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第2声

「御依頼を伺いましょうか」


 男は渡来と名乗る男の変貌ぶりに呆気にとられた。目の前で微笑むこの男が先ほどまで会話を交わしていた人物とは別人である、と事前に告げられていたならば鵜呑みにしていただろう。


「ええ、よく言われます。ON・OFFの切り替えが極端だって」


 笑みを崩さずに渡来が答える。完璧な営業スマイルだ。どこか品の良さを感じさせる笑顔。それを粗暴そうなーーいや、だったというべきかーー青年が作れるものなのか。

 男は戸惑いを隠すようにカップを傾けて、ようやくそれが空である事に気が付いた。


「どうぞ」


 二杯目のココアが湯気をたてていた。

 男は無言でカップを傾けながら悟った。


(この青年、狐の化生(けしょう)か)


 化生──人ならざるモノ。真の姿形は勿論、人とは異なる力を持つ者。


 渡来は実に愉快そうに男を観察している。


「いやぁ、申し訳ありませんでした。空になってるのにも気が付きませんで」


 男はその言葉が嘘だと直感的に悟った。二杯目の用意があった事がそれを裏付けている。


(これが客に対する態度というのか)


 男は眉根を寄せて不快感を(あらわ)にした。が、渡来は目を細めて『そんなに睨まないで下さい、軽いジョークですよ』と悪びれる様子も無い。


「さ、本題に戻りましょうか」


 後に男はこの時の事を振り返り、こう語った。





『もし、ココアが無かったら絞め殺していたかもしれない──』






 二杯目のココアを一口で飲み干すと、ココアではなく珈琲だった。






『──だから半殺しにしてやるつもりだ』





と。

 渡来良心(わたらいりょうしん)という青年は銀プレート(研修中)相談役(アドバイザー)である。

 彼が銀のネームプレートを手にしてから既に1年と2ヶ月が経過していた。


ありがとうございます。

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