プロローグ
その少女は焦っていた。
沢山の小さな光が漂う、何処までも遥か遠くまで続いている真っ白空間。
その中で少女は焦っていた。
―― ま、まずいです。こ、これは非常にまずい難問です…… ――
彼女に命じられた一つの使命。その難解さに彼女は今までにない位焦っていた。
もう残された時間も少ない。
だというのに、彼女は今だその使命を果たせずにいた。
―― い、急いで条件に合う人探さなきゃ! じゃないと……ああ、怒り狂ったあの方のお顔が目に浮かびますぅぅぅっ ――
それは試練だった。
それは彼女が自分で果たさねばならぬ使命であり試練だった。
そしてついでに言えば最後のチャンスだった。
―― ああああ……な、何でよりによって進級試験の試練が、こんな厄介なものなんですかぁ!? 私だけ試験に五回も落ちたからって最後の最後でこんなっ! 無理ですってぇ! 温情掛けてもう少し難度の低い使命にしてくださいよーっ! これだからあの方は……そんな石頭だから意中の女神様に見向きもされないんですぅぅー! 生え際だって危ない癖にーっ! ――
そこに彼女の上司であり、最も恐れる存在がいないことを良い事に言いたい放題であった。
もし、これを彼女の言うあの方が聞いていたら彼女は問答無用で落されていた事だろう。聞かれているかもしれないという危機感を持ち合わせていない彼女はある意味強者であった。
―― ああもう! 時間もないし! は、早く条件に合う人探さなきゃ……! で、でもやっぱり……こんなの難度高すぎですよぉぉぉぉっ!! ――
もう一度、己の使命を想い返し彼女は絶叫した。
―― っ違う世界の人間を、そことは違う異世界の存在に新しく転生させるなんてーっ! しかも強制はご法度だなんてーっ! さらに死んだ人、もしくは死にそうな人は却下なんてーっ! 無理ですってばああああああっ! ――
異世界転生。
それが彼女に課せられた―― 上位天使昇格試験の内容だった。
そして、この昇格試験の対象に選ばれたとある青年から……物語は始まることになる。
初のオリジナル小説です。お楽しみいただけたら幸いです。更新は、それほど速くはないと思いますが、頑張ります。