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オカルト小説家の憂鬱

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「ネタが無い、ネタが無いのだよワトソンくん」

 目の前の少女は近所の寿司チェーン「極楽寺」に注文して取った、華盛り込み(税込五千二百五十円)からイカの握りを、親指と人差指でクレーンゲームみたいにしてつまみ上げ、醤油も付けずに口に放り込み、それから暫くもぐもぐと咀嚼してから宣言した。

 此処は比良坂市駅前に位置するビルの二階、少女の仕事場兼自宅である。ビル名「天の岩戸」なんとも神様が閉じこもりそうな名前だが、引きこもっているのは神様ではなく僕の知り合いの少女だ。

 季節は夏の時刻は正午、太陽は空高く上がるも、事務所は薄暗い。内部の照明は最低限の明るさで、窓には暗幕がかけられている。日光は本に悪いし、なんでも明るすぎると偏頭痛が起きやすくなるとかなんだとかで、暗めの方が調子が良いとのことだ。

「誰がワトソンだよ、ネタが無いって食べてるじゃないか」

 僕は対抗して赤みの握りを三本指で摘み上げ醤油の小皿に付ける。手が汚れないように、それでいて赤身全体に醤油が付くように、自宅でこれをやると二十八になる姉が「それはマグロの味ではなくて醤油の味しかしないだろ」と小一時間説教を受ける。

 そうは言っても、味が薄く感じてしまうのだから仕方ない。恨むなら僕の感性ではなく、その感性を育てた父の遺伝子と、母の料理の味付けを恨むべきだ。とは言え、一緒に育った姉が薄味推奨派なのだから、結局は僕の責任なのだが。

 沢山おかずを食べるよりも、味の濃いおかずでご飯を一気にかきこむのが美味しいんじゃないか。だから僕は刺身も醤油の海に沈めてからご飯に乗せるタイプだ。その点、目の前の彼女は醤油を付けようとすらしない。イカをそのまんまとか美味しいのだろうか。少なくとも僕にはその芸当は出来ない。

「うるさいなあもう、ネタってそのネタじゃない。小説のネタだよヘイスティングス大尉」

 誰がヘイスティングスだよ、ポワロかホームズかはっきりしろ。今度はヒラメに手を出して再び小皿へ、小皿からは口への流れ作業。これを今度はさして噛まずに飲み込んで、湯のみに入ったお茶で熱いお茶で流し込んだ。

 それから頬杖を付きながら正面の少女へ視線をやる。

 少女の名前は足立陽――この家の主にして、僕の幼馴染でありオカルト小説家なんていう際物な職業に付いている。同じ大学に進学したと思えば、急に思い立ったように「小説家を目指す」と宣言して大学を辞めて今に至る。わけのわからない奴だ。

 ――結局のところ僕はハルの本質を良くわかっては居ない。

 ハルは黒色の静かに光る瞳を僕へ向けたまま、気だるそうにもう一つイカの握りを口へ放り込んだ。夏だから仕方ないのかもしれないけれども、身に着けているのは黒のキャミソールとホットパンツだけだ。

 黒く長い濡れ羽根色の髪は長らく揃えるだけで、切っていないので腰元まで届きそうですらある。彼女の信じられない程軽い身体の重みを、賄うために生えているのではないかと思うくらいに長い。

 常に冷めた無愛想な表情も相まって、黙っていると精巧な人形のようでもある。

「ああ、頑張れファンは待ってるぞ」

「それだけかよ畜生め」

 頬を膨らませて捨て台詞を吐くと、再び少女は大皿へ手を伸ばす。今度もまたイカだ。口をもぐもぐさせながらハルは満足そうに笑みを浮かべる。初対面の人間相手なら破壊力抜群のコンボだが、伊達にかれこれ十年以上一緒に居ない、さして気にせず食事を続ける。今度は赤身の握りを掴んで口に運んだ。

