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冬至のカボチャ

作者: ヤナ

子どもへの読み聞かせをイメージしています。

なので問いかけの文が少しあります。

苦手な方はご注意ください。

冬至


ある冬の日のことです。

山の麓にトウジ君という男の子がいました。

トウジ君にお母さんは言います。

「トウジ、おじいさんのお家からカボチャをもらって来てくれない?」

「えー、寒いし行きたく無いよ。」

トウジ君は嫌がります。最近めっきり寒くなり、手袋をしていても指が冷たくなるくらいです。

でもトウジ君はカボチャが大好きです。だって野菜なのに甘いんですもの。

「お願いトウジ。今日はカボチャを食べないといけないの。お夕飯には、おじいちゃん達も来るのよ」

トウジ君はしぶしぶおじいちゃんのお家に行くことにしました。


「いってきまーす。」


「いってらっしゃい。

おじいさんの家の向こうの森には入ってはいけませんよ。」


おじいさんの家に着くと、おばあさんが迎えてくれます。


「おつかいかい?偉いねぇ。

あいにくおじいさんは山にゆずを取りに行っていないんだ。カボチャは家の裏にあるから持って行っておくれ」


トウジ君は家の裏に行きました。

するとそこには三匹のサルがカボチャを盗もうとしていました。


「おい、カボチャを返せ!」


トウジ君が怒ると、サル達はビックリして、ひとり一個ずつカボチャを持って逃げて行きました。


「おい、待て!」


トウジ君は追いかけます。

サル達は森の中に逃げて行きます。

トウジ君は立ち止まりました。お母さんから森に入ってはいけないと言われましたからね。

でも、このままではカボチャは盗まれたままです。トウジ君はカボチャを取り返すため、森に入って行きました。

サル達は止まりません。トウジ君は必死に追いかけます。


とうとうサルのお家まで追い詰めました。サル達のお家はリンゴの木の上にあって、赤い実がたくさん成っていました。

「さあ観念しろ。カボチャを返せ!」

トウジ君は大きな声で言いました。

サル達は黙ったまま、返そうとしません。

トウジ君が近寄ろうとしたその時、サル達のお家から声がしました。


「どうしたの?お客さんなの?」


ドアの向こうから女の子の声がします。


「だ、だめだろ寝てなくちゃ。風邪が治らないぞ。」

「そうだ大人しく寝ていろ。」

「今、兄ちゃん達が美味しいカボチャのスープを作ってあげるからね」


三匹のサル達は口々に言いました。ドアの向こうには三匹よりも顔を赤くした、小さいサルの女の子がいました。

どうやらサル達は風邪で熱を出した妹のサルのためにカボチャを盗んだようです。


「だけどカボチャを盗むのは悪いことだよ。きちんとお金を払わないとダメだ。」

「でも、お金を持っていないんだ。」


サル達はシュンと反省しました。悪いことだとわかっていたのです。そこでトウジ君は言いました。


「じゃあ、そのカボチャ一個とそこに成っているリンゴを交換しよう。僕だと手が届かないから、君たちが取ってきてくれないか?」


サル達はホッと安心しました。これで妹の風邪を治してやれます。

サル達はスルスルと木に登り、たくさんのリンゴをとってきました。

サル達はお礼にリンゴとカボチャを持ち運ぶバスケットをくれました。たくさんのリンゴにカボチャはあと二個もあるので、とても助かります。


「リンゴとバスケットをありがとう。

でも、どうしてカボチャが欲しかったの?」

「知らないのか?カボチャを食べると風邪をひかなくなるんだ。」

「それにとっても甘くて美味しいよ。」

「スープで食べると美味しいんだ。」


トウジ君はサル達にさようならと挨拶して、家に帰ることにしました。


森の中は薄暗くて、道もくねくねと曲がっています。行きはサル達を追いかけていましたけれど、帰りは一人です。


ガサガサ ガサガサ


「だ、誰かいるの?」


返事はありません。どうやら風に吹かれた草や木の音のようです。


トウジ君は緊張しながら森を進みます。

森はどんどん暗くなり、道も草が生えて歩きにくくなってきます。キョロキョロと周りを見ながら、ゆっくりと進みます。


ガサガサ ガサガサ


「だ、誰かいるの?」


返事はありません。今回も風に吹かれた草や木の音のようです。


トウジ君は怯えながら森を進みます。

日光は森に遮られ、どこが道かもわからなくなってきました。トウジ君は迷子になってしまいました。サル達のところへ戻る道もわかりません。


ガサガサ ガサガサ


「うわっ」


森からイノシシの夫婦が出てきました。危うくトウジ君にぶつかるところです。余所見は危険ですね。


「おやおやおや、こんにちは。すまないね、食べ物を探して余所見していたよ。」

「あらあらあら、本当に危なかったわ。怪我はない?それにキミはこんなところでどうしたの?」


トウジ君はイノシシの夫婦に迷子になったことを伝えました。夫婦は道を案内してくれるそうです。


「ありがとうございます。助かります。」

「いやいやいや、お安い御用さ。」

「そうそうそう、気にしないで。」


トウジ君は夫婦と一緒に歩いて行きます。


「ふんふんふん、何か美味しそうな匂いがするね。」

「くんくんくん、そうね。いったい何かしら?」


夫婦はトウジ君の持つバスケットの匂いを嗅いでいます。トウジ君は中身を見せました。


「「カボチャだ!」」


夫婦はトウジ君にカボチャを分けて欲しいと頼みました。


「カボチャは今日の夕飯に食べるからダメだよ。リンゴならいいよ。」

「果物は持ってるんだ。カボチャは2個あるじゃないか。一個くらいいいだろう?」

「ダメだよ。カボチャはお父さんもお母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも食べるんだ。足りなくなっちゃうよ。」

