1 理不尽な死
小説を書くのは初めてなので暖かい目で見てくれると幸いです。
スナイパー(狙撃手)の役目は暗殺、前線の味方の援護、敵地偵察などと色々ある。
どれにしても敵地偵察以外はほとんど自分以外の命が必ず関わってくるので決して楽ではないのだが、俺は笑っていた。
距離は1000。ビルに立てこもった犯人1人。かなり臆病なようで常に人質を連れて歩いている。風は東に4。
ケータイが鳴り響いた。やっと射撃許可が降りたか、と電話に応答する。
「おまたせ、射撃許可取れたわよ」
「遅いっすよ!タバコ何本吸ったと思ってんすか!」
「あら?あなたタバコなんてやってたの?」
タバコはまあ嘘だ。タバコは戦場の疲れた兵士に売れるため吸わないで残しておいている風習が残ってしまったのだが、俺もたまに吸いたいなと思う時もある。かっこよさそうだしさ。
「ヘッドいっていいんすか?」
「そこの許可は取れなかったわ。肩あたりにでもお願いできる?」
別にこれくらいの条件ならどうということは無い。俺の腕と、このSRR81+があればな。了解と答えて寝そべってSRR通称スラさんを構える。
「発射タイミングはそっちでいいそうよ。3カウントで発射と同時に突入するわ。」
「了解っすっと。んじゃ今日もお願いしますねスラさん。」
バイポットがしっかりかかってるかを確認して弾を1発だけ詰める。俺はこういう任務の時は弾を基本1発しか詰めない。
これを外したら…という緊張感をたっぷりと味わうためだ。
狙わてれるのは分かっているだろうが、緊張で注意力がそれてくるだろうと待っていると犯人がふらっと立ち上がった。そして窓際に立ちそうになった時俺はカウントを開始する。
口を三日月のように釣り上げながら。
「カウント。3、2、1、0!」
ズガン!とイヤホンでは到底抑えきれない音が鼓膜を叩きつける。
うちだされた弾は人質である少女の真横をすり抜け真っ直ぐ犯人の肩に吸い込まれるように着弾する。
その瞬間機動隊が突入して犯人を迅速に取り押さえる。洗礼されたお手本のような動きだ。
「着弾確認。綺麗に肩に一直線ね。さすが機械兵ね。」
「やめてくださいよ。そんな呼び名自分にはもったいないっすよ!」
それに自分はこの呼び名は好きではない。
「そうだったわね、あなたの好きな2つ名は」
「笑う死神」
それを聞いて俺は笑顔になる。肩に付いている、口が裂けるほど笑った死神のエンブレムがその呼び名の原因だ。
呼び名についての話だが、俺はどうやら異常らしい。まあ、自分でも自覚しているのだが…
同僚の話ではどんなに危機的状況だろうと、どんなに親しい味方が死んだ時でも自分は笑顔なのだ。
どんなに不謹慎だろうと自分は笑顔。して、俺と相対したスナイパーはその笑顔を最後の顔としてあの世へ連れていかれる。例外はただの一つもない。
そしてこの愛銃SRR81+通称スラさんももう10年以上の付き合いだ。(ちなみにいま17歳)
ふう、と一息ついて立ち上がると唐突に寒気がした。自分の直感だけを信じて横に思いっきり飛ぶ。
ビシッと銃弾が床に着弾。物陰に隠れつつケータイで上司に状況を知らせようとするが、
また悪寒を感じ咄嗟にケータイから頭を逸らすとさっきとは真逆の方向からの狙撃。
相手は複数人だなと考えつつ、屋内に飛び込む。だが、屋内に入る直前に有り得ないものを目撃してしまう。
屋内のドアを開けると小さな模様が書かれていてそこが光を発している。
「うおわっと!」
その光に頭を弾が貫通するビジョンが見えて咄嗟にスライディングして建物の中に入る。予想どうり光の銃弾が先ほど頭のあったいちを通過していく。模様は光を失い、危険な気配は少しもない。どうやら1発発射するともう撃ってこないらしい。
(どうやってとかは置いといて今理解しなきゃいけないのはあの光はスナイパーと同じ存在であることと……)
俺の思考が中断される。左の太ももを光の弾が貫いたからだ。模様は自分の真下に出来ていた。
(どこでも自由な所から撃ってこれるのかよ!反則だろそれ!)
焦りが一瞬のスキを生んだ。俺は目の前に生成された模様を見逃した。間に合わない。思考がそう判断し最後にとった決断。
腰のナイフで壁を切りつけた。銃弾をそらそうとしたそれは壁の模様だけを切り裂いていた。
(終わった。だめかな?)
