が熱血先生だ。ちなみにこの体育館は普通ではない。この体育館には自動修復のエンチャントが全体に張り巡らされており、壊してもすぐに修復するようになっている。


「では、皆さん準備はよろしいですか?」


案内人の爺さんがおれ達を見てそういった。


「では、始め!」


始まったが熱血先生は動かない。あくまで試験官として様子見のつもりなのだろう。


「先生。この試験ではもちろん場外でのアドバイスは禁止ですよね?」

「ああ、そうだな。別にこのフィールドにいる場合なら構わないが、果たして君にその余裕はあるかな?」


相手は完全にこっちを舐めきっている。喉仏を手刀で貫きたくなる気持ちを抑えながら当たりを見渡す。


キルさん

「ふーん。王都からの紹介って事だったけど、こんなもんか…まあまだ若いしね」

「っ!殺す!」

「おお、怖い怖いっと!」


スラさん

「この小娘がぁ!」

「ふふふ、小娘はどっちかしらね?さあ、どんどん作らないと間に合わないわよ!」

「チッ!」


とまあまだ始まったばかりだがこの様子である。こうなるのは初めから目に見えていた。あの二人はおれに使われるあまり自分一人での戦闘経験がほとんどないのだ。そういう訳で今回はいい機会だろう。


「ははは!ほんとによそ見をするとは…舐められたものだなっ!」


別に見なくても感じられる大きな殺意。おれは首を捻って拳を避けてそのまま背負投の容量で熱血先生を投げ飛ばす。


「さってと…」


肩を回して手首を回してポツリとつぶやく


「おれもそろそろ動きますか」


ストック…ヤバス…

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