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第1話 門下生が欲しくて

その日の昼下がり。


昼食を食べ終えた俺とミネストローネは少しの間ティータイムを楽しんだ。


芳醇な香りと口当たり爽やかな味わい。


美味である。淹れたの俺だけど。さすが俺。


すると突然外が騒がしくなってきた。


「たのもぉぉぉぉ!!!」


「なんだ?」


けたたましい怒鳴り声が響く。


道場破りかなにかですかね~?


ミネストローネを見ると顎をクイッとやり玄関を示す。


何様なのこの子。


俺は渋々玄関に歩を進める。


その途中でドンドンと言うドアを叩く音が聞こえる。


え、超怖いんだけど。ノックの威力じゃないんだけど。ドア壊す勢いなんですけど?!


玄関にたどり着き恐る恐るドアを開く。


するとそこには巨大な肉体を持った厳つい顔面が立っていた。


しばしの沈黙。


すると巨漢な男はスゥーっとこちらにも聞こえるほど大きな音で空気を吸う。


そして一瞬固まったのちに。


「とぅわぅぬぅおぅむおぉぉぉぉぉぉーーーー!!!」


「ぅるっせーー!」





とりあえずこのキン肉マンを客間に通した。


俺とミネストローネと向かい合うようにソファーに座ってもらう。


ここがいつも相談内容を聞く場所となっている。


ミネストローネは先程の余りの紅茶を注ぎ、キン肉マンのもとへそっと置いた。


「サンキューベリーマッチョ!!!」


今のお礼なの?こっちの世界ではこれ当たり前なの?つーかこいつうるせぇ。


「俺の名前はアキト。こっちは」


「ミレイナだ。」


フルネームは告げないのね。そりゃー勇者側とは一応敵対してますもんね。でもこの人魔王側なんじゃね?なんかもう怖いもんゴリラみたいだもん。


「で、今日はどんなご用件で?」


道場破りかと思ったが違うらしい。てかここ道場でもなんでもねーしな。


「私の名はブルドと申す!!!今日ここへ伺ったのは他でもない!!!単刀直入に言えば、我が道場の門下生の減少をどうにかしたい!!!」


は?こいつ道場の師範代だったの?破るというか破られる側の人だったよ。


「貴様の道場はなにを教授しているのだ?」


ミネストローネはあまり興味無さそうに訪ねる。


てか貴様とか言うのやめて。失礼だからな!


