第5章 開幕
・何でも許せる方向け
・作者の妄想と捏造の世界です
・誤字脱字あり
・途中までの掲載
・ネーム感覚の投稿のため、書き直し、再投稿、削除は常にあり
・無断転載等NG
拙い文章ですが、どうかあたたかい目で見守ってください…。
一応、ファンタジー系
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(?)
ドカン!ズドーン!
シュウ~、シュウ~。
衝撃波で気づいた時には、辺りはアラームの警告音が鳴り響いていた。真っ暗で何も見えない。掌の感触を頼りに、地面、壁と手をついて這いながら進む。それから数分後、ソレの身に分かったことは、体中が酷く熱く、鋭い痛みが走っていたことだった。主に半身が負傷して使えなくなっていた。
「グハッ……グルるうゔぅ!ぴちゃ、ひゅーひゅー」
喉の奥から血と共に空気が抜ける。
数時間後、無理矢理扉を開け、地べたを這いながら何とか外に出られたソレは、自分が乗ってきたものを見た。皮肉なことに、円盤はソレと比較して、少しの損傷だけで済んでいるようだ。
――血生臭い正体は、体の筋肉繊維が千切れ裂けている部分がある為だ。焼け爛れた皮膚は所々めくれていたが、その後シュルシュルと繊維同士が結びついてきた。
どうやらそれには自己回復の再生能力があるらしい。だが修復が遅い。
喉の奥が焼けて息がしづらいようで、呼吸は歪な音を発している。
ソレは、水を求めてひたすらに這ったが目下に森が広がる崖の近くまで行くと、それ以上進めないと分かって、やがて力尽きその場で疼くまった。その傷が癒えるまで。
痛みが軽減すると共に、思考する余裕ができた
――己は何者なのか、なぜここにいるのかと、わからない、と。
堂々巡りを繰り返して、何日か経ったころだった。
ひと際明かるいモノが、崖の向こうから怪物を照らし出した――――――太陽だった。薄暗い森の中を光が差してゆく。
瞬く間に鱗が日の光に照らされ反射した。傷は少しずつではあるが塞がってきていた。けれどもまだ深い。
むくりと、それはゆっくりと起き上がった。
「ぐるるる、グガッ、ガルルゥ――――スゥ――」
どうやら喉の傷の修復は済んでいる様だ。そして肺の中いっぱいに空気を吸い込んだ。
「ガオオォオオーーー!!!」
劈く音が空気を裂いて、あたりの森へと響き渡った。
怪物は太陽に向かって叫んだ。
その咆哮は――悼み、痛み、傷み、あるいは喜びか――分からない。
ふとソレは、空気に漂う僅かな匂いをは嗅ぎ取った。
――食欲をそそる旨そうな匂いだった。
次第に周囲が明るくなって、ソレはゆっくりと森の中歩き出し、消えていった。
――――――――――――――――――――――
(――パルベニオン帝国の闘技場にて――)
パッパラパー、パッパパ、パッパラパー
ドンドン、パフパフ
辺りは豪快な音楽と、人々の声で賑わっていた。
群青色に澄み渡った空は、どこまでも広がっている_。
(パルベニオン帝国西区)
闘技場は本来、一般市民は立ち入ることができない。通常、闘技場を含め王立図書館と王立研究所が王族の管轄である為、入るには申請が必要となるのだ。
けれども歴史ある「王位継承の開幕」になると話は別である。普段は入れない所に入る事ができる闘技場で、姿を見せない王族と一般市民が初めてその場で対面となる。その為か、みな次期国王候補の姿を一目見たいのだろう、場は賑わっていた。
代々王位を継承する者は、王の血引いていることが条件。王の血筋に近い者から、王位を引き継ぐ事がほとんどであるが、今回は王族内で選挙してから王を決めよと言うのだ。