だが、意識はある。どうやら模様を壊すと銃弾は不発になるようだ。
(それなら!)
俺はドアを勢いよく開けて外に出る。室内のような密室よりも、スラさんを使える外の方が俺は何倍も生存率が上がる。
つまりあれだ。的当てゲームだ。
的は直径10cmほどの小さな模様。
自由な場所に生成可能。
2つ一気には来ない。
俺はスラさんを担いで棒立ちになる。諦めたと間違えられても何も言えないくらいの棒立ち。
「んじゃ、やりますかスラさん。」
そして俺はずっとつり上がっていた口端を下ろす。それは本当に機械のような瞳で先ほどのようなキラキラした感じはどこにもなく。ただただ静かな殺意に満ちていた。
スラさんに青黒い筋が通る。この現象が何だかは分からないが、この時スラさんと一つになれているような感覚になるので一体化と読んでいる。
マガジンをはめて俺は静かに精神を研ぎ澄ます。
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打てる方角は360度。ターゲットはスキだらけ。
私は諦めたと判断し頭に標準を定めて放とうとする。私はかなり焦っていた。感覚だけで弾をかわし、足を貫かれても笑顔な彼をすこし恐れていた。
だが、それもこれで終わり。彼はもう生気のない目をして突っ立っているだけ。準備は出来た。
無音の弾が彼を襲うが、彼は首をかくんと横に倒し避ける。またこの幸運。じっとしていてくれ。と、つぎの魔法を生成する…が
ズガンという音が鳴り響き、不発となった。
この´魔法´に不発などという概念は無いはず。だとしたら一体…まさか!
ターゲットは両手をダランと下ろしたまま棒立ちしている。だが、向きが変わっている。
今度はターゲットに注目しながらもう1度撃とうとする。すると…
ものすごく速さで銃が持ち上げられ発砲され先ほど生成した10cm程の円を撃ち抜いていた。
(馬鹿な!生成開始してから発射まで1秒足らずだぞ!それを正確に撃ち抜いているだと!)
つぎはなるべく遠くに生成するが不発。
否、発射を阻止された。
(ならば物量戦だ!こちらの弾は無限!あちらはリロードを挟まなければならない!そこにスキがある!)
だが、何発撃っても彼はリロードを開始しない。相変わらず生気のない目と機械的な動作でこちらの攻撃を防いでくる。
不意に、背筋に悪寒を感じる。彼をもう1度見ると相変わらず目に生気は無かったが、口元が裂けんばかりにつり上がっていた。
額に汗が流れている。その汗は拭っても拭っても垂れてきて、イラつきながら手を見る。
真っ赤だった。
そこで初めて自分が狙撃されたことに気づく。
(スマイルリーパーとはよく言ったものだな。)
やけに冷静だなと自分で苦笑しつつおれは意識を絶った。最後に見たのは口元が裂けんばかりにつり上がった死神の顔だった。
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ターゲットが死んで一体化が解除される。
「お疲れスラさん。」
ふうと一息つく。
かなり接戦だった。これ程の死闘はいつぶりだろうか。360度どこから弾がくるかも分からない緊張感。ましてやどこにいるかも分からない敵を探して始末しなければ終わらないエンドレス。
だが、超えたのだ。俺とスラさんで超えてやった。
満足感に浸っているとケータイが遠くで鳴り響く。そういえば落としたのを忘れてたと取りに行くと上司から通話がかかってきていた。きっと急にかけてきたのに一言も発さなかったので心配してくれたのだろう。
「もしもし、スミマセン。ちょっと取り込んでて…」
「そ。。。と。い。か。。。はや。そ。。。な。て」
「スミマセン、ノイズが混じっててよく聞こえないんですけど…」
いや、このことばの配列。
´はやくそこをはなれて´
だろう。だが、殺気も少しも感じないしなんでだろう?それよりもさっき戦った敵の特殊能力の報告をと思い、ふと空を見上げた。
「は?」
ザッ「飛行機がそこに墜落するの!早く逃げなさい!」
ふと見上げた空には先程には無かった墜落する旅客機があった。
非常口にダッシュ。いや、間に合わない。と感じた俺はスラさんを抱えて屋上から飛び降りた。
落下していく早いような遅いような時間の中。神は俺をどうしたいんだと苦笑した。こんな時でもおれはおれらしい。しっかりと笑っているじゃないか。
「カミサマ!もしもアンタに会えるなら!俺とスラさんでお前の眉間をぶち抜いてやるからな!」
カミサマなんているかも分からない。そんなことは考えなかった。
地面と接する瞬間。俺は神に向かって引き金を引いた。願わくば、この弾が神に届かんことを願った。
次回は約一週間後に投稿します。読んでくれてありがとうございました。