05
3人で固まり、オードブルをつつきながらぐるっと見渡す。パーティの常連もいるのだろう、集まって親しげに談笑しているグループが、何組かあった。
全体的に落ち着いた雰囲気であったが、どこか大学のサークルのような雰囲気もあった。
早々に白ワインを飲み干した私は、ひとりでドリンスペースに行き、ワインを注ぎ足した。
「そのワインおいしいよね」
そんな風に話しかけられれば、楽しく答えた。さっくり話して、2人の元へ戻ろうとすると、また、別の男ふたりに話しかけられる。
「今日はひとりで来たの?」
「いえ、友達と…」
話に花が咲き、楽しく話す。東京に来てから仕事関係者以外と会話したのははじめてかもしれない。実は少し息が詰まっていた。それは職場の人間関係にでなく、それしかコミュニティを持っていない自分にだ。休みの日に気軽にお茶でもいける、そんな友達が東京にも欲しかった。
それが男とか女とかはあまり気にしていなかった。
なかなか楽しいではないか。そう思って、視線を上げた。遠くに目にとまる男がいた。
スラッとした長身に黒髪の長髪。
独特の雰囲気があった。
主催者は音楽関係の事業をしていると聞いていた。ミュージシャンとかその類だろうか。なんだか気になるその男にたびたび視線を送った。
ふたりの男と話し終えた私は、今度こそ2人の元へ戻ろうとしたが、いつの間にか視線を送っていた長髪の男と数人の男たちに囲まれていた。
この男こそが荒牧健一。
後にこの出会いを何度も思い出しては、出会うべくして出会ったと感じるのである。