これの何が異例なのかと言うと、王位継承を選挙で決める事は、これまでの過去の歴史であるにはあった。だがその場合、大抵、先王に兄弟がいなかったり、後継があまりにも幼過ぎる赤子などの場合で執り行われた事はあった。
けれども今回は、先王に弟ペラルギアがいるにもかかわらず、それでも選挙で決めよと言うのだ。つまり、後継がいながらその者に席を譲らず、皆で決めよ、と言う先王の最終命令つきなのである。
「王位継承の儀」は、先王が次の王に席を譲る儀式だ。先王が「次の王はお前だ弟よ」と言えば済む話だったのだが、違ったと言う事だ。
(闘技場の物陰から中央の櫓を眺める人物たち)
「とうとうこの日が来たのね」
中央に位置する王位継承候補席である櫓のような建物を、男は遠くのドーム出入り口の日陰から、顔を見上げて笑っていた。服装は上等な羽織りで、両腕を組みながら右の小指だけ立てているその人物は、どうやらこの男の癖であるらしい。
「はい。ですが、ジャンマハオ様はあまり驚いてないようで。……むしろ楽しそうですね」
ジャンマハオと呼ばれた男のすぐ側に居たもう1人の男が相槌を打った。
「そりゃぁね❤︎あらやだ、私ってばそんなに分かりやすいかしら〜んもうッ!あんまり見ないでッ♪」
バシン!とそばに居たその男の肩を叩いた。
「いっっ、……すみません」
少し体勢を立て直して、彼はさっとジャンマハオを盗み見た。
視線の先にいるこの男(と読んでいいのか)は、どこ楽しげに笑っている。容姿は厳ついおかまに見え、ふざけているような格好だが、割とこの国の中では偉い人物だったりする。
「ンフフ、まぁ継承選挙自体にそれほど興味がないのは事実。私はただ、王の御心が知りたいだけよ❤︎暴いてみたいじゃない?好きな人のコ・ト!テヘッ♥」
その男の笑みが、企んでいる者のソレだった為、控の男は態度には出さずとも内心では慄いていた。
少しオカマの気があるこの男は、自身の両の手をハートマークにして胸の位置で型取ると、やたら長いまつ毛を伏せてウィンクをし、側にいる男へと笑った。
男は、背にゾッとした何かが通った。
「!(この人の怖い所は巫山戯ているようでいて、気づけば相手を掌で踊らせているところだ。怖やこわや)は、はぁ?……」
「あらやだ、なーに〜?その事の重大さに気づいて無さそうな返事!ンもう!……いよいよ歴史が動き出すかもって事なのよ。この帝国1500年の歴史がね❤︎」
そう言って、ジャンマハオは目を閉じた。
以下ジャンマハオの回想____________________
(数ヶ月前の宮殿――王座の間にて)
静寂の中で、一人の老人が口を開いた。歳は70くらいといったところか。彼は肘を椅子につけて深く考え込んでいた。
その老人が微かに口を開いたその瞬間、辺りのざわめきが一瞬にして消えた。皆その男の発する言葉を聞きたいのである。
老人の人差し指に嵌められている銀の指輪が、鋭く光り輝いていた――。
「――次の王は、選挙で決める。これを勝ちとった者を、次のパルベニオン帝国の王とする……これは私の――――――最終命令とする。……異論は認めん」
「「?!」」
ザワザワ――何を馬鹿な、正気ですかっ?!と言った言葉がその場に溢れ返った。
「わざわざ選挙を今する意味があるのですか?!王よ、貴方には弟のペラルギア様がいるはずです!」
「そうです!何も選挙じゃなくても!引き継がせればいいじゃないですか!」
――ガヤガヤ、ザワザワ、そうだそうだ!
