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二つの別れ

 貼り出された白い紙に、整然と数字が並んでいる。大勢の受験生のひしめき合う中、自分の番号を見つけた未来は、ようやく受験地獄から解放されて笑顔を浮かべた。耳が痛いほどの寒さも、喜びに消える。実際は、地獄というほどの辛さではなかったものの、ここと決めた大学に、絶対に合格しなければならない、という自ら課した重圧と戦った日々は、途方もなく長かった。自宅で待っていればいずれ合否の通知が郵送されてくることは解っていたが、未来は自分の目で、その結果を確かめてみたかった。両親に電話で合格を伝え、手短に話を終えた未来は、おもむろに時間を確認する。鮮やかな水色の、G-shock。智の墓参りに行った日、帰り際に城戸から手渡された箱の中身が想像もつかなくて、部屋で包みを開けた未来は、思わず声を上げた。

『いろいろありがとう。これはそのお礼だから、受け取ってほしいな。あと、受験は時間との戦いだから。時間に負けずに頑張ってね』

 英語でそう書いたメモが入っていた。お礼のメールを入れたが返信はなく、それっきり、個人的な会話は一度もしていない。

 ちょうど昼休みの時間だったので、履歴から城戸の番号を探して発信ボタンを押す。緊張に、鼓動が乱れた。思えば電話で話すのは、コンクールの時以来。もう随分昔のことのようだ。繋がるのを待ちながら構内を歩いていた未来は、城戸から聞いたチャペルを見つけて、誘われるように中に入った。誰もいない、静けさそのもののような空間。暖かみのあるステンドグラスの色合いが何とも言えず綺麗で、思わず見とれていたが、ふと聞き覚えのある音に、ドキン、と胸が鳴る。信じられない気持ちで振り返った未来は、迷わずその胸に飛び込んだ。

「おめでとう、未来」

 優しく抱きしめられ、紛れもなく、自分だけに向けられたその気持ちに、未来は喜びを噛みしめていた。城戸はその目で、もう未来の受験番号を確認してきたようだった。

「授業はどうしたんだよ?」

「教師が仮病使っちゃ、ダメ?」

「ダメに決まってるじゃん」

「……細かいこと、気にしないの」

 いつもそうだ。もう未来に興味などなくなったようなフリをして、不意に優しくする。それが故意なのかそうでないのか聞いてみたいが、都合良く振り回されている自分を思うと悔しくて、また聞けないままだ。

「ここに来るとね、いつも荒んでいた心が、フッと穏やかになれたんだ」

 城戸は高い天井を見上げて、そう言った。

「薄暗くて、いつ来ても人がいなくて、一人になりたい時は、ここが一番都合が良かった。晴れた日はステンドグラスが綺麗で、雨の日は、目を閉じると優しい雨音に包まれてる気分になれる」

 未来は僕に似てるから、きっと同じことをするよ、と笑った。

 城戸はパイプオルガンの前に座り、バッハの『主よ、人の望みの喜びよ』という曲を弾き始めた。その独特の音は高い天井にのぼって共鳴し、光のように降り注ぐ。未来は神聖な気持ちになり、自然と天を仰いだ。ステンドグラスから射し込む光が梁と交わり、そこから真っ白な羽根が舞い降りるのを見た気がして、何度も瞬きをする。冷えた空気を震わせる、天使の歌声のような音色。優しいと感じるのは、城戸が弾いているから。音楽室のピアノに感動したのも、大好きな彼の心を映していたから。自分も楽器を演奏する立場なのに、そんなことにも気付かずにいたなんて、何だか悔しかった。


 それからの日々は、何もかもが慌ただしくあっという間で、未来自身、身の回りに起こり始めた変化についていけず、右往左往していた。去年の今頃、姉の瑠未がそうだったように、四月から住む場所や、そこからの通学経路を調べたりと、学校生活とは別に、毎日忙しく過ごしていた。

「未来、この自転車は持っていくの?」

 卒業式を間近に控えた休日の朝、大声で尋ねる母親に溜め息をつきながら庭に出た未来は、じゃれるミミを抱いて車庫に下りた。すると、車庫の前に沙耶の姿。

「先輩、」

 あら、いらっしゃい、といつものように母親が声をかけると、沙耶は急に、涙を零す。

「……ミミの散歩に行ってくる」

 この場に留まることは避けたいと思った未来は、ミミと沙耶を連れて外に出た。近くの公園まで行って、沙耶をベンチに座らせ、自分も隣に腰を下ろした。ミミは沙耶を気遣っているのか、しきりに沙耶を見上げる。