「ネタが無いって見つけるの含めて仕事だろう。イカばっか食べるなよ」

 大皿の僕から見て最奥、イカの握りが並んでいた位置はポッカリと皿の底を晒している。ハルが只ひたすらイカの握りだけを食べる。

「言えばそうだがねえ……。別にお前はイカ食べないんだから良いだろう。それにそう言うお前こそ赤身ばかり食べているじゃないか」

「僕は良いんだ他のネタも食べているから。そもそもそれを言えば、ハルだって赤身は嫌いだから食べないだろうが」

「あーはいはい悪うございました、葉一と違って偏食ですからね、そんなに色んな物を食べるのが偉いなら中央にいつまでも居座っている雲丹を片付けてもらえるかな」

「――うぐっ……」

 大皿中央に位置するフリゲート艦――もとい雲丹の軍艦を見て、カエルの潰れたような声をあげる。好きも嫌いも一致することが少ない僕らだが、雲丹だけは唯一食べられた物ではないと同時に頷くものだ。

 大皿のイカが並ぶ北端と、赤身が並ぶ南端、その二つの国土を挟む海を哨戒する大型の巡洋艦がさしずめ雲丹だ。大皿を平らげる上での最大の敵だ。

「あー正直、赤身とイカだけの大皿とかあれば良いのになー」

 赤軍と白軍、もとい赤身とイカだけが並ぶ大皿を思い浮かべて、少しだけ良いなと思いかけたが、小学生が唐揚げだけを詰めた弁当を夢想するのと一緒で、好きな物も食べ続ければ人間飽きてしまうものだ。――ハルはその限りでは無いようだが……。

「それこそ店に食べに行った方が速いんじゃないか?」

「ばっか、寿司食うのに何で外に出なきゃなんないんだよ」

 ハルは心底嫌そうな顔で答えた。彼女は酷く出不精で、余程のきっかけが無いと外には出ない。理由を聞けば外気に触れると嫌悪感で湿疹が出るなどと、苦虫を何匹噛み潰したか解らない程顔をしかめた。

 またこれは冗談なのだろうが、「小説家を目指したのは極力外との関わりを少なくするためだ」とも言っていた。「本」と「ゲーム」という、引きこもり気質の人間に与えてはいけない三種の神器の内の二つを手に入れてしまってからは、ちなみに三種の神器の三つ目は「安定した固定収入」だ。

「日に当たんないと身体に悪いぞ、ほらメラニンだかタンニンだかが働かなくなるってよ」

「セロトニンだろ、あれは体内で作る精神安定剤みたいなもんだから、私みたいにストレスから遠い位置に身を置けば必要ないんだよ」

 なんだそれはと僕は肩を落とした。「戦わないのでストレスには負けません」みたいな理論である。外を歩けば誰もがストレスと戦うための工夫をしてるというのに、ハルはストレスと戦わないために全力を費やしている。

 みんながHP(体力)VLT(耐久)にステータスを全振りしているのに対して、ハルはAGI(敏捷)DEX(器用さ)に全振りをしているようなものだ。「当たらなければどうという事はない」理論である。しかしそれは裏に返せば当たれば致命傷という事でもある。

「それだと、打たれ強くなんないぞハル」

「葉一もあれか、RPGでボス戦で負けたら、近くの草原でザコ敵狩ってレベル上げてから挑むタイプか。知らないなら教えてやるけどな、世の中には低レベルクリアに達成感を覚える人間も少なくないんだよ。敵より強くなるより、現時点の能力でどうするか考えるのが好きな人間が居るんだ」

 それはレベル上げより面倒でストレスが溜まる気もするのだがどうなのだろうか。僕が目を細めて首をかしげていると、ハルは「はあ」と小さく溜め息を付いて、その息の後に後に言葉を続けた。

「レベル上げも楽しいってのはわかるんだよ、自分がやってる事がまどろっこしくて、端から見ればこっちの方がストレス溜まるように見える事も解る。だけど私ら当人からしたら苦痛なんかでは無いのさ。要はストレスに負けなきゃ勝ちなんだ」