当然周りは言いたい放題だった。
それもそのはず。これが先王の命令であり、それも最終命令だというのだから。
「――各々、放言高論は済んだか?であれば、各自速やかに王位継承選挙の準備を進めよ」
(外交官長・ジャンマハオ)「ンフッ♪(あらあら面白い事してくれるじゃない王よ❤︎さすが私が見込んだ男)」
この国の外交官長を務めるジャンマハオは、口角を吊り上げた。さっと、彼は辺りに座る者達全員の顔を鋭く見渡した。
「(先王の側近達は驚いてない……という事は、事前に王族身内で既に伝えて了承を取っている可能性ありって事かしら?……司法と行政関連の者達の驚き様は半々…って事は、一部に情報が漏れている?私達同様に今伝えらた者たち、情報を既に知っていた者に分けられる。……それと、同盟国とは言えアティラマ帝国の遣い。)」
パルベニオン帝国の同盟国であるアティラマ帝国。アティラマ帝国もパルベニオン帝国と同じ法治国家である。
ジャンマハオは、アティラマ帝国から情報交換としてパルベニオン帝国に来ている自分と同じ外交局長の老女を見た。その補佐は驚いているが、外交局長本人は驚いていない所を見ると、アティラマ帝国の王族へは事前に、王は継承選挙の事は伝えている可能性があるとジャンマハオは推測した。
「(……そうなると、伝えられていなかったのはこのパルベニオン帝国の行政と司法の関わりがある人物半々のみ。
いずれにせよ王の発言で、動揺し即座に反応した者、様子を見ている者、動揺を隠せなかった者がいた。これらの中に王族反対派が紛れ込んでいる事は、明らかってわかっちゃたわねぇ……。)」
この一瞬でジャンマハオはそう考察した。その考察は当たっている。
「(!……もしや、この動揺を見る為に?なるほど。アティラマのばばあが驚いてない時点で、この選挙は唐突に行われた訳ではなく、事前に計画されていたもの。……んふふふ❤︎王よ、謀ったわね?)」
第一項:王の下す最終命令は、いかなる者でも従わなければならない。
帝国法における王の下す最終命令は、絶対だ。この法自体、縛りが強い。故に第一項で規定されている「最終命令」は独裁者を出さぬ為に、王であっても一度きりしか使えないのだ。
だからこそ、価値がある。王自らの決定に、誰も逆らう事ができないのだ。
これこそ異例の実態だ。
その事実を新聞や便りで知った市民も、驚きを隠せなかった。
――最終命令まで出して先王はどうしたいのか?
陰謀論やその他の憶測が飛び交っていたが、誰も先王の心を知る人はいない。
回想終了。
(再び闘技場――)
「(あの人は馬鹿じゃない……人間焦ってる時って本性出やすいわよね〜。権力にしがみついていた者、それに乗っかる者、虎視眈々と獲物を狙っている者、流れに身を任す者、――事前に予測し動き出していた者。……当然、選挙なんて後継がいながらするなんて反発する勢力も居ると知っているはずなのにねぇ……この選挙何かあるわ)
下手をすれば、帝国の維新にヒビが入るかもよ……んふふふ。さぁ鬼が出るか邪が出るか見ものよぉ?ま、といあえずあっちでお茶しながら話しましょ♪」
「……はい」
補佐の男は、常々絶対にこの人を敵に回したくないと思ったのであった。
――――――――――――――――
闘技場はドームの様な造りで、高さ50メートル弱程ある。
様々な憶測が飛び交う周りの人々の話し声がうるさい――くるんじゃなかったとポッドは思った。
けれども現在この場に来られるのは家族の中でポッドしかいなかった、致し方あるまい。
闘技場の席はすでに満席状態であったが、運良く彼は一人で座る場所を確保する事ができた。
彼は由良を誘ってみたところ、今日は別件で用事があるため行けないといった手紙が今朝ポッドの元に届いた。手紙の内容は、先日の帰らずの門の一件であった。捜査隊はすぐ動き出し立入禁止区域を調査しているが、未だ怪物と思わしき痕跡は見つかってないといった事と、不用意にああいった場所へは近づかないように、といった彼女なりの忠告が込められた文を受け取ったポッド。彼女はその件で忙しいのか、門で別れた以降の姿を見てない。