「私の道場では武道を教えている!!!すなわち素手での対決を生業とするものだ!!!」


俺の世界でも格闘技なるものがあったのでそれに近いものだろう。


このオッサンはプロレスとかの方がうまそうだけどな。ジャーマンスープレックスとか決めてきそう。


「だがな!!!最近はやれ剣だのやれ魔法だのがさらに人気を博していてな!!!元々あまりスタンダードではなかった武道が最近では廃れて来てしまったのだ!!!」


テーブルをダンダンと叩きながら訴えてきた。


うるさいんだけどマジで。


「まーそーさなー。剣とか魔法が人気なのはこの世界に限ったことではないし。仕方ないっちゃー仕方ないな。俺だってジョブを選ぶなら剣士とかだろうし。」


格闘家や武道家ってこういう世界ではあまり聞いたことないなーそう言えば。


男は真顔だが少し落ち込んでいるように見えるのは気のせいだろうか。


ミネストローネもそれに気づいたらしく俺に食って掛かる。


「貴様なにを言っているのだ!わざわざ言わなくていいことを口にしおって!それにこの世界に限ったことじゃない?まるで他の世界から来たみたいなものいいではないか!」


ミネストローネが横からキーキーと吠える。


こいつもうるさい。


「だからそうだって前に言っただろうが!それにお前も依頼人に向かってその上から目線やめろよ!バカが!」


前に異世界から来た人間だと説明したが、女神のような優しい笑顔で肩をとんとんとされて終わった。


別に痛い子でもなんでもないからな!哀れむんじゃねぇよ悲しくなるだろーが。


「なんだと?!」


「なんだよ?!」


俺とミネストローネはおでこをぶつけ合いにらみ合う。


だがそこで男が急に立ち上がり、こちらに向かって来たと思ったら。


「喧嘩はやめぇぇぇぇい!!!」


凄まじい鉄拳が飛んできた。


「ふぶぐふぁっ?!」


その拳は俺の頬にめり込んだ。


そしてその勢いのまま後方にぶっ飛んでいった。





「いやー!!!すまぬすまぬ!!!加減したんだが、いかんせん力が人並み以上に強いもんでなぁぁぁ!!!」


「……ひょうですか。」


頬が腫れ上がり少し喋りづらくなっている。


痛みがジンジンと伝わり自然と表情が歪む。


そんな俺を見てミネストローネは笑い転げている。こいつ絶対いつかぶっ飛ばしてやる。てゆーかなんで俺だけ殴られたの?


「ひょれで、もんかひぇいのかくふぉをひたいと?」


改めて依頼内容を確認する。


「うむ!!!」


この声量はどうにかならないのか?年がら年中スーザンボイルしちゃってるんですけどこの人。


「なにかいい案はないのか?」


笑い過ぎて涙が出てきているガキが声をかけてきた。


「まず自分で考えるとかしないの?」


「少し考えたが思いつかなかった。」


こいつの少しってどうせ数秒程度だろ。なめとんのか。


「まぁ、他の職にはない武道家の魅力をアピールすればいいんじゃないか?」


一般的に考えればこれが普通の案だ。


だがかなり効果的だと思う。


剣にも魔法にもない魅力。


それはこの男が一番よく知っているはずだ。


男は立ち上がり熱弁を始める。


「武道家の魅力!!!それは肉体をぶつける喜び!!!己の努力を信じ、真っ直ぐ放つ拳は地を割り海を裂き天を貫く!!!そして」


「もういい!わかったから、座れ。」


ブルドは素直に腰を下ろした。


言ってることは凄そうだがほとんど感情論と比喩だったんだけど。魅力とかゼロだったわ。


「そういうんじゃなくて、もっとこう……。武道家は何ができるのかとかそういうのをだな…。」


「己を信じただ真っ直ぐ突き進むのみ!!!」


ダメだ……。話しが通じない。こんなんだから門下生がいなくなったんじゃないか?


「ミネストローネ、お前武ど…。」


そこでミネストローネにキッと睨まれた。


そう言えばミネストローネって言うと怒るんだったな。もういいじゃんミネストローネで美味しそうじゃん。


ここでケンカしたら面倒なので俺はわざわざ言い直した。


「おいガキ、お前武道家についてなにか知ってることないか?」


「それで言い直して解決すると思ったのか貴様は!」


「いやだってミネストローネやなんだろ?だったらもうガキと呼ぶしかないじゃんか。」


「ファーストネームを教えてやった上に呼ぶことを許可してやっただろう!なぜ頑なにミネストローネで貫き通そうとする!」


そこでまたもや額をぶつけ合いいがみ合う。


そしてふたたびブルドは立ち上がる。


そのままのっそりと近づいてくる。


俺らの近くについたらおもむろに拳を振り上げる。


「喧嘩はやめぇぇぇぇい!!!」


だが2度も同じ攻撃が効く俺ではない。


正拳突きを間一髪でよけ、目の前を拳が通過する。


「はっはっはー!甘いなブル」


「うおぉぉぉぉぉ!!!」


言い切る前に鋭いアッパーが飛んできた。


「おぐふぁっ?!」


俺は家の天井を突き抜けていき、周りの泉にバチャンと落ちた。





「いやー!!!すまぬすまぬ!!!一撃目を避けられたらつい二撃目を叩き込みたくなってしまってなぁぁぁ!!!」


「……ひょうへふか(そうですか)。」


顔は先程よりさらに腫れ上がり、目を当てられないほど歪んでいた。


まさかあそこで昇龍拳が飛んでくるとは思わなかったよ?あんたはキン肉マンじゃなくてリュウだったんだな。おかげでさらに喋りにくくなったぞ。つーかなに?なんでまた俺だけなんですか?そこで抱腹絶倒してるガキにはやらないんですか!


