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numberless lie バカな…早すぎる…的なもの

薄暗い部屋の中に一人の女がいた。照らすのは星明りと部屋を漂う――鬼火と喩えればよいだろうか――丸い炎。机に向かい何かを書いているようだ。


「……私はこんなことより剣が得意なんだがな」


ぽつりと呟いたそれに誰も応じることはない。


コツ……コツ……とドアの向こうから音が聞こえる。足音だろう。

やがて緩慢にドアが開き、男が入ってきた。


「夜這いに、来ましたよ」


片目を押さえ、脂汗を額に浮かばせて、へらへらした顔をして男は言う。重たげに足を引きずり、部屋のベッドに座る。


「そんな口を叩く余裕があるのか? 確かあの娘と会った後で手に入れたんだって言っていたその新しい<目>で疲れてるんじゃないのか?」

「大丈夫ですよ騎士サン。そろそろ限界か。6時間でこれは……まぁ使えるだけいいか」


気遣う女に返事をし、ぶつぶつ言いながら押さえていた手を外した。


「騎士サン。あの子供、どう思いますか?」

「? 機械の国の者だと思うが。威圧できそうな程の精神力だったがどの国の者でもなれない訳じゃ無い。あの城や体からあふれた黒い何かが気になるが、右耳の機械はあの国でなければ作れないだろう」

「それだけ、ですか?」


少し男が女を憐れむような目で見て言う。


「それだけだよ。悪いな馬鹿で」


機嫌を損ねたようだ。が男は続けて問う。


「それであれば、争いになるどころか穏やかに話せていたのは?」

「演技でだってどうとでもなる。……ネイト、貴様は何を見た」

「奴が関係者で、勇者ではないようだってだけです」


話はそこで終わり部屋から遠ざかる足音が部屋を包む。男が帰った後の部屋で丸い炎が俯く女を照らしていた。



―――――

―――――


玉座の置かれた謁見の間。豪華絢爛を文字通り示すような服を着た老いた男がそこに座していた。

そこに複数の足音が向かってやって来る。謁見の間に相応しい装飾の施されたドアが少し開き数人の少年少女が入ってきた。


「……聖歌隊か。勇者はどうだ。そやつの《歌》が無ければ我らが悲願は果たせぬ」


男は声に高圧さを纏わせ問う。


「陛下。しばしお待ちを。勇者はいまだ10にも満たない娘なのです。せめて一人で護身が出来るようになるまでは」

「勇者には復活出来るようになされておる。《歌》が実戦に耐え得るかを聞いている」


怒るように低い声で再度問う。肯定する言葉のみを求めているように。


「継戦能力は乏しいですが……」

「ならばこれ以上話すことはない。まず魔術の国へ行き奪われたものを取り戻せ」


そういうとこれ以上話すことは何一つないというように男は立ち、去っていった。少年たちは勇者を争いに向かわせたくない思いと王に逆らうことは許されぬ事実に板挟みにされ立つ事しかできずにいた。


「なんで、こんな目に」


一人の少年が少女を見つめながら涙を溜め言う。

その場の誰も答えられないその問いは響く事はなかった。



―――――

―――――


機械に染まった街を少年は歩いていた。

無味乾燥な色、形、雑音に包まれた国。太陽も月も時計も街を歩く人々を止めることはなく真昼の様に明りが照らされていた。


「息苦しい」


継ぎ接ぎだらけの外套を着た青年は首枷を掴みながら独り言ちる。裏路地に座って他人の意識を、記憶を見えぬよう、聞こえぬよう蹲った。


「せめて草原のバケモンが食えればな」


空腹に腹が鳴る。寒さで体が震え、奥歯の根が合わさらない。

痩せた腕を組み寒さに耐えようとするがほぼ無意味だろう。指先、腕、足先ふくらはぎ、体の末端が動かなくなっていく。


「次は餓死じゃなく凍死か、もう慣れちまったよ」


空を見上げ暗い夜空と草木を夢想する。この国に現れることはない物を。

いつか地下へ地下へと進み見つけた楽園を願う。


「絶対に魔王を殺してあっちへの片道切符、手に入れてやる」


青年を見る人はそれを鼻で笑うだろう。

機械の恩恵に恵まれず、虐げられ、ヒエラルキーの底辺を這いずる者が何を言うのかと。

青年を知る人はそれを応援しともに目指すだろう。

それが自分の幸福にも繋がるのだから。


そう意気込んだ青年はそのまま動かなくなった。



―――――

―――――



「いいか。お前は魔王様を殺してはならない。お前の為に我らが滅びるようなことはあってはならないのだ。分かったならさっさと魔王様をお迎えする準備をしろ」


犬の顔に猿の体、それを腐敗させたかのような異臭のする爛れた皮膚を持つ太ったなにかが座った似た体の痩せたそれに命じるように言った。


「貴方たちがどうなろうと私は知らない。私は自分の為に動く」


瓦礫だらけの街を眺めて痩せた方は言う。

返事は来ない。


「言うだけ言って帰ったか。自分たちで自分たちのやりたいことに向け行動する頭は無いのか」


痩せた方はそう愚痴り手元にある物を齧る。

バリ、ゴキ、ベシャと凡そ食べ物を咀嚼してもならない音が出る。


「あぁ、腹が減った。それにしても」


――死にてぇなぁ――


そう言って痩せたそれは寝転がる。


「楽に死ぬために願ったら死ななくなったなんてお笑い草だよなぁ」


自嘲しても死ねるわけがない。

死ぬまでの過程で死んでも駄目なんだ。

魔王を殺した先の結果でなければ。


「さて、一眠りするか」


そう言って寒い中朝日を浴びてそれは眠りについた。


「朝起きだら、正月過ぎてた。何を言ってるか(ry」

って作者が言ってたね、うん。



ここまで風呂敷広げて畳めるの?

まぁこれ始めたの私だけどさ

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