闘技場の石椅子へポッドは座ったまに、周囲をぐるっと見渡した。既に席についている人、立ち歩いている人など様々だ。まだ開幕時間になっていないからか、皆、要用に暇をつぶしているのが多く見受けられる。祭りの様な賑わいの中、人々はこれから始まる王位継承の開幕の挨拶を待ちわびていた。
会場の下の方に目を向けると、壁面に周りの地面より高くなるように幾重も垂直に長い木材が縦横交互に高さ20メートル、横へ50メートルほと幅広く組み立てられていた。
その上部に一部踊り場のような設計で、人が座れる席が何席く置いてある。その踊り場まで誘うかのように、席めがけて一直線に緩やかな傾斜の長い階段が造られてあった。その席までは何段か登らなければ座れない。
まるで櫓と緩やかな長い階段が合わさっているような建造物だった。
件の人々はまだ姿を現していないが、王族が座る場所としては妥当な造りだとボッドでも思った。
――あの長い階段を上った先の椅子に、王族の人が座るのだろうな――とポッドは予測した。
「(……椅子が四席)」
すると、ポッドからでは見えない位置のところから、警備の人々と上等な衣を羽織った人々がその櫓の様な所へ何人か列をなして登っていった。人々は4席の椅子の周りを、囲うように並んだ。
そろそろ始まるのかと皆そわそわし出したが、未だ開始の合図は起きなかった為、拍子抜けしてしまう。そして周囲は再びざわめきだす。
「――一体どんなやつらかねぇ」
「――きっと、ろくでもねぇーやつらさ」
「――しっ!あんた声大きいよっ!」
「――まともな奴なら誰でもいいべな」
「――やっぱ、先王の弟のペラルギア様が安定してる」
「――金をくれるやつなら俺はそいつに投票するぜ!」
「――ふん、下種が。ただの紙屑に何の意味がある。学舎だ!王立図書館の解放!これじゃ!知識は誰でも平等にすべきじゃ!」
「――家畜の肥料を下げてくれ!牛が育たん。食べなければ死んでしまう」
「――そもそも、農業を営むやつは種子の購入が原則だと?!やってられん!耕せんじゃろ!そんな法破棄じゃ!」
「――貧乏人にもチャンスを!」
「――女が欲しい!ピー!【自主規制】」
各々言いたい放題言っていた人々の声を横目に、ポッドは、みんな一人ひとりの考えはあるし違うのだなと率直に感じただけだった。
*
パタパタと、闘技場内に垂直に垂れている吊るされている大きな旗は何枚かは風で揺らめく。
旗は長方形で数十メートルと長く、布のふちは金の刺繡が施されている。(旗と会場の様子を記す)
――我々が目指すべきは永遠の繁栄
――呱々の声をあげる海神の子ら、罪咎の爪痕を残し、無常の風とともに夜這い星となりて、我等はやがてこの地に還る
――王なくして歴史は創れぬ 帝国万歳
そういった文字が闘技場の中心、櫓の正面から垂れ下がるその幕は、ひと際目に映る。
書かれている刺繡の文字が、太陽の光によってキラキラと反射していた。
そんな旗を眺めながら思考の隅でポッドは、周囲の喧騒をよそに全く別の追想に耽けていた。それも先日図書館で出会った少年に対してだった。
「(会えないかな?そしたら謝れるのに)って、そんな偶然起きないよな……ハァ」
あんな事を言ってしまった自分への情けなさと、彼に対して酷い事を言ってしまったという罪悪感で居た堪れなかった。
そうして式が始まるのを待っていた。すると_。
「てか、開幕式遅すぎなんですけど。それと、闘技場がこんなに日影のない建物って聞いてないしぃ〜?!日焼け止めクリームぬってね~わ、やばピなんですけど!」
軽く弾む、独特な口調で喋っている少女の声が、ポッドの耳に入ってきた。ちらっと声の発している方へ、ポッドは目線を数メートル斜め前を見た。ポッドより離れていたそこに若い男女が座っている。
「俺らが来るのはやすぎたんだろ?まぁ気長にまってようぜ」