「で、話しの続きだけど。お前武道家についてなんか知らないか?」


もはや笑い過ぎて大号泣しているミネストローネに話しかけた。はいはい面白いねー。


「え、えっとだな。ふふ、武道家、というふふふ、のは、あはははははは!」


「いつまで笑ってんだよ!」


完全にツボに入ってしまったらしく、話そうとしても笑いが遮ってしまう。


おいこいつ失礼すぎるぞ。心配とかしてくれないの?めちゃくちゃ痛いんですけど。


ミネストローネはひっひっふーと呼吸を整える。お前は妊婦か。


ようやくおさまってきたところで話し始める。


「そもそもジョブというのは様々ある。剣士に魔導師、格闘家とその他もろもろの中から一つ選ぶのだ。そしてジョブを選べば勇者になれるということだな。」


ミネストローネは滔々と説明する。


「それって誰でもなれるのか?」


「例外はあれど、基本は誰でもなんにでもなれる。」


「ふーん。てかなんでお前そんなに詳しいの?」


この人魔王の娘さんでしょ?なんで勇者事情を知ってるの?


「こんなの常識の範疇だ。人間のくせにそんなことも知らないとは……。まさか貴様……!」


ミネストローネは驚愕の表情を浮かべる。


お?これは俺が異世界人とわかってもらえた感じかな?無知という理由で気づかれるなんてまことに遺憾だが…。


「本物のポンコツだったのか?」


いや、だいたいわかってたよ?そんな気がしてたんだよまったく。こいつはほんとろくなこと言わねぇな。


「ちげぇよアホが。」


ふてぶてしく呟く。


「安心しろ。普通はなんにでもなれるけど貴様ごときではなににもなれないだろうからな。」


ミネストローネはふふんと小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。


「その言葉でなにを安心しろっつーんだよ。それに俺は職がないのが職みたいなもんだからいーんだよ。」


ミネストローネはきょとんとした表情に変わる。


そう、俺は全てを悟り社会とフェードアウトしたものだけがなれる伝説の職業。ザ・ニートというジョブを持っている!


こんな考えをしていて自分で恥ずかしくなってきた。あー、これは哀れまれても仕方ないわ。つか生前も今も一応無職じゃなかったわ。


「で、話しの続きだ。武道家っつーのはつまり格闘家のことだろ?」


「そうだな。」


ミネストローネは一つ頷く。


とりあえず素手で戦う系はだいたい格闘家という枠に当てはまる。


格闘家の幅は広いのに人が集まらないのはやはり絶対的人気を誇る二つの職業があるからだろう。


だが、人気がないということを逆手にとることが出来ればいいということだ。


「格闘家の特徴は?」


「それはだなぁぁぁ!!!」


今まで黙っていたブルドがここぞとばかりに声をあげた。


「すいませんブルドさん少し落ち着いてというか黙っていてください!」


俺が言うと少し不服そうだがドサッと座った。


「態度でか子。お前格闘家の特徴とかわかるか?」


「貴様は一々私を貶さないと気がすまないのか?」


「それはお互い様だな。まあ割合的には百対一くらいだけど。あ、もちろん俺は一の方な。」


「貴様の方が私よりよっぽどバカにしてるだろ!」


「それは言いがかりってやつだ!いつ俺がお前をバカにした!」


「貴様このごに及んでしらばっくれるつもりか!というかさっき思いっきりバカがとか言っていただろう!」


二人は三度ケンカを始める。


だがもう俺はここで察していた。


はい、ブルドさん立ち上がりました。そしててくてくと歩いてきて、その場で拳を振り上げましたここで勝負!


