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赤毛の鬼人と隻腕の悪魔

倉庫に踏み入った途端目に飛び込んできた光景に、一瞬足が止まった。


瞬きにも満たない時間。


けれどそれは、致命的にもなり得る一瞬。


相手に害意があったなら、無傷では済まなかっただろう。


気配で、中に人がいるのはわかっていた。


怯え縮こまったそれとは違う。

荒々しく猛った気配が、いくつも息を殺して潜んでいるのも。


なにもかもが予定通り。


昼間、たろが騒ぎを起こしたのは、敵を一ヶ所に誘き寄せておくためだ。


この手の輩は、自分たちに楯突く不届き者がいるとなれば、面子にかけて叩き潰しにくる。


ならば、派手に面子を汚してやればいい。


ミカを連れて帰っただけで、現にこうして自分を刺しにきた。


だったら、もっと派手にやらかそう。

総出で叩き潰しに出てきたくなるよう、仕向けよう。


新参者ならばなおのこと。


力を誇示するために、面子に泥を塗られて引き下がりはしないだろう。


わざと目立つ騒ぎを起こして。

目的は、拐われたミカの仲間たちであると言いふらして。


そうしたらきっと、いろいろな手間が省ける。


刺された傷が再生する僅かな間に、たろはそう考えたのだそうだ。


長年荒くたい商売で糊口をしのいできただけのことはある。


普段は馬鹿でも、仕事面では頭が回る。



ただ想定外だったのは――……。



ガランと広い倉庫の中並ぶ、いくつもの猛獣用の檻。


中に入っているのが本物の猛獣ならば、まだ違和感なく見れた光景だったかもしれない。


だが、無骨な檻の中に押し込められていたのは――……。



裸同然の格好で鎖に繋がれた子供たちだった。



ヒクリと、頬の筋肉が痙攣する。



鼻先に突きつけられているベレッタのせいなどではない。


そんなもの、常日頃から見慣れてる。


オレの腰にも出掛けに一挺、ぶら下げてきた。


よくある銃だ。

気にもなりゃしない。



身体が小さく震えて止まらないのは――……静かに沸きあがってくる怒りのせいだ。



「おやおや。勇ましく乗り込んできた割りには可愛らしい。震えているじゃないか」



なにをどう勘違いしやがったのか。


オレに銃を突きつけている男の隣で偉そうにふんぞり返っていたオヤジが、ニヤニヤといやらしく笑う。


銃を突きつけたくらいで勝った気になりやがって。


銃を突きつけてんのはあんたの部下で、あんた自身じゃないだろうよ。



オレなら、自分自身と――……半身にも近しいたろ以外、信用なんてしやしない。



他人なんか、当てになるもんか。



「『隻腕の悪魔』などと厳めしい二つ名で呼ばれているというから、どんな風貌をしているのかと思っていたら……。『悪魔』ではなく、『小悪魔』の間違いだったようだな」



肥え太った醜い指先が、オレの頬をうっとりと撫でる。


ああクソッ。

まあたこのパターンかよッ。



「気安く人に触るな!」



フルリと頭を振り、脂ぎった指先から逃れる。


ベレッタが額のど真ん中に据えられたが、構うものか。

脅しだけの、殺気の欠片すら込もってない銃なんぞ、怖いもんかよ。



それに――……。



「透き通るような白い肌だ。手触りもいい。髪も瞳も漆黒というのは、今時逆に珍しい……。これは、なかなか高値で売れそうだ」



――……ほらな。



はじめっから、品定めするような目をしてこっちを見てやがったんだ。


絶対、『商品』扱いされると思った。


この手の扱いを受けるのは、これが初めてでもない。


どちらかといえば、日常茶飯事。


と、いうよりゃほぼ恒例。