「はぁ……もう!あたしはもっと後でいいっていったのにあんたが早めに行きたいって言ったんしょ?!そのせいで髪巻くの忘れたし、クリーム塗るのも忘れたんですけど!ほらッ見てみ!この髪!バラバラよっ!マジダルいんですけど!」
「分かったよ悪かったって――そんな怒るなよ、ナチ。……あと、どうせ君の事なんて誰も見てないから気にすんな!」
「はぁ?!それどういう意味~?!」
彼らはポッドの前方、斜め右の離れたところに座っていた。どうやら少女は俗にいうギャル?のような風貌で、相手の男はその子と知り合いらしい。
女の子は、ポッドが後方から容姿を観察してみるに、髪はボサボサで毛先はくるくると巻かれている。見た感じでは全体的に派手な印象が見受けられた。一方、男の子の方は、女の子と同じようなチャラ男なのかと思えば割と地味な服装で、言うなれば治安が悪そうな服装をしている。そんなあべこべな2人の組み合わせは、周りからも若干浮いていた。
*
とあるレストランにて、王位継承選挙開幕式開始の数十分前――。
「……ジャンマハオ様、そろそろ開幕式が始まってしまうのですが、、その、説明を……」
腕時計をチラチラ見ながら補佐の男は焦っていた。けれど、目の前のオカマは優雅に紅茶を啜っている。
ズズッ――ゴッくん。
「ん?あぁ、大丈夫よ。映画館の上映と同じでね、ああいうのって勿体つけて、なんだかんだで始まってから数十分かかるのよ。少し遅れても問題ナッシング。……てかこれ、口紅どう?落ちてない?!」
「いいえ、そんな事は……って、話を逸らさないでください!何のためにここで寄り道してると思ってるですか?!」
「……何ってお茶会兼デート?」
「違います!ふざけないでください!私だってわざわざ……」
「もうっ、うっさいわね!そう急かさないで!余裕のない男はモテないわよ〜?」
「…(イラっ)」
「ハァ……分かったわよ。特別に教えてあ・げ・る!この王位継承選挙のカオスを」
「!」
「結論から言うとね――この帝国が崩壊するかもなのよ。そして、それを良しとしている人間がいる。」
「!!――それはつまり、王族内に裏切り者がいるかもってことですか?!」
ハッと男は声を抑えて、周囲を確認した。
「安心しなさい、ここは安全よ――盗聴されてないから」
そうここは完全個室なので音漏れの心配はない。こういう所でこの人はしっかりとしている。
そう言いつつ、ジャンマハオは紅茶をまた一口啜った。
「……まぁその人物、仮にXとすると――Xが故意で裏切りを行っているのかすら、今の所分からないけどね。なにしろ証拠がない」
「そんな……Xとは一体誰が、……――証拠?……もしかしてジャンマハオ様、その人物に心当たりがあるのですか?」
「んふふ❤︎あるもないも、その人で決定〜!てところまできているけどネ!はぁ、残念だわ。証拠が悉く消されてるのヨォ〜それも巧妙にね。でもあとひとおしなのよ!……でもこれ以上やりすぎちゃうと私の身が危険〜」
怯えた演技をしながら体を縮こませた。
「誰ですか?!」
間髪入れずに問いただす。
「いや、まず私の事心配しなさいよ。ハァやぁ〜ねぇー、ここで教える訳ないじゃない!」
「どうしてです?!……もしかして私を疑――」
「アホ違うわよ。貴方が私の前でスパイ行為できるなんて100億年早いわ。そんな事したらけつの穴に指突っ込んで××【ピー自主規制】するわよ」
「…………。ではなぜ、教えてくださらないのです」
「もぅ――貴方ね、私の補佐っていう自覚無いの?しっかりしなさい――外交副官長、ワオウ」
「!」
「ここで確定しきれていない情報を貴方と共有する事はリスクがある。まぁ有利に運ぶ可能性もあるけどネ」
「……だったら、」
「でもね、本当はそうじゃないのよ」
「?」
「行方不明者並びに不慮の事故で10名――」
「え?」