「ミミちゃんも、もうすぐ先輩とお別れだね」

 言われて、未来のほうが泣きそうになった。ミミの側を離れるなんて、今まで考えたこともなかった。

「もう、会えない気がする」

 沙耶はそう言って、再び泣き出した。ミミを抱き上げ、膝の上で撫でていたが、やがて思い切ったように口を開く。

「先輩は、他に好きな人が、いるんでしょ?」

 心の準備がなくて、未来はただ、沙耶の顔を見つめる。彼女がそんなことを言い出す根拠は、すぐに解った。

「合格発表の日、驚かせようと思って、駅の外に隠れて待ってたの。往復の切符だから、帰ってくる時間は解ってるって、お母さんから聞いて知ってたから」

 それだけで、もう充分だった。それなのに、沙耶は残酷にも、続ける。

「改札から出てきたのは、先輩だけじゃなかったよね。体調が悪いから、って授業が自習になったのに、城戸先生がそんなとこにいるなんて、おかしいよね」

 未来はただ、黙っていた。弁解する気などない。沙耶を思う気持ちも、城戸を思う気持ちも、未来の中には存在していたが、説明しても理解されないことくらい、解っていた。

「ただそれだけなら、クラスの生徒が心配で、ついていったのかなって思えたのに、先輩は、あの人のこと、名前で呼んでた。信じらんないよ」

 あの日、城戸は自宅近くの駅ではなく、あえて未来の家に近い駅に車を置いていた。それは、未来が降りる駅まで一緒に帰って、自宅に送り届けるため。誰かに見られることなど、気にもしていなかったのだろう。城戸は、隙がないように見えて、意外とそうでもない。未来は迂闊にも、学校の近くで城戸と親し気に話してしまったことを後悔した。学校では先生でも、一歩外に出たら、名前で呼べる。未来にはそれが嬉しくて、たまらなかった。

「私と城戸先生、どっちが好きなの?」

「……、」

「ねえ、答えてよ、先輩」

 はぐらかすことを、沙耶は許さなかった。


 もう隠す必要はない。そう思って事実を打ち明けた未来は、泣きながら走っていった沙耶を、追うことはしなかった。沙耶を愛する気持ちは間違いなくあるが、今は城戸との時間が何より愛おしいということ。城戸の存在がなければ、今の未来は存在しない。親友の死を受け止めきれずに自分を責めてばかりいた教師と、自分自身を信じられず、常に劣等感に苛まれていた生徒は、いつしか互いに寄り添い、励まし合って少しずつ、自分の弱さを克服してきた。そんな城戸は今、未来にとって、同士と言っても過言ではない。二人がいつか性別も、立場の違いも、全て越えられる日がくると、未来は信じていたかった。

「これでいいんだよな、ミミ」

 沙耶の後ろ姿を見送っていたミミに、そう語りかけた。振り返って嬉しそうに尻尾を振るミミの頭を撫で、

「そろそろ帰ろうか。引っ越しの準備しなきゃ」

 急な坂道をミミに引っ張られるようにして歩きながら、未来は寒空を仰いだ。去年までは待ち遠しかった春が、今年はもうちょっと、遅れて来て欲しいと思える。間もなく訪れる幾つもの別れに、未来はまだ心の準備ができていなかった。しかし、自分が望んだ進路を歩むために、その別れは避けられない。去年、瑠未を見送った時とはまた違った寂しさがこみ上げ、それを振り払おうと坂道を全力で駆け上がった。



 未来は卒業式の前日、思い切って城戸を呼び出した。放課後の二年五組の教室。彼と出逢ったこの場所で、幾度となく、話をした。勉強のこと、部活のこと、進路のこと、そして智のこと。そんな時間も、今日で終わってしまう。退屈な授業中、あんなにも時間を早回ししたいと思っていたのに、今は一秒でも無駄にしたくない。本当は、城戸と最後に話すのは式が終わったあとにしようかとも思ったが、明日では遅すぎる、そんな気がして、未来は時の流れの残酷さを感じながら、彼が来るのを待っていた。

「ごめん、遅くなって」

 明日の準備をしていたらしく、なかなか抜け出せなかったことを謝った。

「いよいよ、明日だね」

 いつもと同じ笑顔に見えた。自分だけが寂しいような気がして、言おうとしていた言葉を飲み込む。しばらく俯いていると、

「明日はきっと、バタバタしててゆっくり話せないだろうから、ちょうど良かった」

 城戸はそう言って椅子を引き、未来に勧めた。自分はその隣の席に座る。フワリ、とフリージアに似た香りがした。こんなに悲しい香りだっただろうか。未来は寂しさに城戸の顔を見ることが出来ず、城戸もまた、言葉を探しているのか、空を見つめたままだ。普段は聞こえない壁の時計の音が、やけに大きく響いていた。

