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「荒健は何の仕事してるの?」
エレベーターホールに移動した。彼は明らかに年上とみたが、そのグイグイくるチャラさから敬語を使う気持ちにはなれなかった。
「テレビの脚本とか書いてます。バラエティとかコントとか」
ほぅ。東京に来たらこんな職業の人とも巡り会えるのだな。東京はやっぱりクリエイターの宝庫だ。
しかしその時私は、近くで見たらたいしてイケメンでない彼に対して何の感情も抱いてなかった。
三分の一に減った二次会参加者は、新宿の繁華街まで歩いていくようだ。私たちはタクシーできたが、案外歩いてすぐ中心部まで行けるようだ。
荒牧はパーティの常連らしく、みんなを引率しなければならないようで、先頭にいった。
その隙にまた違う男が話しかけてきた。
わたしは当たり障りのない会話をしながら、その男と歩き始める。道の途中、荒牧が戻ってきて、こう叫んだ。
「おい、おまえそれ俺のだからな!手ェだすんじゃねーぞ!」
少しはにかんでしまう。
この強引さは正直危うい。