「先王が王位継承を選挙で執り行うと発言してから、この数週間で消息を絶った、又は亡くなった者達の数よ。蓋を開ければ、どれも王族と関わりがある司法、行政の末端から幹部候補の人間、一般市民たちまで様々。」
「!」
「んふふ。どうやらアタシより手癖の悪い馬鹿どももいたみたいなのよネェ。……どれもよく分からない怪奇な事件、事故のものばかり。――少なからず裏切りものXは、裏の連中と手を組んでいる。そして、その人物は裏の連中を簡単に従えさせる権力を持っている者」
「……、」
「……私が見ているのはきっと、氷山の一角に過ぎない。そんな危うい障壁を貴方には当たってほしくないわけ」
「ジャンマハオ様……」
「おっと、ここから先は言えないわね。ヒントは教えたわよ。でもくれぐれも詮索しないように、じゃないと貴方――死ぬわよ?」
カップの中注がれていた紅茶の湯気は、いつの間にか冷めていた。
*
「ふぅ。とりあえず前菜の話はここまで。本題に入りましょ」
「え、ここからですか?!」
さっきの話も充分にお腹いっぱいだったのだがと補佐の男ワオウは思った。
「あら何?まだ開幕式まで15分以上あるんだから」
「いや、後15分しかないんですけど……」
「とりあえずそうねぇ、――まず王位継承をする目的はそもそも何なのか、貴方理解しているかしら?」
「ちょ、スルーですか。ハァ……それは、第一に繁栄のためでしょう。その為に王という絶対の権威をもって、まず国の統一を図る。そして民の力を通し、土地を潤していく。王位継承はその一環に過ぎない、権威を衰えてさせない次世代へ引き継ぐ儀式だ」
「まぁ、それも一理あるけど。ではなぜ、王族でないといけないか。貴方、考えた事ある?」
「?それは、代々続いてきたからで……」
「別に王族じゃ無くたっていいって思った事、正直ない?」
「……そう思っていた時もありました。ですが数多の歴史書からでもわかるように、戦乱の世において、自国の統一は必須。王族ではなく、一般の民が国を治めても歴史は結局争いを起こしてきたからではないでしょうか。そのような事が起きぬように目を付けたのが『血統』。最も古いものが素晴らしいものである、儚いとされるものである、そういったものが治めることによって、民たちもそれらを守ろうという本能が目覚め争いは少なくなった。……不思議なものです。新しい革命や革新は時代と共に誕生し変容していけるのに、血統とう太古のから受け継いだものは人間が引き継がねば途絶えるばかり……ゆえに尊い。愚かにも我々は、すべてなくなってからその儚く脆く尊いものの重要性に気づく……現に今の王族が、最も古い歴史をもつ絶対的な象徴であるとされ証明されている。それ故長きにわたって治める事ができている。」
「んーまあその解答、普通の歴史のテストなら100点はあげたいわ。でもね、ここは綺麗ごとで済ませることができない世界。外交副官長の解答とするならば、70点ね」
ワオウは、やはりな、という表情で目の前に座るジャンマハオを見た。自分も傍に置いてあるカップに口をつけ、お茶をすすり一息つくと、すっと、真剣なまなざしで相手の目を見返した。――さて、次が自分の本当に知りたかった解答だというように、男の返答を促す。
「そうでしたか。……では、残りの30点は何が足りないのか、ご教授お願い致しますジャンマハオ様……いえ、先生。……なぜ今の王族がパルベニオン帝国を治めているのでしょうか?正直私にはわかりかねます。」
「んふふ♪いいわよワオウ君、大人の階段をのぼらせてあ・げ・る」
ジャンマハオは腕時計を確認すると、テーブルに肘をつき、頬杖をついて窓の向こうの景色を眺めた。その向こうには王位継承の開幕の地ではなく、その向こう側にあるパルベニオン帝国の中心に生えている謎の大木を眺めていた。
その謎の木は、この国で一番高く、大きい。根は太く、放射線状に各地へ張っており、数十キロもあるこの帝国の端の城壁まで広がっているのだ。