「喧嘩はやめぇぇぇぇい!!!」


ここで飛んできた右ストレート。


これを首だけ動かしかわす。


飛んでくる方向などがわかればあとはなんとかなるもんだ。


それに加えこの人は加減をしているようだから威力はあっても速度はさして速くない。


ならば避けることもギリギリできるということだ。


「うおぉぉぉぉぉ!!!」


その勢いのまま左アッパーがブルドの脇から飛んでくる。


だがここでバッと全力でソファーから飛び退く。


左アッパーはフォンっという音で空気をさくだけで何にも当たらなかった。


「よし!これで俺のか」


「てぃやあぁぁぁぁ!!!」


ブルドはそこからもの凄い速度で半回転してきた。


そして勢いよく腕が俺の方へ迫ってきた。


「ぐぉふぁっ?!」


俺はそこで宙を何回転かしたのちに床に叩きつけられた。





「いやー!!!すまぬすまぬ!!!二撃目まで避けられると維持になってどうしても当てたくなってしまうのだ!!!」


「…………………。」


もはや何も言えない。


あそこからラリアット決めてくるとか、もうガチだったじゃん。俺に攻撃当てんのに意外に必死かよこのオッサン。てかなんでまた俺だけなの?おかしいんですけど?!


ミネストローネは笑い過ぎてもはや声も出ないようだ。呼吸困難のままでいてもらった方がかえって静かな気がする。だが不快なのには変わりない。あとでこの究極の三コンボお前にも味わわせてやろうか?


「笑ってないで早く教えくんない?」


「そ、それがふふふふ、人に頼むとふははきの、態度かあははははは!」


「それが人の話しを聞くときの態度か?」


またもや笑いが止まらなくて言葉を上手く紡げない様子のミネストローネさん。ほんっとよく笑うな。笑い上戸なの?アマゾンで人型笑い袋として売りさばいてやろうか。


「もういいから、わかったから、話し進まないから。」


ミネストローネは深く深呼吸をして気を鎮める。


「格闘家の主な特徴は物理攻撃と物理防御が高いところと、ふっ、何の武器も持たないかふふふ、ら個人差はあれ身軽で動きやすいというところだな。」


ミネストローネはしっかりと説明してくれた。だが真面目には説明していない。


こいつ思いっきり途中で笑ってたよな?深呼吸をしたんだからもうそこで笑い終われよ。そんなに俺がやられている様は面白かったですかそうですか。


「じゃあそれを基本的なベースとするか。」


「何のだ?」


「求人の売り文句だよ。いや、この場合求人文句って言うのか?まあいいやどっちでも。」


門下生を募るという目的。


そのために必要な情報を集める。


否、もうすでに集め終わった。


あとは人間の習性に任せるしかない。


「で、武道家の最大の求人文句。それは。」


「それは?」


「すぅおぅれぇいうわぁぁぁぁ?!!!」


二人は俺の返答を促す。


冗談抜きでうるさいんだけどこの人。


「人気がないことだ。」


「は?」


ミネストローネはきょとんと首をひねり、ブルドは真顔のまま止まっている。


要領の得ないという表情だ。


このときは吠えないんだねーブルドさん。偉い偉い。というか吠えるの前提で話しを進めるのは間違っているだろうか…。略してほえまちだな。


「人っていうのは常に特別を求めてるんだよ。それは期間限定やら数量限定など具体的なものもあるが、もっと単純なものがある。」


二人ともまだわからないようだった。


いやー、かなりわかりやすいと思うんだけどな~?


「ようするに、他人にはなく自分にだけある特別なもの。基本そういうのが人間は好きなんだよ。」


そこでミネストローネは手のひらをポンと叩いて合点がいった様子。


ブルドさんは……。まだっぽいな。うん。


「それをふまえると、人気のない職=人が少ない。その職業自体の人数が少ないということだ。それになれば、バカにされたりもするかもだけど特別感があり愉悦に浸れる。それに人気職だとよく人に比べられたりして嫌な思いをすることがあるだろうしな。人気がないと言っても、どんな職業も適材適所なはず。例えば剣士でも魔導師でも対応できない相手が現れたとする。だがその敵は格闘家と相性抜群だ。そこでその敵を格闘家が見事に打ち倒したりすれば、格闘家がいてよかったと周りに思われるし何よりカッコいいだろ?」


俺の説明にわずかな沈黙が流れる。


その後二人からおおお!とぅおおおおおおおお!!!!という歓声が飛んでくる。


いや、これぐらい誰でも思いつくんじゃないの?この二人はバカなの?