ピキリと、こめかみに血管が浮く。


どいつもこいつもふざけやがって。

どこをどう見たら、オレが『愛玩用』に見えるんだ……ッ。



「蓮ちゃん!」



複数がかりで押さえつけられているたろが、悲痛な声でオレを呼ぶ。


わかってるよ。

逆らいやしない。


子供たちの安全が優先だ。

ちゃんと我慢するさ。



――――……どうせ、たいした時間じゃないしな……。



値踏みする視線を避け、フイとそっぽを向く。


脂ぎった指先が、再度オレに触れようとした、その直前。





「ニャオォ〜ン!」





高らかに、澄んだ咆哮が倉庫内に響き渡る。


朗々と尾を引いて、誇らしげに響く声。


躊躇いなんぞはありゃしない。



「偉いぞ、ミカ!」



反射的に身を屈め、腰に吊るしたベレッタを抜く。



ほんの一瞬。



優劣をひっくり返すには、そんだけありゃじゅうぶんだ。



視線もくれず、声に向かって銃弾を放つ。


相手は魔人だ。

要求された弾丸をくれてやりゃ、後は自分でなんとかするだろ。



金属同士のぶつかる音と、固いものが壊れてはじける破砕音とが、銃声に続く。



怒号と悲鳴。


そして、一拍おいて続く、連続した銃声。



だがもう遅い。



「たろッ」


「あいあい」



呼び声に応じ、床に臥していた赤毛の鬼人が、己が身を押さえつけている人間をものともせずに立ち上がる。



片手にひとりずつぶら下げ、鈍器代わりに大きく振り回してはぶん投げる。


怪力を誇る、鬼人ならではの力業だ。


手当たり次第ちぎっては投げの大立ち回り。


こうなってくると、相手は迂闊に銃も使えやしない。


下手すりゃ、たろに振り回されている仲間に当たるどころか、盾に使われちまう。


鬼人との肉弾戦なんぞ。

オレならごめんだ。


人数差に怯むことなく人垣に突っ込んでゆく赤毛の鬼人。



後はもう、阿鼻叫喚の嵐のみ。



オレも負けてはいられない。

子供たちの檻へ向かって走りつつ、障害物を的確に排除していく。



「蓮くん、おっそぉい」



女の艶かしい声が、不意に耳元へと落ちる。


媚びを過分に含んだ――……残念なことに、いやと言うほどよく知っている声だ。



高々と響いた咆哮の主。

猫の獣相を持つ古馴染みだ。



「喧しいわ。いつからいた」



姿形だけならミカとたいして代わり映えしないが、この女。

これでオレよりかなりの年上だ。


魔人には時々、こういう成長の遅いのがいる。


外見に騙されたら大間違い。

幼いナリして、確信犯的な悪女である。


つるりんぺったんなセミヌードを惜しげもなく晒しているだけでも、その性質がわかろうというものだ。


器用な奴め。

オレの放った銃弾で、足枷を繋ぐ鎖を砕いたのか。



「えーとね。ミカちゃんをコタくんの元へ送り届けてすぐ?」



足に絡んだ足枷の残骸を武器にし、平然と大の男を蹴り倒して優雅に微笑む女の。



「…………ブン屋。テメ、巻き込んだな……」



その幼い顔を、まじまじと見下ろす。



「あらん。だって。巻き込んでも死ななさそうな知り合いって、他にいなかったんですもの」



可愛らしい顔をした悪女が、あっけらかんと嗤う。


ったく、質の悪い女だ。


とはいえ、そこは持ちつ持たれつ、お互い様だ。


今回は、コイツのおかげで懐が随分と潤った。


無断で巻き込みやがった件に関しては後でクレームをつけてやるとして。



「れんちゃん!」


「ミカ!」



走り寄ってきた少女を胸に抱え、物陰に隠れる。


すれ違い様、ベレッタは予備の弾ごとブン屋にくれてやった。


本職は新聞記者らしいが。

情報屋を兼業でやってるんだ。

銃火器くらい扱えるだろう。