一体これほど根を張るのに、どれほどの年月が必要だったのかしら?と、ジャンマハオは不思議がっている。まるでこの国と一緒に見守っている神木のような気がしてならなかったのだ。
「……この世界がいつから始まっているものか私にも分からないわ。でもね、パルベニオン帝国の王族が長い年月を生き残ってきたのは間違いではない。少なくともこの国の歴史書を見る限り1000年以上は続いている、そんな王族。……なぜそんな権力を持った王族がいるにも関わらず、独裁政治の象徴でもある君主制主義にこの帝国は傾倒していないのか考えた事は?」
「それは、戦乱の歴史から学んで、独裁しても繁栄は続かないと分かってきたからなんじゃ」
「ダウト」
「?」
「みんな騙される、『歴史』という名のバイブルに」
*
「パルベニオン帝国とアティラマ帝国そして、ドナテラス帝国は三国同盟しているのは知っているわよね?」
「はい。そして同じく法治国家」
「そうよ。この二国でも王族はいて、帝国法も同じ。今は仲良しこよしでやってるけど、昔は、あるエネルギーを確保するためにドンパチしてたって事は知ってるわよね?」
「はい。当時は三竦み状態であったと。――広大な敷地と豊富な食料や資源を有している『恵の大地』、アティラマ帝国。――精巧で緻密な設計において優れた機械を生み出し、依頼された部品は完璧に仕上げる技術力をもつ世界随一の機械生産国『世界の工場』、ドナテラス帝国。そして――森羅万象を操り、神域に近いと謳われるほどの科学力と発明力を持ち栄えている我ら、パルベニオン帝国。この三国は昔、あるエネルギーを発掘し、その後そのエネルギーの使い道による覇権の争いで多くの死者を出したと」
確認するように男の顔を見た。
「そう――でもそんな争いを続けてたもんだから当然自国の人手も減り、住める場所も崩壊、草木も枯れて食料取れなくて餓死寸前で全滅まっしぐらだった。だからこれ以上争わないように同盟を結んだ。まぁそのおかげで、我が国は今では資源・部品調達の面で二国からの恩恵をもらっている。……でもかつては表面上で仲良しこよしでやってても、こちらが弱みを見せればこの二国は、戦争をふっかけてくる。そんな緊張状態が続いていた時もあった。それがここ数百年前の話」
「?!」
「そうならないために人質が欲しいのよ。でも人質が裏切る可能性もあるから、裏切れない人物……位が高く、かつ自国として価値のある『王族』を人質交換の対象とした」
「ちょ、待ってください。そこは市民ではなく王族なのですか?」
「王族ならば皆『天神の眼』を持っているからね。表立って政略結婚とかで婿や嫁に行き、能力を維持するなんて言ってるけど……」
「……天神の目?ソレは嘘の話ではないのですか?」
「?え、やだ、貴方知らなかったのね、……アレは本当の話よ。元々この3国は、同じ王家を元に分かれて築かれた国だとされている。故に能力も同じものを持っているもの」
「……初耳です、まじですか?つまり、同じ血筋で兄弟喧嘩で争ってたって事ですか?!数百年?!なんて迷惑なんだろう、、」
「ま、そう思うわよね。……でも能力に関しては本当よ。貴方が知らないのも無理ないわ。ずっと昔のことだそうだもの。そうね……簡単にいえば――
『真実を見る事ができる眼』よ。この目の前で人間は愚か、全ての者が見透かされる。王の前で嘘は通じない。王の審判の前で嘘をついた者は、その能力によって――死ぬ。王の御膳で噓を見破られなかった人間は一人としていない。」
「?!王族の血筋だけが持っているという眼には、そんな能力があるのですか?!」
「えぇ、何せ記録が残っている」
ジャンマハオは昔を思い出していた。
――――
(記憶保存システムより)
「これはこれはアティラマ帝国の遣いよ、良くぞ我が国へ参りました。では例の資源開発に関して有意義な話し合いおしようではないですか」
「ええ、こちらもそのつもりです。……ではソレを審判として、王の前でも誓えましょう?」
「えぇ。もちろんでございますとまも……」
――