「未来の気持ちは、ちゃんと解ってるつもりだよ」

 予想外の台詞に、未来は驚いて顔を上げた。城戸はいつになく真剣な表情で、未来の目を見つめる。

「でも、今はまだ、早すぎる。未来がもっと大人になって、それでもまだ同じ気持ちでいてくれたなら、もう一度ここで会いたいな」

 その別れの言葉の意味を、未来は理解しようと努力した。しかし、その意志に反して、涙が溢れだす。しかし城戸は、今までのように、未来を抱きしめたりはしなかった。

「早く大人になって、未来。そして、四年後、ここに戻っておいで。僕は、ずっと待ってるから」

 ただ、頷くしかなかった。自分の口から好きだとは言えず、また、城戸の口からもその言葉はなかったが、未来はもう、歩き出さなくてはならないことを悟った。少しでも早く、大人になるために。

「これ、今までのお礼、」

 未来は涙を拭き、自分で選んで買ったネクタイの細長い箱を、城戸に差し出した。こんなものでは到底、彼への感謝の気持ちに及ばないことは解っていたが、それでも何かしたかったから。

「明日、スーツなんでしょ? それ、つけてきてよ」

 未来の言葉に、城戸は笑顔で頷き、

「今まで、ありがとう」

 そう言って、教室を出て行った。


 翌朝、一旦教室に集合し、最後のホームルームが始まった。黒いスーツ姿の城戸が教室に入ってくると、女子たちのうっとりとした溜息が漏れる。未来は昨日手渡したネクタイをつけていることに満足したが、それ以上に、彼が眼鏡をかけていることに驚いた。城戸が近眼であることなど、全く知らなかったからだ。しかし、それもまた似合っていて、女子たちの小声で騒ぐ声があちこちから聞こえた。どうして今日は眼鏡なんですか、と誰かに聞かれると、

「きっと感動して泣いちゃうから」

 と、笑った。

 式の途中、三年生の担任の代表として城戸の名が呼ばれ、壇上に上がると、その予期せぬ喜びに皆、ザワザワと声を上げた。本来なら学年主任である野口の役目なのだが、未来にはそれを城戸に譲った元担任の気持ちも察することができる。城戸は深く一礼し、卒業生たちを見渡した後、マイクのスイッチを入れた。

「今日、この場所で、ぜひ皆さんにお話ししたいことがあります。ずっと忘れずにいてほしいことです。……四月から大学生になる人も、もっと頑張って上を目指す人も、これから先、どんなに高い壁が、その目の前に立ちはだかり、皆さんを苦しめるかもしれません。でも、決して簡単に投げ出さないで下さい。諦めなければ、いつかきっと、乗り越えられる時がやってくるから。どんなに時間がかかっても、必ず」

 いつものように穏やかな声で、優しい間を置きながら話す姿勢は、それだけで未来の心を熱くさせた。智の遺書の言葉であろうことに気付きながら、どんな気持ちでいるのだろう、と想像してみる。未来の席からは遠すぎて、城戸の表情までは見えなかったが、ジッとその目を見つめて聞いていた。

「若い皆さんはまだ、過去という言葉を、使わないかもしれません。でも、もし、過去の辛い経験や、また、これから何か辛いことがあって、そのせいで前に進めなくなってしまったら、その時は無理にでも、笑ってみて下さい。いつも前を向いて笑っていれば、未来みらいが、皆さんの手を、引っ張ってくれます。過去にとらわれて身動きのできなかった私を、暗闇から救ってくれたように。……どうかどんな時も、笑顔を忘れないで下さい。それがいつか大きな幸せに繋がるのだと、私は信じています」


『未来、って、いい名前だね』


 想い出が、涙になって、溢れ出した。今日は絶対に泣かないと、決めていたのに。思えば、あのときを境に、城戸は未来を、名前で呼ぶようになっていた。彼は一生懸命に前を見て歩いていこうとしていたのに、智の影にこだわり、取り憑かれていた未来は、その手を引っ張るどころか、困らせたり、傷つけたり、散々邪魔をしてしまった。

「私が教師になった年、この高校に入学した皆さん。一緒に学び、成長し、今日皆さんを送り出して、初めて私は教師という仕事の喜びを、知った気がします。三年間、本当にありがとうございました」

 声が、震えているような気がした。啜り泣く声が、あちこちから聞こえる。おめでとうではなく、ありがとう、と言ったところに、城戸らしさを感じた。


 式が終わり、城戸に花束を贈呈して散々泣いた後、教室に戻った生徒たちは、この部屋から去って行くのが寂しいのか、誰一人帰ろうとしなかった。小学校の卒業式のように、城戸先生ありがとう、と書かれた黒板に、皆がそれぞれに自分からのメッセージを書き足している。女子生徒は、これが最後だから構わないと思ったのか、好きです、だの、付き合って下さい、だの、好き勝手に書いていた。泣いたり笑ったり、そんな卒業式らしい賑わいに、未来も帰ってはもったいない気がしてそこに留まっていたが、ふと名前を呼ばれて入り口を見ると、野口が未来に向かって手招きをしている。最後に何かとんでもないことを言われそうな気がして恐る恐る出て行くと、野口は一枚の卒業証書を未来に手渡した。その生徒の名は、城戸 唯と書かれている。