「よくやった。偉いぞ」



倉庫に進入する直前。

たろを盾にしたとしても、やっぱり一緒に入るのは危険だろう、と。


いくつかの小道具を与え、ほんの少しばかりの指示をして。

ミカとは別行動をとることにした。


要は、ミカの仲間を無事に取り返せれば、それでいいのだ。


騒ぎを起こすのはオレとたろで引き受ける。


おまえは仲間をこっそり逃がせ。


そう言い含め、渋るミカを、コンテナの影に隠して置いてきた。


安全な場所に置いていく、ただの口実のつもりだったんだが。



予想外の大活躍だ。



悲痛な声でたろに名前を呼ばれた時、目の端にミカを見た。


真剣な顔をして、獣の獣相を持つ魔人ならではの能力を存分に発揮し、物音ひとつたてずに物陰を走り抜けた小さな人影。


手にしっかりと握っていたのは、オレの渡した十徳ナイフだ。


これでロープを切って逃がせ。


そう言われたのを実行しようとして、うまいことブン屋と鉢合わせできたらしい。



ブン屋こと音子(ネコ)―…たぶん偽名だ―…なら、ナイフひとつあれば、檻くらいは簡単に開けてのける。


半裸だってのに、嬉々として暴れ回ってやがるし。


たろは――……いつも通り、手加減を知らないのかと突っ込みたくなる勢いだ。



ドンパチは、任せておいても大丈夫だろう。



予備に持ってきた銃……グロッグを引っこ抜き、順ぐりに檻の鍵を破壊する。


子供だとはいえ、魔人だ。

強固な檻から出れさえすれば、自分の身の面倒くらいはみれる。


わらわらと檻を飛び出し、互いの能力を駆使して、手枷足枷を外しはじめる。


やっぱりな。


檻のせいで諦めてただけで、あんなちゃちい枷。

魔人を戒めておけるほどのもんじゃない。



「かのんちゃん!」



いくつ目のかの檻の鍵をぶち壊した時。

オレの後をついて、せっせと扉を開ける手伝いをしていたミカが、歓声をあげる。


ようやくお仲間に巡り会えたって顔だ。



「ミカ!」



飛び出してきた子供たちが、ひと固まりになってもつれ合う。


感動の再開は後にしろと言いたいところだが――……。



どうやら、そんな暇はないらしい。


反射的に腕を振り上げ、殺気のこもった一撃を受け止める。



バキン! と。



金属の破砕する音が、振動となって腕を伝わる。



振り上げたのは、左腕。



グロッグは、利き腕である右手の中。




――――……と、いうことは……。




破砕音の出所を理解するまでが、数瞬。

血の気が一気に引いたのは、一瞬。




「こ……ぉんの、駄犬があッ!!」




理解が及んだ途端。

頭の奥で、プツリとなにかのぶちギレる音がした。


たぶん、世間一般にいうところの、理性とかいうヤツだ。


振り上げたのは、左腕。


んでもって、オレの左腕は――……機械仕掛けの義肢である。



破砕音の出所は――……確かめるまでもない。



左腕に食らいついているのは、成人した獣人だ。


思わず罵倒し、力一杯コンクリートの床に叩きつける。


頭から思いきりよくコンクリートに叩きつけられれば、丈夫が取り柄の魔人でも、脳震盪くらいは起こす。


目を回した駄犬が身を起こそうともがくのを踏みつけ――……。



「こないだッ、換えたッ、ばっかのッ、新品をッ、テメエはよッ」



グロッグに残っていた弾を全弾、急所を外して撃ち込む。


ガキどもに感謝しろよ、テメエ。

教育上よろしくないから手足で済ませてやったってだけでッ。


誰も見てなきゃ、「ひと思いに殺してくれ」って目にあわせてやったものを!


こないだ修理したばっかだってのにッ。

特別製の義肢は、洒落にならねえほどクソ高いってのにッ。


バカ犬が!