「――その男、そうお前、『嘘をついたな』我が眼の前で通ずると思うたか」
「「?!どういう事だ?」」
辺りに騒めきが起きる。
「?!な、何を言う?!嘘をついているなど、王族が、私を、……揶揄っておいでか?!」
「黙れ」
「っ!」
「『では答えよ。――これより我が問いかけに対して、真実のみで申せ。無論、お前が嘘をつけばその時貴様は――死ぬ』よいな?」
「――ふん、あぁいいだろう……嘘をつかぬと誓おう」
スゥとその場の空気は静寂となる。
『誓約は今を持って成立とする――では主に問う、この利権は本当に国のためか?』
「……はい、国のため、繁栄のためです!!誓って!嘘など付いてはおりません!!」その後も男は語り出す。自分は国の為にやっているのだと。
ここで驚くべきことは、その男の回答は通常の人がきいても分からないほどに解説は上手かったのだ。
さらに、男は嘘を織り交ぜて言っても、ほぼ真実という膜で蓋をして語っていた。故に気づくことは困難だし、凄腕のビサゾネスマンでも見逃していたであろう手腕の持ち主だった。
だからこそ、この内側にある邪悪には勘付かれる筈がないと。――男は鷹をくくっていた。
『……ほう、そうかソレは本当らしい――――――だが、――――――嘘つきめ。
残念よのう――ほう、利権の獲得と金を手にしたいのか、ソレで繁栄はまだ許容範囲じゃが、何貴様の魂はそんなのは関係ないと言っておるぞ』
「??!なぜ、まだ喋ってないのに?それに魂だと?!」
「分かるぞ、――聞こえてくるぞ、――お前の心の声。考えている事全て。貴様の核はまるで違う事を言っているではないか……――本当に残念だ、愚か者め。」
「ふ、ふざけるな!そんな魂などと!出鱈目をいうな!!」
「ふん、お主が出鱈目だろうが、なんだろうが『誓約を破ってしまったのはそちのほうだ』私にはどうする事もできぬ――――――さようなら」
「この、こ、の!!人質の癖に、この、人殺しガァアア!!」
ぐにゃり
ひぃぃ!お許し――ぐはっ、。
――ドックン――グジャ!!
「馬鹿者め。魂に嘘をついてどうする」
血の匂いが濃い会議となってしまった。
――――――――――――――――
「……あれは今でも覚えてる。アタシがまだ青二才の時よ。高祖父の記憶を(記憶保存システム)アクセスして見せてもらった。その時は肝が冷えた。爆ぜたの人間が。その場で」
ゴクリ。
「これがあまりにも強力で、死人が沢山出るもんだから、王族側もその力を抑制する為に使わぬ事になってるの。でもね、罪人を捌く時や、外交の安全な法律を行う場での決定時、そして最終命令を使う時はその力を行使する事を良しとした。その決まりがあってからは、無闇矢鱈に使わぬ事になった。」
「そうなんですね……ソレは良かったのでは?」
「馬鹿ね」
「え?」
「手綱を握っているのは結局、王なのよ。偉大な力は時に恐怖を与えてしまうから、ソレを抑えているだけ」
――――――――――――――
(闘技場)
「……てか、そんな王族内でなら選挙するって案外市民を思ってくれてるんじゃない?先王。」
ギャルの隣に座っていた少年が言う。
「はぁー?王族以外がやってほしくないから、あなたがた市民に好きなように選ばせてあげるよ、王族の誰かならね――って感じゃない?なんだかんだでバリバリの血統主義って事なんじゃない〜ってうちは思うけど?成り上がりの市民とかにやらせる気ゼロじゃん?あ、そろそろはじまるっぽいわ。ほら」
「ん、本当だ。てかアレって、……」
派手な少女が指差した方へ、ポッドも後方からしその指先の視線を追った。
観客達からは、その集団の後ろ姿しか見えない。ポッドから見えた彼等は、皆お揃いの黒を基調とした着物を着用していた。着物には何か紋様が描かれているが、何の絵かは分からない。そして、奇妙なお面を皆被り、顔を見えないように隠していることだった。彼らは一列になって、一段ずつその長い階段を登っていく。むかうは王候補の席だ。