 湯気がのぼる湯のみの中を覗き込みながら、暖々とハルは答えた。逃げるのが下手なら耐える方法を身につけて、耐えられないなら逃げる方法を身につければ良い。僕はどちらかと言えばどっちでもなくて、逃げたり逃げなかったりする。

「確かにその通りだけど、普通の人間にはそんな事は出来ないよ」

 少なくとも現在、単位取得に追われているような大学生には、やろうと思っても出来るような事じゃない。隣の芝だと解っていても、時々羨ましく思ってしまう事もある。確固とした自分を持っているハルが少しだけ妬ましいのだ。

「――違う違うそうじゃない!」

 ハルがふと思い出したように立ち上がり大声を上げる。心に秘めた薄暗い気持ちを悟られまいと、窓から外をぼうっと眺めていた僕は、少しだけビクリと肩を震わせてから目線を身体の前方――ハルへと戻した。

「ネタだよ、小説のネタ。何か無いのかよ葉一ー、何のためにお前を雇ってると思っているんだ。私は小言ロボットを雇ったつもりはないぞ」

 雲丹だけが残った大皿を脇にどけると、ハルはぐっと身を乗り出した。額と額が触れ合いそうな程近い、ゼロ距離。お互いの心まで覗けてしまいそうな距離で、心臓の高鳴りと吐息の温度を感じた。

 ハルは友人でもあるが、同時に僕の雇い主でもある。助手――アシスタント、と言っても実際の小説家の助手がどのような事をするのかは知らない。そもそも小説家の助手という存在があるのかどうかが既に疑問だが、僕はそういう名目で雇われていた。

 小説家助手――と字面を見るとやけに知的に見えるが、その実している事といえば「炊事」「洗濯」「掃除」「整理」「整頓」「買い出し」合わせて六つ、要するに僕は家政婦もとい家政夫、紛らわしくないように言えばハウスキーパーである。

 僕が此処でバイトを始めたのは、丁度一年ほど前の事だった。ハルがこの仕事場を借り始めたばかりの時の事だ。僕が通う大学から近い位置にあり、尚且つ出不精のハルが資料と称して買い集めた小説やら専門書、果ては漫画にゲームなどが玩具箱のように詰められた、この仕事場は居心地が良くて入り浸っていた。

 家では夏場でも節制政策のせいで冷房はめったに付けないのだが、ここでは本に最適な環境を作るために一年中、空調で気温と湿度を一定に保っている。一体いくら程の費用がかかるのか僕には想像できない。

 ともかく僕は昼と夜となくこの仕事場に入り浸り、勉強ではなくセガサターンやらプレイステーションやらスーパーファミコンやらに精を出していた。上がるのはゲームキャラのレベルで、暗記できるのは攻略手順だけ、要するにクズ学生だった。

 ともかく引っ切り無しに新製品や新作が出る時代、僕のような貧乏学生は指を加えながら見ているしか無い状況だった。流石に我慢するのも限界になり、何か時給の良いアルバイトを探そうと、ハルの目を盗み求人に目を通していた時の事だ。

「なんだ葉一、金に困ってるのか?」

 ハルは後ろからのしかかるように覗きこんで言った。正直言った所、彼女にはこの様子を見られたくなかった。何を隠そう彼女はそれなりに名の売れた(ジャンルが零細なのもあるが)小説家であり、年齢から考えると大金を持っている。

 値の張るパソコンを持っている。ゲームのハードは揃い踏みだ。古本屋を巡ってやっと見つけるようなレアな古書を揃えている。僕のような趣味を持っていれば、喉から手どころか全身を出すほど渇望して止まない物を全て揃えている。

 おまけにハルは基本骨格から捻ね曲がっているので、僕がアルバイトをする理由を知れば大笑いするか、自分の持っている物を自慢するかのどちらかだと思ったからだ。僕は覚悟を決めて、求人広告を伏せると向き直る。