魔人のくせして人間にしっぽ振って、同族売ってんじゃねえぞ。


これだから、犬の属性を持つ獣人は始末が悪い。

なついた相手の善悪なんぞ、まるで考えてやしねえ。


あー……クソッ。


腹の立つ!



命じられるがまま従う馬鹿みてえな習性があんなら、なつく相手くらいは選びやがれってんだ。


予備の弾もなくなったグロッグを懐にしまい、腿につけていたククリを抜く。



大きく湾曲した部分の下側に刃があり、ふるうと自然と全体の重みが刃にかかり、目標物を軽く切断できる優れものだ。


つまり、片手のオレでも、軽々と扱える。



「っきゃあ〜ッ! コタくんコタくんッ。蓮くんが刃物に持ち換えた〜ぁッ!!」


「ぅええッ?! なんで……あぁッ。左腕ッ左腕ッ。音子ちゃんヤバい。アレ、オレがこないだ壊して修理ばっか!!」



ククリを構えたオレに気づいたのだろう。

嬉々として暴れていたふたりが、大慌てで身を翻す。


――――……失礼なヤツらだ。


自慢にもなりゃしねえが。


ガキの頃、親に売られて傭兵部隊いた。


白兵戦ならお手のもの。


飯炊き係りに買った子供が小器用だってんで、暇潰し代わりにいろいろと仕込まれてきた。


お陰さんで、片腕になろうが、そこいらの雑魚程度なら、軽くあしらえる。



「オレを本気で怒らせたんだ――……二度とこの街で商売できねえようにしてくれる……」



半眼で低くそう宣言し、勢いよく床を蹴る。


首を跳ねるのが一番簡単で楽なんだがよ。


せっかくのクリスマスに死体の山を築くほど無粋じゃなし。


今日のところは、どこかしら身体の一部で勘弁しといてやる。



「いやぁん。蓮くんの守銭奴ぉ」


「ちょ、ダメッ。そんなホントのこと言ったら、一緒に切られちゃうからッ」



人垣目掛けて飛び込み、手当たり次第切り伏せながら。


ふざけた会話を交わしていやがるふたりを睨む。


後でお仕置きしてやろうかとも思ったが……。


せっせとガキどもを回収しては逃がしてやがるし、大目に見てやるとするか。



悲鳴が交錯する中を、踊るようにナイフをふるう。


下手な銃撃なんぞ、当たりゃしない。


動き回ってる的に当てるにゃ、それなりの訓練が必要になってくる。


こんな素人に毛のはえたような連中。



端から殲滅する気でヤルなら、そう手間はかからない。



「こん、な……。そんな……ッ。これが『隻腕の悪魔』…………ッ」


「はッ。可愛い小悪魔ちゃんなんだろ?」



血に塗れ、凄惨な姿で獲物を追いつめながら、艶然と微笑む。


親玉を狩るのは、最後の最期。

力の差を身に染みてわからせてからだ。


それまでは、震えながら恐怖に怯えていろ――……。


この程度。

すぐに全員、芋虫に変えてやる。



「蓮ちゃん、危ない!」



足元に踞る雑魚の手足を捌いて身を転じようとした、その刹那。


背後から勢いよく突き飛ばされ、前転の要領で転がる。


咄嗟に振り向いた視線の先。



「バ……ッ。たろッ!」



誰が投げたのか知らないが……。


床に伏せ、手榴弾を腹の下に抱え込んで丸まるたろの姿が目に入る。


場所も考えずに馬鹿めッ。


唯一の出入口をたろと音子に塞がれ、焦った気持ちはわかる。


だが、こんな場所で手榴弾なんぞを爆発させたらどうなるか。


それぐらい考えてから投げやがれってんだ。



「たろッ! 外に――……ッ」



ああ、ダメだ。

外にゃガキどもがいる!!


慌てて走り寄ろうとするオレを、たろが、やんわりと笑んで止める。



『だいじょうぶ』、と。



そう動いた唇。



「たろ、止め……ッ」



こ、の阿呆ッ。

いくらおまえが丈夫でも、手榴弾だぞ?




