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【箱】短編

愚王が天下を覆せ

作者: FRIDAY
掲載日:2016/03/24

 戦況は、およそ最悪と言えるものだった。戦場には瓦礫といくつもの遺骸の山、部隊はほぼ壊滅だ。

 そんな中、戦火を潜り抜け残骸の陰に飛び込んだ部隊長、『3』の徽章を付けた男が、通信機を起動させた。

「こちらスリィ。状況を確認する」

 抑えた声に、すぐさま反応があった。銃撃の音色を背後に、怒鳴りつけるような勢いで、

『こちらファイヴ、壊滅だ! 残り二人!』

 その怒声を皮切りに、次々と報告が届く。

『シックス、三人だ! だが囲まれた!』

『セヴン、四人だが重傷者多数! 戦線に復帰は困難!』

『こちらナイン、二人だ』

『テン、弾薬が尽きた』

「エイトはどうした!?」

『こちらナイン、エイトは我々の脱出のために血路を開き、八つ裂きに…』

「くっ…階段をかけに行ったイレヴンとトゥエルヴの全滅は、確認済みだ」

 潜伏中のトゥからの応答がないが、こちらも絶望的だと見るべきか。

 やはり事態は最悪だ。

 瓦礫に背を預け、スリィは一服する。深々と紫煙を吸い、肩越しにそれを見る。

 王城だ。高く堅牢な城壁。それを打ち砕き、新たなる旗を打ち立てることこそ彼らの宿願なのだ。だが、

「ちと、苦しいかね…」

 口の端だけで笑む。だが眼光は鋭く、王城の最頂に立つ人影を見据える。

 奴こそが王。打倒すべき宿敵。

『…隊長、俺たち、もう…』

 通信機から入ってきたナインの声に、しかしスリィは強く返した。

「馬鹿野郎が! 諦めるな…俺たちはまだ終わっちゃいない」

『しかし…もう時間も…』

『な、おい、あれを見ろ!』

 弱気なナインを押しのけるように、セヴンの声が響いた。さらには、

『──こちらトゥ、済まない、遅れたが…こちらも確認した。これより反撃を開始する』

 スリィもすぐにセヴンやトゥの見たものを目の当たりにし、深く笑った。

「へっ、ようやくおでましか…待ちくたびれたぜ」

 咥えていた煙草を吐き出し、スリィは雄叫ぶ。

「行くぞ野郎共! ここから先は俺たちの勝ち戦だ! 全力でぶっ壊してやれ!」

 おう、という全員の応答を耳にしながら、スリィは笑う。

 見据えるのは、戦場の中心に立つフォウの四つの背。

 それぞれが手にするのは、クラブ、ハート、スペード、ダイヤという四つの神器。

「そうさ、あれこそが戦局を根底から覆す、伝説の──」


「革命だァァ!」

 真太郎が勢いよく山へ手札をぶちまけた。なに、と全員でそれを覗き込むと、あに図らんや、それぞまさしく四枚の四だった。綺麗に揃っている。

 うわぁ、と啓吾が悲鳴を上げた。

「なんてこった! くっそ、出せる札ねぇし…」

「へっへっへ、思い知れ大富豪。貴様の天下はこれで仕舞いだぜ…!」

 啓吾を除き山を囲む三人が汚い笑みを浮かべる。そして次々と山へ手札を投げていき、なすすべのない啓吾の目の前で全て出し尽くした。

 対する啓吾の手には、幾枚ものカード。何気なく見てみればそれはいかにも強力なものばかりだが、それが全く裏目に出た形だった。

 肩を落とす啓吾に、局面をひっくり返した真太郎がにやにや笑いながら言う。

「都落ちだぜ、大富豪。これからお前は大貧民だ…とりあえず、全員にジュース奢りな」

 く、と啓吾は崩れ落ちた。畜生、と場のトランプを勢い任せにぶちまける。男子うるさい、と委員長から文句が飛んだ。

 昼休みの終了五分前のことだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良い点を三つ挙げますと。 まず第一に、くだらないことを全力でやっているので、非常にコミカルになっている点。 第二に、初めトランプと感じさせないミスリードがしっかりと機能している点。 第三に…
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