「ああそうだよ、貧乏学生はアルバイトの一つや二つこなさないと、欲しいものすら買えないんだよ。売れっ子小説家と違ってね」


「バイトを始めたら忙しくなるな?」

 刺を含めた言い方で反撃を覚悟していたのだが、帰ってきたのは予想外な返事だった。

「ん? まあそうだな、此処にも前程は入り浸らないよ」

 その返事に対して僕は首を傾げながら答える。流石に入り浸りすぎるのも悪いと思っていたし、仕事の邪魔をしてはいけないと思い始めた頃だったので、ハルもその方が仕事に集中出来ると思っての事だ。

「――なら良いバイトを紹介するぞ」

 少しツンと上がった鼻先を僕の頭上に向けて、口を尖らせながらハルは言う。

「――なんと!」

 孤鷲拳ではなく、驚きの声である。ハルがそんな事を言い出したことに対してもだが、ハルに紹介できる知り合いが居たという事に対してである。このひきこもりにそんな知り合いができる機会が在ったことにも、その機会を活かせた事にも驚きだ。

「聞いて驚くといい」

「――おお!」

「――なんと」

 暗鐘拳でもない。

「いや……早く言ってくれよ」

 やけに長く溜めるので僕はハルを急かす。どれだけ長いかと言えば96のラルフのタメ技と他のキャラのタメ技位の差がある。するとハルは一度咳払いしてから、上を見ていた顔を下ろして僕を見た。口は相変わらず尖っている。

「……此処で働けよ、そうすれば毎日来れるだろう?」

 それだけ言うと再びハルは目を逸らした。その様子がやけにいじらしかったのを、僕ははっきりと覚えている。それだけ言うと仕事机に向かい、その日は口も利かなかった。僕もその話難い雰囲気に臆して、サボるつもりだった講義を口実に仕事場を出た。

 翌日、少し気まずさを覚えながら事務所に行くと、僕が来ると使っているデスクの上に置かれた契約書と、いつも通りのハルが迎え入れてくれた。

 以上が此処で働くことになった顛末なわけだが、後で理由を聞けば「対戦ゲームの相手が向こうから暇をぶら下げて来るのは便利だから」だそうだ。それが真意か否かは知らないが僕にとっては願ってもない話だった。

 最初は何か仕事はないかと聞いたが、「掃除でもしておいてくれ」としか言われず、何もしてもいないのに安くない給料を渡されると、友情を売りつけている気分になるので、ハルの身の回りの世話を自分から名乗り出た。

 ――閑話休題。

 ハルが僕にネタをせがむのは、僕が優秀なアイデアマンだから――などではなく、単に僕の体質に端を発する。眉唾だが僕は奇妙な事件に巻き込まれやすいのだ。奇妙な事件というとどんな物かといえば所謂怪談やら、都市伝説の類だ。

 噂に過ぎない物や、実在も不確かな物に僕は昔から、頻繁に――それも期間で言えば年に数度ほど遭遇していた。無害なものなら良いがそれこそ寺社で祓わねばならないといった事も少なくなかった。

 そしてハルが大学に居た頃、一度だけ僕の体質の所為で事件に巻き込んでしまった事があるのだが、その時に彼女には自ら自分の所為なのだと明かした。彼女がオカルト小説家なんて職を目指すと言ったのも丁度その後で、その時の出来事が行動の理由の多くを占めているのだろう。もし僕と出会っていなければ彼女も別の道を歩んでいたと思うと、恨まれているのではないかと思ってしまう。

 そのせいで彼女の書いた小説を書店で見つけても、未だ読めずじまいだった。

「そんなしょっちゅう巻き込まれてたら身体が保たない」

 今までに二度ほど死にかけた事もある。それ以外だって気が気ではなかった。痛い思いはしたくないし、逃げまわるのも疲れた。体質改善なんてのがテレビでは叫ばれてるが、是非とも僕の体質改善法も教えてほしい。

「別に巻き込まれろなんて言って無い。大学に通ってるんだ、頭の軽い学生諸君は噂話が大好きだろう。そっから集めてきてくれよ」

 ハルはやけに「学生諸君」のフレーズに刺を込めて言う。大学に通っていた時も、講義中に騒いでいる輩に対して「カナカナ五月蝿いヒグラシだ」と毒を吐いていた。おそらくヒグラシとその日暮らしをかけているのだろうが、ハルは彼らの青春という言葉に対しては人一倍敏感に反応して隣の僕に毒を吐いた。