んなもん身体で止めたらどうなると――……ッッ!!






――――……ドン……ッ!






オレがなにをするより早く、鈍く響いた爆発音。



「琥太郎ッ!!」



思わず唇からこぼれ落ちる、悲鳴のような叫び声。


嘘だろ?

嘘だろ、あの馬鹿ッ!


手榴弾なんてもの、身体で止めやがって!


踞ったまま動かない大柄な身体。


念のため、防弾チョッキは着せといた。


けど、でも。

あんなもの。



身体で止められる訳が――……ッ。



「琥太郎ッ。返事しろ、たろッ!」



呼び声に反応したのか。

ゆらり……と。


ほんの僅か、たろの肩が揺れる。


ゆっくりと。

本当にゆっくりと起きあがる……大柄な肢体。


よかった、生きて――……ッ。



「蓮くんダメッ」



走り寄りかけたオレを、音子の細い手が掴んで止める。



「離せ音子ッ」


「ダメダメダメッ。見てッ。見て見て、ちゃんと見てッ!」



白い指が示す先。


たろ、の。




――――――……たろの……黄金色に輝く、獣の瞳……が。




うっそりとオレを見据える。



「やっば……」



あの野郎。

やっぱぶっ飛びやがった。


アレ、は。

捕食者の目だ。


爆風で吹き飛んで、半分骨の見えた顔。


焼け爛れて裂けた皮膚。


ズタズタに引き裂かれ、あちこち千切れかけた身体。


ズルリ……。


骨だけになった腕が床を掴み、千切れかけた身体を前へ運ぶ。


ズルリ、ズルリと這いずって。


まっすぐにこちらへ這い寄って来ようとする……鬼人。



「蓮くん蓮くん蓮くんッ。アレ、あの箱ッ。子供たち用の簡易食!」


「わかった……って、うわッ。たろッ! たろッ! たぁろッ!!」



本能に支配された鬼人、が。


より容易く狩れる餌はどれかと、ぐるり室内に視線を巡らせる。



身体が半分吹き飛んだ鬼人に見据えられ、倉庫内が騒然となる。


そりゃそうだ。

本音を言うなら、オレだっていますぐ走って逃げ出したい。


だが、倉庫の外には子供たちがいる。


それに――……。


コレを外に出すのは、さすがに不味い。

何人食い殺すかわかったもんじゃない。



「止めてて、止めてて、止めててよ? 食べるもの調達してくるからあ〜」



脱兎のごとき勢いで、子供たちを引き連れた半裸の女が駆けて行く。


止めてろって言われても、な。

今のオレは片手なんだがよ。


正気に返って後悔すんのは、たろだもんなあ。


鬼人との肉弾戦なんざ。

正直ごめん被りたい、が。



「ま、しゃあねえか」



たろを大量殺人鬼にするわけにもいかねえし。


音子が戻ってくるまで。




久しぶりに――……本気で暴れるとするか……。






















身体が半分吹き飛んだ鬼人に見据えられ、倉庫内が騒然となる。


そりゃそうだ。

本音を言うなら、オレだっていますぐ走って逃げ出したい。


だが、倉庫の外には子供たちがいる。


それに――……。


コレを外に出すのは、さすがに不味い。

何人食い殺すかわかったもんじゃない。



「止めてて、止めてて、止めててよ? 食べるもの調達してくるからあ〜」



脱兎のごとき勢いで、子供たちを引き連れた半裸の女が駆けて行く。


止めてろって言われても、な。

今のオレは片手なんだがよ。


正気に返って後悔すんのは、たろだもんなあ。


鬼人との肉弾戦なんざ。

正直ごめん被りたい、が。



「ま、しゃあねえか」



たろを大量殺人鬼にするわけにもいかねえし。


音子が戻ってくるまで。




久しぶりに――……本気で暴れるとするか……。























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