庄造とのこと 04
今思い返しても完璧なタイミングだった。
ベンチに腰掛け、マグに入れてきたお茶を飲む。東京で初めて迎える冬は故郷よりも寒かった。ランニングする人たちを眺めながら、庄造のことを考える。
その後庄造は意気消沈し、今までのことを反省したようだ。本当に行くと思っていなかった、遠距離でもいい。別れたくないと。そして、私たちは約束をした。私が33歳になったら地元に帰り、結婚しようと。それまではお互い好きにしようと。好きにするとは、浮気オッケーという意味ではない。思う存分、キャリアを積んでくれという意味だ。
庄造は私の上京準備を手取り足取り、まるで子を送り出す親のようにしてくれた。実家にあるつかわなくなった家電や調理器具、こまごまとしたものをもたせてくれた上に、30万円包んでくれた。 こんな大金貰えないと言っても聞かなかった。
「10万はあげるよ。20万はもっといて。かえちゃん、お金ないでしょ。なんかあった時心配だから。」
そして月に一度、彼の出張を絡めて会いに来ると約束した。彼は外資系保険会社の営業で、営業エリアは自由だそうだ。
出張費こそでないが、そこは2人でしている貯金から切り崩そうという話でまとまった。
遠距離になっても、今までと変わらない頻度で会うというのに、庄造はとても寂しがった。付き合った頃のように、私との時間を作るように努力しはじめた。
近くにいるときは、大事にしてくれないのに、遠くに離れたら大事にしようとする。なんだか腑に落ちない。
しかし、上京して4ヶ月の心の支えは庄造だ。なにかあれば、母より庄造を頼りにしてしまう。
愛はめでたく復活。
と私は思っている。