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「うん」
荒牧が笑いながら答えた。
そっか、気持ちよかったか。それならよかった。いや、よくない。いや、でももう終わってしまったなら仕方がない。覚えてないし、時間は戻せないし…
心の中で言い訳をぐるぐる考えたが、どうしようもない。彼の胸からそっと彼を見上げてみた。
「ふっお前さぁ、ほんと下手なタレントより可愛いね。正直、顔がドンピシャでタイプなんだけど」
下手なタレントを見たことない私は、褒められてるのかなんなのか、わならなかった。
「でも今はまだ顔だけだからね」
ホストか。
「ふっ。一生顔だけでいいよ」
鼻で笑ってやった。これは事故だ。ただの事故。私には大好きな彼がいる。他の男の愛情なんて求めていない。
私の後ろめたい気持ちとは裏腹に、その日は晴天。雲一つなかった。
「天気良いー!今日はどっかいこうかなぁ。ちょっと君いつまでいるの?帰りなよ!」
わざと明るい声で言った。
荒牧は返事もせず、無言で私を見つめた。あっと思った時には荒牧は二回目の行為を始めた。昨日飲み過ぎた気だるさと、彼氏に対する罪悪感と、やたら爽やかな今日の天気がまぜこぜになった。
酔いが覚めた後も彼を受け入れたのはなんでなんだ。