「これを思いっきり売り出せば門下生は何人か集まるんじゃないか?」


「うおぉぉぉぉぉぉ!!!心のっ!!!友よ!!!」


ブルドはこちらに凄い勢いで向かって来て俺をガシッと抱き締める。


いや、これはもうホールドに近い。


声出せねぇ苦しい死ぬ息ができんあばら骨みしみし言っとるがな!ちょっ、誰か!


ミネストローネを見やって、心でSOSを出す。


だがミネストローネは視線を逸らし、にやりとした表情でふっと笑ってそれきりだった。


このガキゃぁぁぁぁ!


「うおぉぉぉぉ!!!こうしてはいられん!!!今すぐにでも売り出しに」


言いながら俺の胸ぐらを掴み高くあげる。


ほんともう無理です限界です勘弁してください。


「ぅいくぅわぬぅわくぅとぅぇわぁぁぁぁぁぁ!!!」


そのまま俺を全力マックスパワーで投げ飛ばした。


「なんでだぁぁぁぁ!!!」


明人は空の彼方へ飛んで行き、一粒の星に変わった。





後日、一通の便箋が届いた。


そこにはでっかく感謝状と書かれていた。


いや、この折り方は果たし状なんだけど…。


それをリビングで丁寧に開いていく。


「だれからだ?」


ミネストローネが横から覗きこんでくる。


「さあ?」


開ききったところでブルドと書かれているのが見えた。


「アキト殿。ミレイナ殿。先日はお世話になった!!!まずアキト殿に謝らなければならんな!!!いやー!!!すまぬすまぬ!!!興奮のあまり投げ飛ばしてしまった!!!」


殿付けで人のこと呼ぶのね。あんなに話したのに初めて知ったわ。それよりこの人手紙でもうるさいんだけど。てかすまぬとか言っておきながら度々暴力ふってくんのはなんなの?反省してないの?俺になんか恨みでもあるのでしょうか?


「あのあとそのまま道場に一直線に行こうと思ったのだが、そこでミレイナ殿に呼びとめられてな!!!アキト殿が述べた求人文句を簡単に紙に書いて渡してくれたのだ!!!」


ミネストローネはふふんと得意気に鼻を鳴らす。


お勤めご苦労様でーす。


「それを元にチラシ配りや貼り紙などを行ったのだ!!!するとなんと十七人も集まってくれたのだ!!!」


おお、と感嘆の声をもらす。


正直そこまで集まると思わなかったわ。これもブルドの努力の賜物だな。


「そして前にやめた門下生達も数人戻ってきてくれたのだ!!!だが彼らはやめたのではなく療養していたらしい!!!」


俺とミネストローネに嫌な想像がよぎる。


熱血指導のしすぎでケガを負わせてしまったのかとハラハラしていたが、実際は違った。


「なんでも、私の声が大きすぎて耳がおかしくなってしまったようでな!!!まったく面白いことをいう弟子たちだ!!!」


そっちかーい。それ冗談じゃなく本気で言ってるんですよ師匠。気づいてあげて!


確かにあんな声を長時間長期間聞いていたら耳に異変が起きてもおかしくない。


「とにもかくにもこれで万事解決!!!」


いや、してねぇだろ。その調子でいったらまた生徒たちがいなくなっちまうぞ?


「心から感謝申しあげる!!!ブルド!!!!!」


自分の名前のところが一番うるせぇ。文字なのに見てるだけで騒々しいんだけど!


「まぁ、解決でいいんじゃないか?」


ミレイナが済ました表情で問いてくる。


「お金は?ちゃんともらったか?」


「ああ、もらった。まったくそういうところはしっかりしてるのだな。」


ミレイナは呆れてため息をつく。


「こっちも一応商売だからな。それにその言い方だとまるで俺が普段しっかりしてねーみたいじゃねーか!」


「そうだろ?」


裏表のない平然とした顔で告げられた。その表情で言われんのが一番きずつくんだよなぁ。


「それより早く返事を書かんとな。」


「そうだな。」


この感謝状に対して、一言だけ添えて返事を返した。


声量をどうにかしろ、と

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