「なら私たちの果物と交換しましょうよ。カボチャも一個の半分ならいいでしょう?」


トウジ君は悩んだあと、交換することにしました。夫婦からは干しブドウを貰いました。バスケットにはカボチャ一個と半分、リンゴと干しブドウが入っています。イノシシの夫婦もカボチャを貰ってご機嫌です。


「カボチャをありがとう。今日は冬至だし、カボチャサラダを食べたいなぁ。」

「カボチャをつぶして、干しブドウも入れましょうね。甘くてねっとり、美味しそうだわ。」


話していると大きな道に出ました。

ここから家まではまっすぐだそうです。トウジ君はもう一人で帰れますとイノシシの夫婦にもう一度お礼を言ってお別れしました。


トウジ君はまっすぐ進みます。

すると、楽しそうに歌う鳥達が一緒に遊ぼうと声をかけてきました。

でもトウジ君は寄り道したくなるのをぐっと我慢して断りました。鳥達はまた今度遊ぼうねと言ってまた歌いはじめました。


トウジ君はまだまだ進みます。

すると、ドングリのコマで遊んでいるネズミ達が一緒に遊ぼうと声をかけてきました 。

今度もトウジ君はぐっとガマンして断りました。ネズミ達はまた今度遊ぼうねと言ってまたコマを続けました。


トウジ君はとぼとぼ進みます。

歩き疲れて、力が出ません。

とうとう立ち止まってしまいました。


トウジ君は近くの倒れた木に腰かけ、休むことにしました。

空を見上げると先ほどの鳥達が歌いながら飛んでいます。

お腹も空いてきて、動きたくありません。

トウジ君は貰った果物を食べようと横に置いたバスケットに手を伸ばしました。

バスケットの周りには先ほどのネズミ達が鼻を集まっていました。

ネズミ達もお腹が空いたのでしょう。鼻をクンクンと鳴らして、口にはヨダレが溜まっています。

ネズミ達はバスケットの中身を分けて欲しいと頼んできました。でも皆で食べるには足りません。どうしようかと考えます。一番大きなネズミが言いました。


「そうだ、僕たちのお家においでよ。お母さんにお菓子を作ってもらおう!」


近くの洞穴がネズミ達のお家でした。ネズミのお母さんは笑顔で受けてくれました。トウジ君はテーブルの上でバスケットのなかみをだします。

サル達から貰ったリンゴに、イノシシの夫婦

から貰った干しブドウ、そしてーー


「「「カボチャだ!」」」


ネズミ達は大喜びです。でもこのカボチャは大切な今日の夕飯の材料です。そう伝えると半分に切られたカボチャだけでも、とお願いされました。半分だけなら、とカボチャをわたします。残りはカボチャは1個です。


「このカボチャにクリームチーズを入れて、タルトを焼きましょう」


ネズミのお母さんはカボチャをふかして、潰して、砂糖と一緒にクリームチーズを混ぜていきます。そこへ刻んだリンゴ、干しブドウを入れ、タルト生地へしきつめます。

タルトがオーブンで焼きあがる間、美味しいカボチャタルトを想像して、皆そわそわと落ち着きがありません。バターの優しい匂いと、生地の焼ける香ばしい匂い、さらにカボチャの焼ける甘い匂いが鼻からお腹を刺激してお腹はもうペコペコです。


焼きあがったタルトは本当に美味しくて、疲れもすっかりなくなりました。

「ごちそうさまでした。とても美味しかったです。ありがとうございます。」

「こちらこそ美味しいカボチャをありがとう。」

「「「ありがとー。」」」


トウジ君はお礼を言ってネズミ達とお別れしました。バスケットの中身はカボチャが1個だけ入っています。


とうとう森を抜け、おじいさんの家に戻ってきました。山にゆずを取りに行っていたおじいさんも戻ってきていました。

トウジ君はおじいさんからゆず湯用のゆずも貰って、家に帰ります。


「おじいさん、ゆずをありがとう。夕飯は美味しいカボチャ料理だから楽しみにしていてね。」


夕飯の約束をして、家に帰ります。

家に着くとお母さんが待っていました。


「おかえりなさい。カボチャは貰ってきてくれた?」

「うん。ゆずも貰ったよ。」

「えらいわねぇ。きちんとお礼は言った?」


トウジ君は頷きます。きちんとお礼に『ありがとう』と言いましたよね。


「夕飯に何が食べたい?このカボチャで何たべようか?ごはんの後はゆず湯にはいりましょうね。」


トウジ君は何を食べようか考えます。

甘くて身体がポカポカ温まるカボチャスープにしようか、ねっとりと口に広がるカボチャサラダかな。もう一度カボチャタルトを食べてもみたいな。

悩んで中々決まりません。


君は何が食べたいですか?

今年の冬もカボチャを食べて元気に過ごしましょう。


おしまい

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