 まあ僕とて彼らが毎日毎晩、飲み会やらコンパを企画しているのを見ると何処から金が出ているのかと疑問に思ったり、そんな金があるなら有意義に使えと思ってしまうので、ハル寄りのニュートラルポジションに属していたりする。

 彼らの青春を咎める気は起きないが、僕らにとっての青春とは一日中冷房の効いた部屋でゲームやコミックの2Dや小説の活字の海に、甘い倦怠感と共に溶けこむ時間の事を指すのだ。それは僕らの人生の起動時に刻まれてしまった定位置で、戻すには無理してスティックを倒し続ける他にない。

「自慢じゃないが僕だって、大学に知り合いなんてロクに居ない。毎日此処に入り浸っているんだからそれぐらい解るだろう」

「んだよつかえないなー葉一……行き詰まって悩んでも仕方ないし、ロマサガ3のタイムアタックでもやろうよ。私が先攻、葉一が後攻」

 ハルは頭を掻くと、仕事場から敷居を跨いで隣の部屋――元は寝室だったが、ハルが布団で寝ないのでほぼ娯楽部屋になっている――に行きSFCを引っ張り出す。それから畳に座りポンポンと隣を叩いて、僕を手招く。

 ハルはやけにスクウェアソフトにご執心で、発売から三年しか経っていないのに、二桁を優に超える回数をプレイしている。そのせいか最速攻略法編み出し今では三時間を切る勢いである。ゲーム雑誌の企画でセレクトボタン無しプレイをしている人間が居ると知った時は心底悔しそうであった

「いや、ロマサガ3は正直お腹一杯かな。まだやってないからFFⅦやりたいんだけど」

「FFⅦはやめろ、私があんま好きくない。FFⅥから妙にメカメカしくなったと思ったらアレだからな、このままいけばクリスタルなんて無くなるんじゃないか。そもそもそろそろ幻想を終わらせたらどうなんだ?」

「SF色なら初代から強かったじゃないか、『リプレイ』とかのループ物。『恋はデジャブ』とか『七回死んだ男』とか『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』みたいな構造で書かれてるしさ、元々SFやりたかったんじゃないかと思うけど」

 ロマサガ3のカートリッジを握ったまま、ぐぬぬとハルは唸る。そもそもSFとファンタジーは同じカテゴリーだから、分けて考えるのが馬鹿馬鹿しい。超常現象も超化学も人知に負えない点では一緒だ。外面塗装の好き嫌いはあるだろうけど、会社が腐ったと言うには早い気がするのだ。

 かくゆう僕はスクウェアソフトなら『ルドラの秘宝』や『ガンハザード』、あとは『パラサイト・イブ』などが好きだ。パラサイト・イブに関しては原作も含めて、とても楽しませてもらった。グラフィックの綺麗さにも随分驚かされた。

「むぅ……じゃあ間取ってブシドーブレードやろう。私はブラック・ロータスな」

 ブシドーブレードと言えば今をときめく対戦格闘ゲームである。コンビニでのみ売っている作品だったので、発売日にハルに言われて買いにいったのだが、中身はいい意味でも悪い意味でも斬新だった。見切り発車と言ったところか。

「どこが間を取ってなんだよ……格ゲーならヴァンパイアやろうよ。ビリオンフリッカー覚えたからさ前よか相手になると思うよ」

「ほほう、私に挑戦するのか。良いだろう私のサスカッチの錆にしてくれよう」

 あの雪男のどこに錆に出来る要素があるだろうか。僕とハルはプレイステイションとコントローラーを引っ張りだし、電源ボタンを押して起動音に胸を弾ませる。聞き慣れたBGMと見慣れたグラフィック、手慣れた手付きでキャラを選択すると「FIGHT」の声が僕らの対戦をスタートした。

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