「城戸がもうすぐ来るはずだから、それをおまえから渡しなさい」

「……、」

「ホラ、早く!」

 城戸の姿が廊下の端に見え、野口は戸惑う未来の背中を押して教室に戻した。家族が迎えにきたりして、ようやく教室からは生徒の姿が減りつつある。もう一度、採光窓から廊下を見ると、野口が身振り手振りで、それを壇上で読んで渡せ、というようなジェスチャーをしていた。未来は突然課せられたその使命に、どうしていいか解らなかったが、それこそ最後だからと開き直って、壇上で城戸が入ってくるのを待った。やがて、扉が開いた……。

「城戸 唯」

 未来はそう呼んだ。城戸本人も、残っていたクラスメイトも、一斉に未来のほうを見る。未来は構わず、続けた。

「卒業証書。三年三組 城戸 唯殿。右の者は本校において、高等学校普通科の課程を修了したことを証する……」

 呆気にとられていた城戸だったが、やがて未来の前に立ち、その証書を受け取った。日付は、今日、そして学校の印の代わりに、野口の認め印が押されている。戸惑っている城戸に、おめでとう、と言うと、いきさつを知らないクラスメイトたちも、卒業おめでとう! と叫んで拍手をした。

 城戸はしばらく、その卒業証書を胸に抱いて泣いていたが、やがて深呼吸をして、

「みんな、ありがと。いつまでも一緒にいたいけど、もう帰る時間だよ」

 早く帰りなさい、と他の教室からも担任の声が聞こえたが、残っている生徒たちの気持ちは、皆同じなのだろう。今日帰ったら、もうここには来られない。この教室は、未来たちの教室ではなくなってしまうのだ。そして、担任もまた、今日で終わり。それを思うと寂しすぎて、未来は胸が張り裂けそうだった。

 話すことは、もうない。昨日、城戸との時間は終わったのだと、自分に言い聞かせたから。最後に携帯で一緒に写真を撮っている杏奈や他の女子たちを少し羨ましく思ったが、未来は思い切って、その風景に背を向けた。できれば、寂しさも悲しさも、全部、ここに置いて行きたい。楽しかった想い出だけを持って、卒業するのだ。


 下駄箱に、二つの手紙が入っていた。一つは、沙耶から。

『先輩のこと、忘れられるように頑張るから、先輩も頑張ってね』

 沙耶らしいその短い手紙に、言いようのない寂しさに襲われた。嫌いで別れたわけじゃない。そんなことは自分が一番、よく解っていたから。沙耶に会うよりも早くに訪れた偶然の出逢いが、既に未来の心を奪っていた。自分の力ではどうすることもできないほどの引力。それは運命だったに違いないと、未来は感じていた。

 帰宅した未来は、部屋の机に向かい、もう一つの手紙の封を開けた。日本語であることにホッとして深呼吸すると、微かにフリージアの香りがする。授業中の黒板にはいつも筆記体の英語しか書かなかった城戸の文字は、やはり綺麗だった。

『未来へ。卒業おめでとう。本当に、いろんなことがあったね。未来の居残りに付き合うのが、僕の楽しみになっていたこと、未来は気付いていたのかな。明日から、その時間もなくなってしまうけど、未来と過ごした時間は、絶対に忘れない。またいつか、会える日が来たら、その時はあの教室で待ち合わせしよう。

 音楽室でも、よく会ったね。最後に僕が弾いた曲、覚えてる? 発表会のために、毎日のように練習していた頃より、音楽室で弾いたあの時のほうが、ずっと上手だった。初めて誰かのために、未来のために、弾いたから。タイトルを知っていたら、僕の気持ちはもう、解っているのかも知れないね。でも、もし知らないなら、無理に探さないで。何処かであのメロディを聴いたとき、僕のことを思い出してくれたら、嬉しいな』

「Liebesträume No.3」。未来は先日、姉の置いて行った楽譜の中から、記憶の旋律を辿ってその一曲を見つけてしまったことを後悔した。

『たくさんの想い出を、ありがとう。唯』

 全てが今、想い出に変わってゆく。未来は今、この瞬間、ようやく高校生活が終わってしまったことを実感した。どれだけ泣いても足りないほどの寂しさも、告げられなかった想いの苦しさも、いつかは去って行くはずだ。未来はここに留まることよりも、少しでも前へ進んで行きたかった。時間は誰にも平等だと言うが、辿り着くまでの道のりは皆、違う。それなら、多少急いででも、先に歩き出したほうがいい。未来は引っ越しの荷物の中に入れたFranz Lisztの楽譜を、姉の本棚に戻した。


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